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第28話・わたしの、はぴばすで!

 疲れてはいたけれど、一つのテーブルを囲んで気の置けない友人同士で囲むお茶にお菓子は、お嬢さまにとって何よりの贈り物だったに違い無い。

 腹に一物もった大人たちを相手にして抜かりなく対応を済ませたお嬢さまだったけど、やっぱり据えかねるものはあったみたいで、憤慨するよーな場面も再三あったりした。

 その度にわたしとネアスはお嬢さまの繰り言を聞いて、時に同情し、あるいは「それは言い過ぎですよ」と窘め、それでもお嬢さまも含めて花の咲くよーな会話に勤しんだのだった。


 で、それも落ち着いた頃のこと。


 「ところでコルセアってお誕生日はあるの?」

 『え?……あー、どうなのかな?わたしっていつから現界にいるのか覚えてないし』


 会話が途切れた折に、ネアスがそんなことを言い出した。

 まあ茅薙千那の誕生日、としても暦が違うから当てはめようもないし、そもそもそこから加算すると今のわたしってさんじゅ……やめ。


 「うちにやってきた時はもう既にそこそこ大きくなっていたものね。コルセア、あなた現界に来てから何年くらい経つのかしら?」

 『それもよく覚えてませんねー。暗素界のことも、知識としてはあっても経験としてはよく分かんないです』

 「そう。その辺もっとしっかり話が出来ていればバスカール先生もお喜びでしょうにね」

 「あ、そうだ。でしたらコルセアのお誕生日も決めてしまいません?」

 「え?」

 『ふぇ?』


 見ると、いいこと思いついた!みたいに、ネアスが両手を合わせて晴れ晴れした笑顔になっていた。


 「だって、アイナ様やわたしのお誕生日ばかり祝ってて、コルセアのお誕生日をお祝いする機会がないのもさびしいじゃないですか。わたし、年に一回くらいコルセアに日頃の感謝をこめて、たっぷり贈り物をしてみたいです!」

 『贈り物ならいい肉がいいです』

 「おだまりなさい。折角の良い話が台なしじゃないの。でも、それはいい考えね。コルセア、いつがいい?」


 誕生日を「いつがいい?」で決めるのもどーかと思うんだけど。でも、決めさせてくれるっていうのなら…。


 『今日がいいです』

 「今日?いきなり?どうして?」


 ネアスが目を丸くして尋ねてきた。でも、どうしてと言われても理由なんか決まってる。


 『今日、お嬢さまの誕生日と一緒が、いい。だって、お嬢さまと一緒なら、お嬢さまが誕生日でイヤな目に遭ってもわたしの誕生日で上書きできるもの。お嬢さまと同じ日にお祝いしてもらえるなら、嬉しいのも辛いのも分け合えるもの』


 お嬢さまは、力のある貴族の令嬢だ。誕生日一つとっても私事だけで済ませられない。

 子どもの頃ならそれでも良かったけれど、これからはそうも言ってられない。アイナハッフェ・フィン・ブリガーナで居続けても、帝室ロディソン家に嫁いだとしても、それは絶対に変わらない。

 だったら、お嬢さまの側にわたしがいれば、わたしの誕生日はお嬢さまのものでもある。楽しいこと、いっぱい作れる。

 だから、お嬢さまと同じ日がいい、と伝えたら。


 「コルセアっ……あなた、なんて……」

 「コルセアっ!アイナ様のことをそこまで…っ」


 隣のお嬢さまにはそっと、向かいのネアスにはダイビングさながらに、抱きしめられてしまった。え、ちょ。

 これから蕾もほころび始めよう、って年頃の少女二人に包まれて、わたし至福の心持ち。


 『え、あ、ちょっと二人ともー…ぐ、るじ……』


 なんて言ってる場合じゃない。お嬢さまもいつの間にかネアスと張り合うよーに力を込めてきて、それを見てネアスも負けじと力を入れて。

 いつもよりずぅっと強い力で挟み込まれたわたしは、感激して泣いているのかと勘違いされて解放されるまで、二人の親友にもみくちゃにされたのだった。


 ともあれ、こーしてわたしの誕生日は決まる。翌日はなんかいろいろプレゼントされて、ハッピーバースデー、わたしアンドお嬢さま。

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