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第2話 ライザ、出立

 魔王城の門口ではラートムや配下がライザを送り出そうと整列している。


「では、ライザ様。ノワル様のことよろしくお願い申し上げます」


 ラートムはライザに見送りの言葉をかける。


「うむ。妾にまかせておくのじゃ!」


「はっ!お気をつけていってらっしゃいませ!」


 一同はみな、深々と頭を下げる。


「御主らも城の留守の間、注意を怠るでないぞ〜!」


「はっ!仰せのままに!」


「さてと……行くかの」




 ライザは魔王城を後にし、この世界のどこかにいる婚約者(自称)を探しに旅立ったのだ!





*******



 ライザは歩きながらノワルの転移先を推測する。


(ラートムの話ではノワルは転移する直前、宝玉を見つめていたと言っておったが……おそらく宝玉の力が発動しノワルの心に語りかけていたのだろう。それでノワルが答えそうな場所は……)


「う〜〜〜む……」


 ライザは腕を組み頭をひねる。


「あやつは大層頭が切れるからのぉ〜……まぁ、そこが妾の心をつかんだ理由の一つだからのぉ♡」


「あの書物を読み耽る姿、どこか冷めた振る舞いと壮観な顔つき……あぁ、妾をときめかせるノワル!どこにおるのじゃ〜!」


(……‼︎)


「いかんいかん‼︎我を忘れておった……」


 魔王城の門口でライザの姿が見えなくなるまで見送るラートムと配下たちは、遠くで見えるライザがクネクネしている姿に首を傾げた。


「ハッ‼︎」


(そうそう!ノワルが考えつきそうな場所だったな……うむ。単純に"魔王城の外"だったら配下も気づくだろうし、ここいらでは気配も臭いも無い。……となると"魔王城から1番遠いところ"か。)


「じゃがしかし、ノワルはもっと具体的に答えるはずじゃ……………町?」


「"魔王城から1番遠い町"が妥当か!」


(となると、魔族領にはいないのは間違いないから"人間領"だな!万が一、魔王城から1番遠い町にいなくても、そこから魔王城に向かって、順番にある町をしらみつぶしに探せば何かしら情報は得られるはずじゃ!)


「愛は困難があるほど深くなるのじゃ‼︎」


「よしっ!いっくぞぉ〜〜‼︎」


 ライザは右拳を高く突き挙げそのまま真っ直ぐ走りだすのだった………!




*******




………どれくらい走っただろうか。ライザは疲れるどころか頭の中はノワルのことでいっぱいで、ただ"会いに行く"という純粋な気持ちだけで走り続けていた。


 そんな折、ふとあることを思いついた。


(いちいち妾が走らずとも……)


「おいで!ディザメア‼︎」


 ライザが叫ぶと周辺の森の木々がなにやら騒がしい。すると、とてつもなく大きな影が動きライザの元へと静かに降り立った!

 なんと、ライザの目の前に家ほどもある巨大な蜘蛛が現れたのである‼︎


(お呼びでしょうか、ライザ様)


 巨大な蜘蛛の正体はライザの直属の配下で蜘蛛族の一種、アラフィレーヌ種の女指揮官"ディザメア"であった。


「うむ。妾はこれより人間領へ行くのじゃ!」


(人間領……ですか?……お言葉ですがライザ様が直々に人間領へおもむき人間どもを仕留めなくとも、めいを下されば私どもが参りますゆえ……)


「違う!違うのじゃ‼︎」


(違う……?)


ディザメアは状況がよく呑み込めていない。


「妾はノワルを探しに人間領まで行くのじゃ」


(えっ?……………え〜〜〜〜っ⁉︎魔王様は城を出られたのですかぁ‼︎⁉︎)


 ディザメアは思いも寄らぬ事態に度肝を抜かれる。


(だだだだだだ大丈夫なのですか⁉︎……その、いろいろと……)


「心配するな!妾も気配を隠して各地へと向かうし、城もラートム含め配下に引き続き守らせておる。ディザメアには魔族領と人間領の境界線付近まで妾を背中に乗せて運んでくれさえしてくれれば良い」


(か、かしこまりました……)


 ディザメアはライザに言われるがまま背中に乗せ人間領に向け走り出した!




*******




 辺りは霧が立ち込み、荒れ果て閑散とした広大な台地を巨大な蜘蛛が駆ける。



 先ほどまでと違い、移動する景色はあっという間に駆け抜けていくことになる。


 「ん〜〜〜〜……ディザメアの背中はやっぱり心地が良いのぉ」


(お褒めのお言葉をいただき恐悦至極でございます)


 ディザメアは時速80㎞程の速さで走る。その長い脚を巧みに動かし足元の木々や岩などの上を通ることができるので、障害物を気にすることなく移動できるのである。また、脚が8本もあるので振動も少なく背中の体毛もフカフカなので実に快適。まるで移動するベッドである。


「あぁ……ノワルを連れ帰り魔族領に入ったら、ディザメアの背中に2人で乗って城の外をデートをしてみたいものじゃ……」


(私もその日を心待ちにしておりますゆえ!)


「ノワルにとって目にするものは全てが新しいものだろう?……見知らぬ土地や景色は心を解き放つと聞く。互いに心を開き……ノワルとあんなことや、こんなことまで……///」


 ライザは良からぬ妄想が止まらない。


(ちょっ、私の背中で……ですか?)


 ディザメアは少したじろぐ。


「なんじゃ?何か文句でもあるのか?」


(い、いえ……)



 そんな他愛もない話をしていると、どこからか声が聞こえてきた。


「ふぇ〜〜ん。ふぇ〜〜ん」


 それは子供の泣き声であった。


「ディザメア、止まれ!」


 ライザはディザメアを制止させた。


「うぅ……ふぇ〜〜ん。ふぇ〜〜ん」


(どこだ……?)


 ライザは声の場所の特定を探る。


「……‼︎」


「ディザメア!あっちじゃ‼︎」


(はっ!)


 すぐさまライザの示す方向へ進む。


(ライザ様、声の主は何者でしょう?)


「わからぬ。ただ、声色は幼いな……」


 声のする場所へと到着した。


「ここは……時の迷宮!……先日、ここから発掘された【転移の宝玉】によってノワルが行方をくらませたと聞く」


(何かと機運を感じるのぉ……)


「ふぇ〜ん……ふぇ〜ん」


 やはりここから泣き声が聞こえてくる。すると、迷宮の奥からトボトボと人間の女の子が現れたのである‼︎


「に!……人間⁉︎」

(に!……人間⁉︎)


 ライザとディザメアは予想だにしない遭遇に仰天するのだった‼︎

読んでいただき誠にありがとうございます。

貴方の貴重なお時間と共有できましたこと、大変嬉しく思います。


よろしければ温かい評価とブックマークのほどお願い致します。作品の創作意欲に繋がります。


では、次話でお会いしましょう。


※本作の本編である『冒険者パーティーのサポーターに魔王はいかが?』も是非よろしくお願い致します。

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