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優ちゃんはクラスが違うので、靴を履き替える時は離れる事になるが、何故か焦ったように急いで履き替えて戻ってくる。
下駄箱で見知ったというか、最近はよく話す人物を見つけたので挨拶をする。
「あ、おはよう。黒条さん」
「お、おはようございます。錦瀬くん、と……」
ローファーを下駄箱にしまいながら振り返って、挨拶を返してくれるが、視線が俺の後ろに釘付けになっていた。
言葉尻もく切れ悪く、誰だろうと顔に書いてある。
その表情は他人に無関心を貫き通してきた黒条さんにしては珍しく、関心を寄せていた。
「あれ?初めましてなのか。紹介しようか」
「私は優くんの幼なじみです!」
「そ、そう」
「お前自己紹介って知ってるか?」
「四月一日優です。四月一日とかいてわたなき」
「珍しいだろ?」
「う、うん。四月一日さん」
「はい?」
「あの、よろしくお願いします、ね?」
「うぐっ……」
「おいおい、どうした?」
「可愛くて思わずときめいた」