表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/18

14話 エルフと推しとミュージアム


それからその日は早めに宿に行き、それぞれの部屋で過ごす事にした。

旅は終盤に差し掛かろうとしていた。


翌日は首都ダブリンで、アートや写真を楽しもうとソータは意気込んでいた。


旅の最終日の今日は、ここでお土産も買おうと彼は言った。


スマホで写真展がないか調べると、運が良い事に美術館で絵画展とは別に、写真展が行われていた。


初めて入る海外の美術館に、ソータは緊張していたみたいだが、エルシーも一緒に言語魔法を使い入場した。


巨大な作品を前に二人は圧倒され、スペースの出口まで来た際は、いつも映す写真や写真集と違うといった感想を互いに抱いていた。


お土産コーナーに立ち寄りソータは

「美術館のお土産っておしゃれだよね」

とはしゃぐ。


悩んだ末、ソータが選んだのはポストカードだった。


「はい。エルシーあげる」

美術館に併設されているカフェで、ソータはさっき買ったラッピングされたポストカードをエルシーに渡した。

「私、なにもソータに買ってないよ」

「気にしないよ。僕があげたかったの」

と彼は平然と言う。

「ありがとう」

礼を言ってエルシーはプレゼントを受け取ると、目の前のテーブルにあるソータのポラロイドカメラが

気になった。

「ねえ、そのカメラとスマホのカメラって使い分けとかしてるの?」


確かそれは亡くなった彼の祖父のプレゼントだったはずだ。

旅行中、両方のカメラを使っていたのをエルシーは気になっていたのだ。


「単純だよ。作品用がスマホで記念撮影はこっちでするんだ」

とソータがポラロイドを指でつつく。


「まあ綺麗なものは何でも撮るよ。台紙代が掛かるからあんまり使わないようにしてるんだけどね」

と彼は苦笑いしながら喋る。


あまりソータが自分の話をしないから意外だった。

エルシーは今も寂しくない。


(意外だ)

ラナと別れたら寂しくなると思ったのに、ソータの「きっと家は誰かと住むんで家になっていくんだ」の言葉を思い出す。


今ここにいるのは、自分とソータなのに寂しくない。

そう思った途端、エルシーは自分でも分からない感情に驚きを覚えた。


「エルシー、大丈夫?」

目の前のソータは急に顔色が変わったからか心配そうだ。

「大丈夫だ」

目の前のケーキを食べる事だけに集中しているとソータはエルシーの体調が回復したと思い安堵した。


そして

「エルシー昨日の事なんだけどさ」

と話を切り出して来た。

「うん?」

「家は誰かと住むんで家になるって僕言ったじゃない。あれさエルシーとは違うけど爺ちゃんが亡くなって僕が感じた事なんだ。

一緒に住んで突然体調崩したまま逝っちゃったからさ・・・ 」

口調は明るかったが、どこか寂しそうな目で彼は話した。

「そうか」

ケーキを一口含みながらエルシーはソータに返事をした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ