72.キング・ミノタウロス討伐
「今ならいけるぞ!!」
誰かがそう叫んだのが契機だった。
兵士たちが一斉にキング・ミノタウロスへ斬りかかっていく。
それまではまったく歯が立たなかったが――
「グアァァッ!?」
兵士たちの攻撃で初めてキング・ミノタウロスがダメージを食らう。
「やったぞ!!」
「いける!」
それを見た兵士たちは続々キング・ミノタウロスに突撃していく。
それまで兵士たちを完全に足蹴にしていたキング・ミノタウロスもいまや防戦一方だ。
そんな中、アトラスはもう一体のキング・ミノタウロスと一人対峙する。
「――倍返し!!」
キング・ミノタウロスの攻撃を受けては、それを跳ね返しどんどんダメージを与えていく。
「ヒール!」
アニスの補助を受けて回復。
そして、キング・ミノタウロスが最後のあがきとばかりに一閃を放つ。
それを真正面から受け――それで引導を渡す。
「倍返し!!!!」
一体のキング・ミノタウロスはその攻撃でついに倒れた。
「やった!!」
とアトラスがキング・ミノタウロスを倒したそのころ、反対側でも同じように歓声が上がった。
兵士たちがもう一体のキングミノタウロスを倒したのだ。
「やったぞ!!!!」
「俺たち生きてる!!」
「あいつらを倒したんだ!!」
死地を乗り越えて、兵士たちは歓喜して涙を流しながら抱き合う。
「アトラスさん、やりましたね!!」
「うん、よかった」
アトラスとアニスは兵士たちよりは少し冷静に喜びを示した。
「……アトラス、アニスさん」
と、兵士たちが功労者であるアトラスたちに駆け寄ってきた。
「おかげで助かりました。本当にありがとうございます」
「今まで無視して申し訳ありません。私たちを救ってくれて、本当にありがとうございます」
「いえ、そんな……」
アトラスは頭をなでながら頭を下げる。
「……将軍が逃げた時は本当にどうなるかと思いましたが、アトラスさんたちがいて本当によかった」
と、誰かがそう言ったことで、皆その存在を思い出す。
「そもそもこんな危険な戦いにでなきゃいけなかったのは、全部アイツのせいだろ」
「まさか将軍が部下を置いて逃げ出すなんて、許せねぇよな」
それまで溜まっていた不満が一気に爆発する。
「……まぁ、さすがにこればかりは許されないですよ。きっと処罰されると思います」
アトラスが言うと、そこで皆が一瞬トーンダウンする。
「でも、アイツはここじゃ王様です。将軍を罰することができる人間なんてどこにもいないんですよ……」
それは確かに事実だった。
将軍はこの地では一番偉い。
それ以上の人間がいないのだから、何をしたところで彼が裁かれることなどないのだ。
だが、将軍が偉いのはあくまで「この地では」の話だ。
「……僕から王女様に話してみますよ」
アトラスがそう言うと、兵士たちは歓喜した。
「王女様に!!」
「ようやくアイツから解放されるのか!」
「ざまぁみろ!!」
兵士たちは今一度歓喜の声を上げるのだった。




