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第13話・とんでもねぇあたしゃ神さまだ

 「ま、まずね。あたしは神さまなの。神さま。おーけい?」

 『………』

 「そ、その気の毒な人を見るような目付きやめてもらえるかしら…ドラゴンにそんな顔向けられると、こいつ食っても腹壊さねえで済むかな、って値踏みされてるみたいで…」


 いや実際話の展開ではパクリといってもいいかも、とは思っているけど。

 まあでも数十年後ならいざしらず、今のわたしにはちょっと大きすぎる。食べ物を腐らすことは罪悪だとゆー貧乏OLの食の常識がいまだ残るわたしには、過ぎたる獲物だと思う。


 『…で、そろそろ話とやらをしてもらいましょーか。コトと次第によっちゃあお望みどーり、ガブリといくけど』

 「望んでないわよそんなことっ?!……えーと、名乗っておくと、あたしは花の女神パレット。よろしくね」


 女神を自称するわりには普通の名前だった。もっと長くて自己紹介の途中で噛み付いてやりたくなるような名前かと思ってた。


 「お願いだから話が長くなっても噛み付かないでね。それでね、あなたをこの世界に送り込んだのは確かにあたし。どう?憧れのゲームの世界と一体になれて嬉しいでしょ?」

 『誰がトカゲに憑依させてくれと頼んだってのこの、二日後はドラゴンのうんこ』

 「……食べないでね?」


 いいや、食う。いずれそのうちに。


 「とにかくね、あなたがあたしの目的には一番ぴったりだと思ったの。それで、こういうことになったんだけど。それで何か聞きたいことはある?」

 『レアとウェルダンどっちがいい?わたしとしては炭もオススメだけど』

 「女神の焼き加減とか聞いていないから!…ええとね、どうすればこのループが終わるのか、ってことなんだけど」


 分かってるんなら勿体ぶるなってーの。それで?


 「ええ。茅薙千那さん。あなたをこの世界に送り込んだのは、多くのひとの望みをかなえるため。そのことに尽きるわね」

 『そんな漠然としたことを言われても。具体的に何をしろっての』

 「それを明かすことは出来ないのよ。今のところは」


 そこの所だけは、自称女神のパレットとやらも心の底から深刻そうに言っていた。

 小学校の屋根の上で気分出してもさっぱり締まらないと思ったけど、取って食らう、ってゆー最後の手段を使うにはまだちょっと早い。

 それに、だ。

 この自称花の女神とやらのパレット、って女は、「ラインファメルの乙女たち」の中では全く出てこなかった。つまり、本当にこの世界の住人ではない。いや、何かを拗らせた頭のアレなモブとかって可能性ならあるかもだけど、ここがゲーム世界をモチーフ?にした世界だということを知っていて、あたしの前世の名前を知っているのだから、ゲームの世界外の存在ってことに違いはないと思う。

 だから、ってわけじゃないにしても、お嬢さまやネアスちゃん、伯爵さまご一家、それからいつもお肉をくれる角の肉屋のおじさんに抱く親しみとはちょっと違う、同士めいた共感のようなものを、この女神とやらに感じてしまったのは……本人に知られるべきではないね。


 「だってネタバレしちゃったゲームプレーヤー眺めてたって面白くないものねっ!やっぱりさあ、展開知らずに驚いたり泣いたり笑ったりして悶えてるとこ見てたほーがおもしろ……え、あの、また何だかすんげぇあたしに良くない目付きになってるんだケド……」


 うん、前言撤回。わたしの気の迷いだった。こいつは燃やす。炭も残らないように燃やしてくれる。それがわたしと全世界のためだ。決定。


 「あ、あの?……コルセア…ちゃん?」


 カタカタ震えながら立ち上がって後ずさる自称女神を追い詰める。くくく、どうせこいつ飛んで逃げたりするだろう。そしてその方が都合がいい。研鑽を重ねたわたしの火吹きは、かつてのように短い「ぼぼぼぼ」とかでなくて、ちょっとした火炎放射器くらいの威力にはなっているのだ。

 さあ、足掻け!飛べ!わたしに燃やされろっ!


 「……と、とにかく健闘を祈るわねっ?!あたしは遠くからあなたの活躍を願っているからっ!じゃっ!!」

 『逃がすかボケぇぇぇぇぇぇ!』

 「ひぎぃぃぃぃぃぃっ?!」


 予想通り空を飛んで逃げていく自称女神。そいつの背中に向けて火炎というより既に火柱とも呼べるレベルに達していたわたしの攻撃が追い縋る。

 そしてドレスのスカートに炎が届くと火が点いて、あちあちあち、とか言いながら慌ててそれを消した後には、ミントグリーンのパンティ丸出しになった下半身が見えていた。ごてーねーに紐パンである。誰に見せるつもりなのやら。


 「……っく、ちくしょー、おぼえてろぉぉぉぉぉ!アンタ絶対ろくな死に方しねーわよーっ!!」


 仮にも女神の捨て台詞としてはどーなんだそれ。それにどうせわたしの最後なんかきっと、数百年孤独に過ごして友人もいねー中自然に還るとかいうろくなもんじゃねーわ。あ、なんかそう考えたら寂しくなってきた…。


 ともあれ、わたしにとってのラスボスが存在を現したことで、逆にゲームの展開っぽくはなってきた。どう考えても乙女ゲーじゃなくてロールプレイングだけど。

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