13話 きっと家は
「また長期休暇があったら来てよね」
翌日、ラナは二人を見送るために外に出た。
「うん。ソータに聞いたら次は冬休みっていうのがあるんだって」
「アンタ、ソータくんにあんまり苦労掛けちゃダメよ」
「はいはい」
そう言い合う二人はソータから見れば母息子・・・ (中略)は冗談として
「ラナさん、ありがとうございました。また!」
と別れの挨拶をし、二人はまた転移魔法でアイルランドに移動した。
目を開けると足元は原っぱで、目の前にいるエルシーの奥には崖が見えた。
「うわあ・・・ エルシー見てすごい!」
あまりの迫力にソータははしゃいだ。
しかし、それとは対照的にエルシーは同じ光景を見て「うん。そうだね」
と言ったっきり、どこか寂しそうな表情を浮かべた。
「エルシー、ラナさんと離れて寂しくなったの?」
「分からない・・・ 」
エルシーは不思議な気持ちになった。
「綺麗だよ、凄く綺麗。でもなんか違うんだ」
ソータは黙ってその言葉に耳を傾ける。
「フィンランドは似ているけど、故郷からはちょっと遠い。なのに寂しくないんだ。
郷はこっちの方が近いのに・・・ おかしいんだ」
エルシーの目には涙が浮かんでいた。
横にいるソータは景色だけを見て
「おかしくないよ。きっと家は、誰かと住むんで家になっていくんだ」
と言った。
「そうなの?」
まるで諭すように言ってのけるソータにエルシーは小さい女の子になったみたいな気持ちで聞いた。
「うん・・・ 。まあ、僕の持論なんだけどね」
そう微笑むとソータは、また視線を景色に戻した。
空の端にある太陽が照らす空は、微かに明るくエルシーの頭にはラナの姿が浮かぶ。
「そっか・・・ 」
少し考え込んだ後、エルシーの涙は引っ込んだ。
結局、その日はただ二人でしばらく景色を眺め、写真を映す事はしなかった。




