5話 そうだ、フィンランドに行こう!
「世間は狭かったんだな」
ドリンクバーを飲みながら、エルシーは向かいの席に座るソータに言った。
「エルシー、なんで僕らファミレスにいるの?」
普段ならありえない状況に、ソータは動揺していた。
「好きな写真家が目の前にいるんだ。
図書室じゃ話しずらいし、聞きたい事あるしだから移動した」
と言うと、なぜかソータは顔を横に向け泣きそうになっていた。
「大丈夫?」
とエルシーが心配すると
「聞かないで」
いろんな感情が込み上げてくるんだと彼は返した。
ソータは、エルシーと一緒にファミレスに来ている喜びを噛み締めると
「でも、僕も知らなかった。まさかエルシーが僕の写真見て気に入ってまでくれてるなんて」
と返す。
「見る専門だよ。ほら、魔導書とかないから代わりに見出したらハマっていたってやつ」
ソータは魔導書という言葉にイマイチ、ピンときていないみたいだが、ドリンクを飲みながらエルシーの話にそっかと耳を傾ける。
「見てると懐かしい気持ちになって、郷無くなってしまって、家にいるのに家じゃないって感じかな。緑や家の写真見ると落ち着くんだ」
「エルシーが住んでいた郷はどんなとこだったの?」
「アイルランドの森の中。
家はこっちと全然違う。みんな木の家だ」
「ログハウスって事かな?」
こんなの?とソータが、スマホから検索した画面をエルシーに見せる。
「うん。そんなに凝った作りの家ではないけど、みんな得意な事活かして、物物交換で生活してた」
「こっちとは全然違うね」
「うん」
聞き慣れないエルフの郷の話を、ソータを楽しんで聞いた。
エルシーは緑や家の写真が落ち着くと言っていた。
「緑の写真で有名な写真家は結構いるけど、好きな作家他にはいないの?」
と質問を振ってみる。
「うーん、海外の写真集が多いけど、写真家で集めてないからな。
ソータも写真集とか出せばいいのに。私買うよ」
エルシーの天然な回答に、ソータは驚く。
「まさか、そりゃたまに感想もらえるけど僕なんてまだまだだよ!」
「そうなの?」
残念そうにエルシーのドリンクを飲む手が止まった。
「うん」
「そっか・・・ 」
シン・・・ 。
二人ともドリンクを飲む手が止まってしまった。
前のソファ席には、エルシー達とは別の制服の子らが夏休みどこに行くかで話が盛り上がっていた。
「夏休みはどうするの」
エルシーは、ソータに聞いてみる。
「長野のエルフがいるから写真撮りに行こうって計画中」
「何それ。エルフがいるのか?」
ソータのエルフ発言に、エルシーは自分やアルヴィン以外にも同胞がいるのかと勘違いした。
違うよとソータが観光地と説明すると、紛らわしいとエルシーは彼を叱り、しょんぼりと拗ねた。
「以外とあるよ、そうゆう所」
ソータはそう言うが、エルシーはまだ不貞腐れている。
ソータはどうして機嫌を取っていいか分からず
「じゃあさ、エルシーも一緒に長野行く?」
なんちゃってと笑いながら誘ってみるとエルシーは
「じゃあさ、ソータもフィンランド一緒に行かない?」
と逆に誘って来た。
「え?」
(マジ?)
今度はソータが目で聞くと
(うん。マジ)
とエルシーも目で返した。