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「あ、そういえばだけどその服はできたらせめて原作準拠のドレスに着替えてくれると嬉しい。なんていうかふとした瞬間に言及してしまいそうで怖いから」
妹はわざとらしく頭のリボンを引っ張りながら器用にターンし始める。無重力なのにすごいな。
「えぇ。このドレス気に入ってるんだけど。真っ赤でふりふり付きの水玉模様」
「いくらここが別次元とは言えD社の力は多分及ぶから」
「D社怖。愛しの御兄様のお願いとあらば聞き届けないわけにはいきませんね」
くるくるとY軸回転を続けながら府蘭の姿がぼやけ、光っていく。プリキュアの変身バンクかな?
足元からぴちっとしたブーツに覆われていき、どぎついラインのハイレグスーツを身に纏う、ピンクのリボンでロングツインテールに髪が結われて最後に決めポーズとフラッシュエフェクト。
「雷撃の対○忍の力、みせてあげる」
「いや逆にアウトだろ」
対魔○じゃねえか。しかもフラッシュエフェクトとか器用なことするな。
「というかふと思ったんだけど、髪の毛伸ばせるならあの馬鹿みたいな虚乳とかにもできるんじゃないの?」
なんなら髪の色も少し変わってるし。
しかし妹は何を仰ってるんですかと言わんばかりのキョトンとした顔である。
「え? だってお兄ちゃん貧乳のほうが好きでしょ」
「……はい」
これ以上深掘りしても絶対にいいことにはならないので話を逸らす。
「とりあえずお腹すいたから昼ごはんにするか」
「はーい」
「食べ物はまあ各自で。飲み物何がいい?」
「おにい「それ以外で」
それは飲み物じゃないだろう。
「じゃあお兄ちゃ「だからなんでお兄ちゃん、から始まるのかなぁ?!」
はぁ。
なんか相手をするのも馬鹿らしくなってきた。お昼ごはんは何にしようかなぁ。
今日は日本の素晴らしき食文化、お弁当にするか。
何が素晴らしきなのかと思った諸君。日本のお弁当という食文化は案外日本固有のものであるのだぞ。
例えば我らがブリカスことイギリスやアメリカなど欧米諸国の多くの国はランチボックスとしてサンドウィッチやバナナ、チップス、リンゴのみといった食べやすく手間も少ない、といった言うなればおやつに近いものであったりする。
それに対し、ある程度おかずとお米などのバランスをとりつつ、冷めても美味しい極東島国日本のお弁当は海外でも注目されている食文化なのである。
ちなみにだが、お隣の中国では冷めたご飯、特にお米を食する文化がなかったため、お弁当産業が進出した際には苦労したらしい。
まあお弁当の与太話はこれくらいにしておこう。お腹すいたし。
何弁当にしようかな。
スタンダードなのり弁当や唐揚げ弁当でもいいしなんならすき◯の牛丼とかも良いかもな。あれ2000日毎日とか食べれるくらいにはうまいからな。
「あたしは絶対無理」
まあひとによるか。
「府蘭は何にしたんだ?」
「とろ~り3種のチーズ牛丼特盛温玉付き」
「すき家じゃねぇか」
思いっきりすき家じゃねえか。今自分で無理とか言ってたくせに。
「毎日は無理ってだけで口に入れるのもおぞましいとか言ってるわけじゃねえよキン丸マもぐぞ」
おー怖。
とりあえず自分の昼ごはんはエッグチーズマフィンセットにするか。
朝マックのメニューを昼に食べるという背徳感。
堪りませんねえ。
……あれお弁当の話どこいった?




