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16話 大事なもの
路地裏に入った男は、誰も追いかけてこない事をいい事に嘲笑った。
「あんなガキにこんなものは勿体ないよな」
走るのを止め、大きく独り言を吐くと
「その言葉そのまま返すよ」
と言う言葉と共に、大きなサッカーボールが胸に当たったような感覚に襲われ倒れ込んだ。
男の手からポーンと弧を描き返ってきたカメラはエルシーの両手にポスッと収まった。
「なんだよ!お前?」
「ただのエルフだ」
それだけ言うと男から踵を返そうとすると、男はエルシーに追いつき後ろからカメラをまた奪った。
「なんの冗談か分からないが、女に俺が負ける訳がねえ」
奪ったカメラを前に出し、男は自慢げに笑う。
「あんなガキよりも俺がコイツを使ってやるって言ってるんだ」
そう楽しそうに笑う男は次の瞬間、顔面に衝撃を受けてまた後ろに倒れ込んだ。
「冗談。お前なんか相手にならないほどソータはこれを使いこなしているよ」
その言葉はとっくに男には聞こえてなんかいない。
カメラに外傷がない事を確認するとエルシーは肩を落としソータの元へと戻って行った。