9話 急なサプライズは困ります
ソータとの待ち合わせは、八月の中旬になった。
そのまま夏休みに突入し、八月の初め、ソータから急にエルシーに連絡が入った。
「今から会える?」
ソータからのメッセージに返し、都内の公園で待ち合わせる事になった。
そこには、大きな袋を持ったソータが居る。
「エルシー、忙しいのにごめんね。渡したい物があって」
人気のない場所にソータと移動すると、彼から「はい」と袋の中身を出してもらい、エルシーはそれを見た。
それはsouが、今まで写した緑の写真を一つに繋げて額に収められた作品だった。
(綺麗だ)
こんな写真見たことない。
エルシーは幻想的な「森」に、感動を覚えた。
「あ、でもこれエルシー持って帰れるかな?」
「転移魔法で一瞬だ」
「便利だね。転移魔法」
「だろ」
やっとソータが魔法を受け入れたように思え、エルシーはふふんと上機嫌に笑う。
「ありがとう。じゃあまた一週間後、ここで待ち合わせだな」
一週間後には、二人で長野に旅立つ。
「うん。またね」
ソータに見送られ、エルシーは転移魔法で自分のアパートに戻ってきた。
「♪」
souからの思いがけないプレゼントに、つい口元が緩む。
「よいしょ」
額を床に置き壁に立て掛けるが、それでは目線を下にしなければ、せっかくの作品を眺めにくい。
(おかしい)
郷にいた時は、自分の部屋に釘を打てたがここは仮住まいだ。
(どうしたらいいんだ・・・ )
喜んだのも束の間、突然のサプライズプレゼントはエルシーを悩ませた。