66.無謀な攻略
翌朝。
軍の将校たちはアドルフ将軍の元に緊急招集された。
「よく聞きなさい。私達は<魔境>の攻略を行うわよ!」
将軍がその言葉を発した時、一瞬にして場が凍り付いた。
「ま、魔境ですか!!」
部下たちはお互いに顔を見合わせて動揺する。
<魔境>には強力なモンスターがうようよいて、過去の攻略もことごとく失敗に終わっていた。今回だってそうなるに決まっている。
だが将軍はそうは思っていなかった。
「この攻略を成功させれば、王国に私たちの名前が轟くわ!」
アドルフは意気揚々と部下を鼓舞する。
だが、当然部下たちはそのテンションについていくことができなかった。
「なに!? あんたたち、もしかして不満でもあるの!?」
「い、いえ、そんなことはッ!!」
「じゃぁ問題なしね。早速今日から侵攻をスタートさせるわ」
部下たちは、なお悪いことに攻略がまさに今日から始まるのだと知って絶望する。
すなわち、戦力の補填はなく、東方防衛軍単独で攻略を進める必要があった。
「ああ、そうそう。後ひとつ大事なことがあるわ」
将軍は皆を見て言う。
「新入りの出向組二人だけど、彼らと協力して戦闘をすることを禁じます」
将軍の言葉に、部下たちはみな言葉を失った。
部下たちの間でも、既にアトラスたちが強力な冒険者であることは認知されていた。
目の前にいる将軍よりも頼りになる存在だと既に知れ渡っていた。
だが、将軍が彼らのことを気に食わないのだということも同時に理解していた。
「二人には二人のチームワークがあるみたい。だから彼らの好きにやらせてあげるために、余計な手出しは無用。バフでの強化やポーションの提供も一切禁じます」
まったく筋が通っていない将軍の説明に、しかし部下たちは慣れ切っていた。
将軍が青といえば青、赤といえば赤。それが軍でのおきてだった。
「それではさっそく侵攻開始よ!」
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