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ガサツな女

 「あたっ!」

 少しの痛みに、俺は目を覚ました。

 「もう授業終わったぞ!」

 「だからってデコピンで起こすことないだろ!」

 俺の目の前には、アイツが腰に両手を当てて立っていた。

 髪は長く、サラサラのストレートだ。

 男の俺が言うのもなんだが、彼女の髪質は、とても良いと思う。

 それだけに彼女の性格は、とても残念なのだ。

 「そんなにピリピリすんなゃー。」

 それにしても、育ちの悪い言葉使いの女だ。

 「よっと。」

 さらに彼女は俺の机の上に座り、胡坐をかいた。

 なんなのだ、このガサツな女は・・・・。

 「寝てばかりで、何かすることはないのかね、キミは?」

 「別に、ねえよ。」

 こんな礼儀知らずの女に、キミよわばりされる筋合いはないのだが、とりあえず相槌を打った。

 こんな奴を相手にしても、不快なだけだ。

 授業も終わったし、俺は、もう帰ろうと思った。

 「ふんっ。」

 立ち上がろうとした俺の左肩持ち、彼女はピョンッと机から軽く飛び降りた。

 全く、猫みたいな身のこなしである。

 「んじゃな!」

 アッという間に、彼女は姿を消した。

 「ふっ・・・。」

 勝手に俺は、格好つけた感じで、ため息をついた。

 (今日も、つまんねえ一日だったな。)

 俺はトボトボと見える感じで、グラウンドの前を通り、さらにテニスコートも通過した。

 ここでクラブしている奴らに、特に興味はなかった。

 と、いうのは嘘だ・・・。

 ほんのちょっとだが、女子の姿には目を引かれた。

 特に女子テニス部員のスコートなどは・・・・。

 しかし彼女たちを、まともに見るような度胸は、俺にはない・・・。

 ガン見せずに、チラッと見るだけで俺は通り過ぎた。

 もっとも俺に対して、不快な視線を向けている女子もいたのだが・・・・。

 (おっ・・・・。)

 あまり見たくない顔に、俺は遭遇したのだった。


 「おーう!お疲れさん!」

 まったく、鬱陶しい女である。

 さっき睡眠中の俺にデコピンを食らわし、失礼にも俺の机の上に乗り胡坐をかいた女だ。

 それにしても、そいつに似合わない格好だと思う。

 よりによって和のスポーツをたしなむとは・・・。

 「そーら!!」

 「おわっ!!」

 その失礼な女は、なんと俺に向かって弓を向けてきたのだった。

 「こりゃ!!」

 むんずと、その女は顧問の先生に襟首を掴まれた。

 そしてゴチンと、拳骨を食らったのであった。

 「いったあー!」

 流石のアイツも、これはダメージを受けたらしく、涙目で頭を押さえいていた。

 それから練習の場に、戻されていたのだった。

 自業自得である。

 まったく、あんなガサツな女が、弓道部などとは迷惑千万である。

 それに構わず、俺は真っすぐに帰路に就いたのであった。


 (ふう・・・・。)

 爽やかな朝を迎えた。

 俺はご機嫌であった。

 とういうか最近は休日のたびに、俺は気分が良いのだ。

 チチチ、と鳥の囀りが聞こえてくる。

 ますます自分の足取りは軽くなる。

 「うんっ!?」

 その異変に、すぐさま俺は気が付いた。

 「くっ・・・。」

 俺は自分の肩に、覚悟を決めて手を置いた。

 そして、その自分の聞き手を目視にて確認したのだ。

 (・・・・・・やはり・・・。)

 その手には、先ほど心地の良い囀りを奏でていた鳥の、<白い爆弾>が張り付いていたのだった。

 「ふう・・・。」

 そこで、俺は溜息をついた。

 いつもの自分なら、怒り狂って空に向かって石を投げつけるであろう。

 しかし、そんな気持ちには慣れなかった。

 だって今日は、楽しい日なのだから・・・。

 鳥の白いものに対しても、十分におつりがくるのだ。

 ==== ピタッ =====

 勿論、オレは、その脚を止めた。

 自分の目の前には、目的地の看板が存在した。

 

 ====== 珈琲店 弓 =====

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