18話 エルフはは夢を描いてる!
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二学期が始まり相変わらずエルシーは、放課後は書店でアルバイトをしていた。
今日は大好きな待ちに待った給料日だ。
エルシーはバイトを終え、新しい本をレジに向かって持って行く。
「あら、写真集以外の本なんて珍しい。鈴木さん本当に植物が好きなのね」
レジを打つスタッフに言われエルシーは頷く。
エルシーの本棚には新しく『園芸と造園』というタイトルの雑誌が加わった。
金曜日。
バイトがない日を狙ってソータは
「エルシー、一緒に帰ろう」
と声を掛ける。
旅行の計画をしている時は、エルシーからソータを迎えに来ていたのだが
「ごめん。今日は無理」
と誘いをキッパリ断るとエルシーは早歩きで彼の横を通り過ぎて行った。
「バイトは今日休みでしょ」
前まで「そっか」と諦めていたソータも、これには我慢ならなかったのか
「夏休みまでは一緒に帰っていたでしょ」
と追いかける。
「そんな急ぎ足でどこに向かっているの」と追いついたソータはエルシーに聞いた。
エルシーは観念し
「苔のガーデニングのワークショップがあるんだ」
とカルチャーセンターの広告をスマホを見せソータに説明する。
「え、ガーデニング?」
彼女からいきなり出た単語にソータは驚く。
「まあ、今日は体験だけど。アルヴィンにも聞いたけど三年になったら大学を見学できるって聞いたけど、まだ無理だから」
「エルシー、ガーデニングしようと思ったの?」
彼女の興味が写真からガーデニングにチェンジした事にソータはショックを受けていた。
エルシーはポカンとしたソータの顔を見てフッと吹き出すとまた早足で廊下を駆けていく。
(やられたな)
自分よりも先に進路を決めたエルフに、ソータは少しの焦りと喜びを感じていた。
窓から外を見ると彼女はもう外に出たのか、走って正門に向かっている。
(そんなに走ると浮いちゃうよ)
ソータは冗談混じりに彼女の後ろ姿を見守る。
長いエルシーの銀の髪が夕陽が当たり、赤く染まってキラキラ光る。
その髪は今にも空に飛んでいく勢いで、楽しそうに彼女の後ろで揺れていた。
完