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第49話・やんごとない乱入

 今更ながら触れておくと、この自主研究というイベント自体は「ラインファメルの乙女たち」にも存在する。

 でも本来の形は、ネアスとバナード、それからモブが二人加わったグループがお嬢さまとその取り巻きの間で抗争を繰り広げる、という筋書きで、そもそもお嬢さまとネアスが同じグループになる、なんて展開はどのルートをとっても存在しないはずなのだ。もちろん、お嬢さまとネアスが割合友好的な関係を築いている「親友ルート」においても、だ。

 なので、今の時点で既にわたしの予備知識を超越していて、この先のことはもう「なるようにしかなんねー」って投げ出す状況になってしまってるんだけど。


 「留学先の単位は本校でも認められはしたのだが、この実習に限れば相当する単元が向こうの方に無くてな。本格的に参加する必要は無いが、在籍して課題の遂行を見ておくように、と指示された」

 「……殿下、それはどちらからの?」

 「学園長だが。まあアイナハッフェたちには迷惑かもしれないが、余計な口出しをするつもりはない。一年間、よろしく頼む」


 あのじーさまの仕業か。まったく、ただでさえ予想のつかない事態の真っ只中、更に余計な爆弾投げ込んでくれるんじゃねーわよ。


 部室に戻ってきたわたしたちを待っていたのは、帝国第三皇子のバッフェル殿下だった。

 その言葉の通り、学園長であるお嬢さまのお祖父さま、マイヨール・フィン・ブリガーナ前伯爵の沙汰らしく、これ要はお嬢さまと殿下の接点増やそうっていう魂胆があるんだろーなー。パレットの指示通りにお嬢さまとネアスをくっつけようとするなら、余計な真似しやがって、と思うところなんだろうけど、まあダメならダメであの紐パン女神に何か手伝わせた方がいい気がする。四周目始めってから一度も顔出しやがらねえけどな、アイツ。


 「それで何をするつもりなのだ?バナード・ラッシュに尋ねてもアイナハッフェ達を呼んでくる、とすぐに出て行って教えてはもらえなかったが」

 「あ、わたしお茶をもらってきますね」

 「四人分は面倒だろ?俺も行くよ」

 『え?……あ、じゃーわたしも…』

 「あなたはこっちにいなさい、コルセア」

 『はぁい…』


 逃げ損ねた。

 そそくさと出て行くネアスとバナードの背中を恨めしく見送りながら、何も無い部屋のテーブル席についたお嬢さまと殿下に挟まれるよーに、やむを得ずわたしもテーブルの上に鎮座。

 お嬢さまと殿下は向かい合わせに座ったまま、なんだか気まずい空気を醸し出してる。

 いやあなた方婚約中の関係でしょーが。なんかこお、弾む会話とか視線が交わってはにかむとか、そーゆー微笑ましい雰囲気にならんでどーすんですか。


 『ところで何をするのかと言いますと、例によってお嬢さまが無茶を言ってますので殿下もお嬢さまの手綱握っていただけると助かるのですがー』


 しゃーない。ここはわたしが道化を演じておくか。


 「無茶?それは面白そうだな」

 「コルセアっ!」

 『ええ、対気物理学の応用で人が空を飛べるようにする、という無茶苦茶なことを言ってまして』

 「……ほう」


 ペットのぼーげんに口を尖らせるお嬢さまを前に、殿下は興味を持ったみたいだった。いえでも、あなた対気物理学に関しては帝国の中枢とも繋がってるんですから、無茶だって分かるでしょーに。


 「いや、理力兵団でも研究は始まっている。もともと帝国は応用については対気砲術に偏っていて、それ以外の分野では他国に後れを取っている面があるからな。学生の研究であっても無駄にはなるまいよ。アイナハッフェ、なかなか面白そうな研究になりそうじゃないか。俺も傍観しているだけではつまらぬ。力添えをさせてもらうぞ」

 「……殿下にそう仰って頂けるならやりがいも増すというものですけれど、その、二年生の授業の方はよろしいのですか?」

 「もちろんそちらに支障が無いようにはさせてもらうさ。だがアイナハッフェ、お前の婚約者を見くびるなよ?そもそも高等学校を卒業出来る程度の成績にはとうに達している。卒業に必要というからこの自主研究にも参加するだけのことだ。ま、入れ込むだけの理由は他にもある。だから気にしなくてもいい」

 「そういうことでしたら……その、それよりネアスたちも遅いですわね」

 『お嬢さまー、さっき出て行ったばかりじゃないですか。そんなすぐに戻ってくるはずが…』

 「すみません、遅くなりました」


 遅くない。遅くないよネアス。ていうかまだ席も温まらないうちに戻って来るとか、実は興味津々だったんじゃ。


 「……いえ、ちょうどいいところでしたわ」


 そしてわたしは見逃していない。テーブルの上に置かれたお嬢さまの手を、殿下が手に取ろうとした瞬間、お嬢さまがそれに気付いて手を引っ込めかけたことを。

 ……なんだかなー。殿下はお嬢さまに真っ当な好意を抱いているのは分かるんだけど、お嬢さまの方にはなかなかそれを受け入れ難い心情めいたものがありそうで。


 「そうだな。俺もこの後に用事がある。茶だけ頂いて今日のところは退散するとしよう」


 しれっとした顔の殿下だったけれど、お嬢さまの態度にくらい気がついているだろうな。

 なんかモヤッとしたものを抱えたわたしは、早いとこパレットを問い詰める機会を探らねば、と今夜のひとり散歩を決意したのだった。

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