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第150話・これは頑張ったわたしへのごほうびだからっ!

 いつものよーに、ネアスの部屋の窓をたたく。


 『ネアスー、こんばんはー』


 結構夜も更けてるのにまだ起きてるのか、灯りが点いていたので、お嬢さまとお話しでもしてるのかしら、と思ってたら、中からどったんばったんする音がして、しばらくしてからカーテンが開いた。そこにいたネアスに、わたしはいつものアイサツをする。


 『や。良い夜だ………ね?』

 「ああああなたこんな時間に何しに来てますのっ?!」


 ……と思ったらお嬢さまだった。なんか赤い顔してる。


 『……何しにもなにも、せっかくだからわたしも混ぜてもらおーかなー、って。お嬢さまこそ何してたんです?とりあえず中に入れてくださいな』

 「………うー」


 不満というより後ろめたいところでもありそーな顔で窓を開けてくれたので、わたしは遠慮なく部屋の中へ。したら。


 『……や。良い夜だねネアス。何してたの?』

 「ななななんでもないよっ?!」


 ……ベッドに腰掛けてガチガチになってるのに、なんでもないっていうのはなー。いくらなんでも家族もいる家で盛ってるってのはどーなんでしょ。

 まあでも気付かないフリをするってのがペットの嗜み。わたしは知らん顔でネアスの隣に着地した。


 『……えい』

 「ひゃっ?!」


 そしてそのままネアスのひざに横倒れ。この膝枕をお嬢さまに独占させてなんかやんない。


 「……ええと、コルセア?もしかしてさみしかったりする?」

 『そーいうわけじゃ。ただ、わたし今日は割と頑張ったのでご褒美欲しいなー、って。お嬢さま、のどやってください』

 「……仕方ない子ですわね」


 どっちに来るかな、と思ったけれど、お嬢さまはネアスの隣ではなくわたしを挟む位置に腰を下ろし、そしていつものようにわたしの喉のところをかいぐりかいぐりしてくれた。位置的に腕を伸ばしてネアスの足の上だから、二人の顔も近付いちゃっていたけれど。


 「………」

 「………」


 そんで、わたしがいよーがいまいが、そんな格好になった二人のすることなんか決まっているのだ。

 だから言ったじゃん。わたしいても別に邪魔になんかならないって。

 喉を撫でられてると襲い来る睡魔に抵抗し、薄目を開く。横目で天井の方を見るとお嬢さまとネアスが濃厚接触してた。

 けど……なんていうか、わたしが想像してたようなえげつな…えっちぃ感じじゃなくて、とても尊いもののように思える。


 「こら、コルセア。こちらを見るのではありません」

 「ふふ、いいじゃないですかアイナ様。わたしコルセアが一緒にいると思うと、すごく落ち着くんです」

 「……そういうものかしらね」


 わたしの喉をいじる手を休めず、お嬢さまはもう一度ネアスに顔を寄せた。

 ネアスも逆らわず、わたしの頭を撫でながらお嬢さまを受け入れた。


 「……ネアス。愛してますわ」

 「……アイナ様。わたしも……ん」


 それは啄むようだったり絡めるようだったり、音もしたりしなかったり、いろんな風に二人は唇を重ねてた。

 その間わたしは……ほっとかれたわけじゃなく、互いに抱く想いをわたしを通じて交換するように、優しく、とても情熱的にわたしを……なんかこれ、まるでわたしまで愛撫されてるみたいだなあ……体がぽかぽかしてくる……んー……。


 「……ふふ、コルセア眠たそうです」

 「そうね。今日はいっぱい頑張っていたものね。ありがとう、コルセア」


 ふわぁい。こちらこそありがとーございますぅ……。


 わたしは眠くなって大あくび。

 お行儀悪いとは思うけど、二人とも窘めたりしないでわたしのウロコの上で相変わらずゆっくりと、丁寧に指を這わせてくれていた。

 だからとっても、安心する。わたしはいてもいいんだ、って。この二人と一緒にいて、邪魔になんかされてないんだって。

 時々わたしはいないこともあるけれど……そんな時にお嬢さまとネアスがどんな会話をしてるのか、ちょっとは気になるけれど……。

 ……んー、なんだろね。わたしがいない時の二人って、なんかイケないいたずらしてる、って感じだけど……わたしがいると、なんかこお、もっと……なんだろね……ねむ……。


 お日さまの照らす下でお昼寝をするような心持ちで、わたしは緩く暖かく、眠気に誘われていったのだ……。




 そして翌朝。


 『………どゆこと?』


 理力兵団のクーデターは、鎮圧されていた。

 ……いやほんと、なんでだ。

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