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第222話・帝都の空駆ける竜(帝都の外れで地を這う竜)

 『オラァッ!!』


 うわっ!、とか、ひいっ?!、とかいう悲鳴を立ち上らせつつ、わたしは四裔兵団と第二師団がケンカ(戦争してるようには見えなかった)してる間に乱入した。


 『あんたらいつまでくだらない争いしてんのよ!こっちは昼メシ前に済ませて帰るつもりなんだから、ほら解散!解散!』

 「なんか趣旨変わってない?そもそもコルセアちゃんどうしてここに来たんだっけ」


 そりゃ一応、陛下を救出してこのアホな騒ぎを終結させるため、って分かってるけどさあ。展開がアホらしすぎてどっか違うところからやる気出さないと最後まで保ちそうにないんだもん。


 「コルセア殿っ!邪魔立てするというのならあなたとて容赦はしませんぞ!」


 そして騒ぎの中、まだしもわたしと会話の成立する、四裔の隊長が怒鳴り込んできた。


 『うっさいわっ!大体、第二師団なんてもうアタマ無くして敗走するだけだってのに、なんであんたたちはコイツらにいちいち突っ掛かってんのよっ!さっさと陛下探して助けだしゃあいいでしょうに!!』

 「こちらの意図を察したのか、妨害をし始めてきたのです!排除せねば先に進めません!」


 『ドやかましいっっっ!!』


 ビクン!………という音が聞こえそうな勢いで、第二師団に四裔兵団、双方の男どもが直立不動に身を固くする。うわなにこれおもしれー……とか言ってる場合じゃなく。


 『あんたらいつまでこのアホな騒ぎ続けるつもりなのっ!第二師団のバカども!』

 「バカとか言うなこのクソトカゲ!!」

 『うるせーバカ!ほら身の程知らずのあんたらの親玉はこれこの通りよっ!これくれてやるからとっとと帰れ!』

 「師団長っ?!」


 ぽーい、っと放ったヒゲ男爵は相変わらず気絶したままだったけど、一応見捨ててはおけないと思われたのか、数人ほどが慌てて駆け寄り抱きとめた。


 「……む、何だ、何が起こった……?」

 「師団長、ご無事でッ!」

 「これは一体……む、もしやかの暴虐なるトカゲをついに滅して」

 『はぁい、おはよ』

 「………きゅう」

 「師団長ーっ?!」


 せっかく目が覚めたのだからとアイサツしたら、また気絶しちゃった。もうこいつはわたしと対面しない方が人生穏やかに過ごせるんじゃないかしら。


 「貴様よくもッ!師団長の仇っ!!」

 『知らないわよ勝手に気絶しただけじゃない!ていうかあんたらもこのオッサンに忠義立てする価値あると思ってんの?』

 「…………」


 考えこむな考えこむな。他人事ながら気の毒になるわ。


 「敵は意気消沈したぞッ!今こそ殲滅のため進めーッ!!」

 『あんたらもよっ!!』

 「え、ええっ……?」


 そしてなんか黙り込んじゃった第二師団を前に意気軒昂の四裔兵団。ええいこの中年愚連隊どもめ。


 『大体あんたたちなんで帝都なんかに顔出してんのよっ!四裔と名乗るのならそれらしくちゃんと帝国の四方を守るのが筋ってもんでしょーがっ!!あんたらが持ち場を放り投げたからわたしが東の国境くんだりまで行ってカルダナを撃退してきたってのに、なぁんで帰ってきたらコトの張本人であるあんたたちの尻拭いまでせにゃならんのさ!!もういい加減にぃ…………しろ─────っっっ!!』


 再び大気を胸一杯に吸う。

 暗素界に強制オーダー。いつもやってるみたいなテキトーな感じのヤツなんかじゃなく、本気の本気、言うこと聞かなかったら文句言いに行ってやる、くらいの。

 ただし、どうせアイツのことだからそれでも素直にこっちの欲しいものくれるとは思えないので策を講じておくことにする。具体的には火力ではなく空飛ぶ力の方をオーダーしておいた。どうせ力の淵源としちゃ一緒なんだから、気界を通るときにちょこちょこっと弄って火力に転化すりゃーいいのだ。少し面倒くさいし絶対的な力としては少し落ちてしまうけど、この場のバカどもにお灸を据える分にゃ十分だ。


 「コ、コルセアちゃん……なんかお顔が怖いんだけど……」

 『あん?ドラゴンの顔が怖いなんて古今東西じょーしきでしょうが、じょ・う・し・き。あとあんたその位置でわたしの顔が見えるの?テキトーぶっこいてんじゃないわよ……と、お。きたきた。ククク、これで下界のアホどもを一掃してくれるわ………ッ!』


 マァイ、パワァー!カァァァムヒィィィヤァァァ!!


 【いいかげんにしなさい、このバカ娘】


 はい?


 絶好調ブリブリで叫んだ直後、やって来たのは気界が改変された我が力なんかではなく、わたしの経験したことのない「ナニか」だった。

 いやもう、後頭部を一発イワされてそのまんま気を失ったとあってはほんと、「ナニか」としか言い様がない。




 目が覚めたら暗素界だった。

 そしてわたしの目の前には、存在感がはんぱない、竜のようなヤツがいた。言わずと知れた、暗素界におけるわたしの本体にして、なんか母親的なソレだ。一体何ごと。


 【なにごと、も何もありますか。千那、あなたいい加減にしなさい。自分のものではない力に酔って何をしているの。恥を知りなさい、恥を】


 ……いやまあ、予想はしてたけど。

 なんつーか、この歳になってこんなことを言うのもアレだけど、わたしは遊び場で踊ってたらママンにいきなり連れて帰られて説教食らってる、ということになる。

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