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脆くて弱くて臆病な僕らの異世界生活  作者: ドリルスマッシャー
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第八話 冒険者ギルド

 帝都ラヴァルト南西に位置する冒険者ギルドは他の雑貨屋と遜色ない、小ぢんまりとした佇まいをしていた。

 左に武器屋、右手に魔法具店。その真ん中に押し込まれた冒険者ギルト。散々、リーブルに脅されていたものだから、ちんまりとしたソレにシントは思わず苦笑した。


 シントは軽い木の扉を開けて中に入る。


 酒臭い。第一印象はそれだった。


 正直、この匂いにあまり良い記憶はない。両親が離婚する直前、父の側によるといつも全身から、鼻がひん曲がりそうなくらいの酒の臭いがしたからだ。


 しかし、その事を今持ち出したところで仕方がない。シントは根源である左手で、日没前からベロベロに呑んだくれている男達には歯牙にもかけず、右奥にちょこんと置かれたカウンターに座る。


「本日はどのようなご用件で?」


「冒険者としての登録をしたくて」


「左様ですか、でしたら銅貨二枚を払われてから、この紙に書かれている注意事項をよくお読みになった後、下に名前を記入してください」


 シントはこの前の買い物で買った布でできた安い小銭入れから残り僅かの銅貨をつまみ渡し、代わりに文字がびっしりと書かれた紙を受け取る。

 今更だが、この世界は何故か日本語で全て通じる。何故なのかまたマイペースに考えようとも思ったが、それは流石に野暮なのでやめておく。


 目が痛くなるくらい長い文章をサーッと流し読みして、『シント』と下に記入する。

 途中、死亡、事故、責任などの迫力のある言葉が飛び込んできた気がするが、それにはシントは特に突っ込まなかった。


「はい、ありがとうございます。では、冒険証の発行を行いますので少々お待ちください」


 そう言われながら、酒飲みの男たちがいるスペースで待つよう誘導される。断ろうとも思ったが、思いっきり彼らにも聞こえてしまっていそうなのでシントは大人しく酒臭い空間に身を置いた。


「お、兄ちゃん新人か?」


「えぇ、まあ」


「何だよ、ジメジメしてんな兄ちゃん。これから俺らはこのギルドの仲間なんだから仲良くいこうぜ」

 思ったより気さくで良い人達だ。だが、まだ本性を表していないだけかも知れない。今までの記憶がシントの心を強く縛ってしまう。


「てか、兄ちゃん異世界人だろ。それもこの場に居るって事は俺達と同じ、落ちこぼれの底辺、だろ?」


 テーブルを挟んだ向かいに座っている男が樽ジョッキを口に当てながら無粋に話した。それにシントは苦笑する。


「ここにいる奴ら……というか、このギルドに来るやつは全員、いろいろな事情で路頭に迷ったならず者。だから、こうして酒を飲み現実から目を逸らし、傷を舐め合ってるんだよ」


「こんな大きな街のギルドなのにどうしてそんな人達しか……失礼しました」


「いいっていいって、事実だからな。それより何だ、知らないのか? この街には中心街にもう一つここなんかと比べるのもおこがましいくらい、大きなギルドがあるんだよ。だから、凄えヤツはみんな、そっちに行くんだよ」


 知らなかった。シントはその事実に唖然とする。しかし、同時に心の奥底ではホッとしているような感覚を覚える。そんな、自分がシントは堪らなく嫌いだった。

 この場に留まり続けたらきっと、ダメになってしまう。そう思い、シントは席から立ちあがろうとした。その時だ。



 ——バコーン!!!



 勢いよく、入り口の軽い木の扉が開け放たれる。

 その轟音に、シントは条件反射で扉の方を振り向いてしまう。が、他の者は誰一人そちらを見ない。


「……あんなぁ、扉が壊れるから止めろっていつも言ってるだろ」


「——誰か私と組んでくれる奴はいるか!」


 蛍光色っぽい黄色の髪に、赤髪が少し混じる長髪を後ろで束ねた女が腰に手を当て、この場にいる者達に問いかける。ニカっと笑っている口元からは、八重歯がチラリと見えている。


「だから、組まねえっていつも言ってんだろ。お前の戦い方は、チームプレーに向かねんだよ。やりたきゃ一人でやれ」

「嫌だ! 私は皆と共に戦いたいのだ!」


「そう思うなら、まず話を聞かないですぐ突っ走るのを止めろ」


「本能を止める事なんてできない! いつも言っているだろ。全く、、、ん?」


 いつものメンツに同じ事を言うのにきっと、うんざりしているのだろう。だが、この日ばかりはこの場にはいつものメンツには居ない、黒髪のシルエットが居た。


「君! もしかして新顔か? それも異世界人の!」


 彼女は、鼻息が思いっきり顔にかかるくらい顔を近づけてシントに問いかける。シントはそれに、顔を引きつらせて肯定する。


「よし、決めた! 君は今日から私の相棒だ!」


「ちょっと待ってくれ!俺は————」


「あぁ、名前がまだだったな、私はヴァレッタ! よろしく!」


「俺はシントよろしく……じゃなくって!!」


 ヴァレッタは、まだ何か足りなかったかと言わんばかりに首を傾げる。


「俺はまだ冒険者登録すら終わっていない新米中の新米だ! それに、人を殴った事もないし、魔法も使った事がない! ……というか使えるかも分からない」


「関係ない、私の直感が君しかないと言っている! そうと決まれば早速、行くぞ!」


「……どこに?」



「——依頼に決まっているだろ?」

  

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