第10話 そのツンデレヒロイン、KAKKEEE!
そのあとは、一瞬でした。
俺の『大声出したのがキアラじゃなくても、キアラのピンチに反応してトレスが来てくれるだろうから俺がDEKEEE声で叫び続けるぜ大作戦』が功を奏した。
オーク共にはトレスが、
「コピー! 〈アイスハンマー〉×30!」
と、無茶苦茶チートスキルで一瞬で殲滅。
「コイツ等なんでこんなに……そうか! キアラが弱らせてくれていたからだな! だって、オレのスキルなんて外れスキルだし!」
と、キョトン顔からの自己完結納得顔で勘違いチート主人公の極みを見せつけた。
そして、トレスが残ったキングオークと向き合う。
「お前か。キアラを傷つけたのは」
「あれ? 俺は?」
と、隅っこで呟くギャグ要員。それが俺ゴメス。
トレスはキアラをちらっと見ると、再びキングオークを睨みつける。
「お前だけは、許さない……!」
「待って! トレス!」
トレスがキングオークにチートスキルをぶちかまそうとした時、遮ったのはキアラだった。
「キアラ……?」
「……アタシ一人で戦わせて」
キアラがそう告げるとトレスは驚き、慌てて首を振る。
「そんな危険だよ! 女の子一人でキングオーク相手だなんて」
「お願い。アタシにやらせて……ううん、アタシやるわ。手を出したらトレスでも許さないから」
キアラは決意の表情を浮かべている。
いやいや、普通にゆっくり話しててその間のキングオークはどうしてるかって?
そんなの決まってるだろ。
「…………」
静かに、二人のやりとりを見守っている!
これも多分神の強制力なんだろうな。
『主人公と女の子が話していたらモンスターは手を出さない事』。
まあ、俺も前世では変身ヒーローの変身シーンや戦隊モノや魔法少女の名乗りの邪魔はするな派なので、この辺りはまあいい。
だが、一つだけ予定外が。
キアラが自分で戦う事を主張した?
【はずコピ】では、このシーンではキアラは顔を青くして、トレスに助けられるだけで、そのあと、トレスかっこいいってなるだけの女だったはず。
物語が変わった?
俺がキアラに色々言ったせいだろうか。
「分かった。でも、危なくなったらオレが助けに入る。それが約束だ!」
俺が現状を頭の中で整理している内に、トレスが決めてしまう。
トレスの言葉に頷くキアラの表情は決意に満ちている。
意思の強そうな赤い吊り目にしっかり強い意志が込められている。
その赤い瞳が今度はこっちに向く。おい、こっち見んな。
いや。
さっきの怯えて悲しそうな瞳よりよっぽどいい。
俺は、ゴメス。
主人公たちをAGEてAGEてAGEるだけ!
「プギャアアアアアアア!」
俺がキアラに声を掛けようとした瞬間、トレスの言い終りを待ってましたとばかりにキングオークが俺とキアラの間に入って叫ぶ。ほんとお前も主人公AGEちゃんとしてるよなあ!
だけどな、俺は主人公と肩を並べて戦えるかっこいいヒロインが、ただチート主人公にキュンキュンするだけのフィギュアと化したヒロインよりも大好物なのよ!
「キ! ア! ラ! お前の魔法技術はSUGEEEEEE! ぶっ!!!! た! お! SEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!」
俺の馬鹿でかい声に、キングオークもトレスも耳を押さえ、きょとんとしてる。
キングオークの股の間から見える向こうのキアラもルビーの瞳を零れ落ちそうな程丸くしていたが、すぐにニヤリと笑い、魔力を高める。
「ええ! アタシのすごいとこ、見てなさいよ! ゴメス!」
オークの向こうでキアラが笑ってる。
それじゃあ、俺は存分に解説させてもらうかあ!
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『君は役不足だ』と魔法学園のクラス分け帽子に言われた少年は学園を出て行った。
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