表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/73

59.婚約者?


 ――アトラスは叙勲式に参加するため、王宮へとやってきた。



「ブラックギルドで平隊員やってたのがウソみたいだよ……」


 妹ちゃんがアトラスの横でしみじみ言った。

 ちなみに、ガッシリとアトラスの腕を掴んでいる。



「あのさ、妹ちゃん? 王様たちの前に行くし、さすがに腕を離してくれる?」



 アトラスが言うと、妹ちゃんはガン無視で歩き続ける。


 結局、式典が行われる部屋に入って、王と対面するまで腕が離されることはなかった。


「アトラス、よく来たな」


 王様は満面の笑みを浮かべて出迎える。


「本日はよろしくお願いいたします」


 アトラスがうやうやしくお辞儀をすると、王様はその肩をバシバシ叩いた。


「そう固くなるな、我が息子よ!」


「(わわ、我が息子……?)」


 アトラスは王様の言葉の意味をすぐには飲み込めなかった。


「ところでアトラスよ。そちらのお嬢様は?」


「えっと、こちらは妹のアリスです」


「なんだ! 妹か! 我が娘を差し置いて、女をつくったのではないかとヒヤヒヤしたぞ! ガハハ」


「(ん?)」


 アトラスは強い違和感を覚えた。


「(なんか、まるで僕が王女様の婚約者にでもなっているかのような言い方だが……王宮なりのジョークかな?)」


 と、そこに王女がやってくる。


「アトラスさん、本日はどうぞよろしくお願いします」


「はい、こちらこそ」


「ところで、そちらの女性は?」


 と、現れたときからずっとそうだったのだが、王女の視線はアリスに釘付けだった。


「えっと、こちらは妹のアリスです」


 アトラスが言うと、王女は露骨に笑みを浮かべた。


「なんだ、妹ですか!」


 心底安心したという表情を浮かべる王女様。


「(ん? やっぱりさっきから違和感が……?)」


「……アトラスの妹のアリスと申します。幼いころから兄とはずーーっと仲が良く今日もこうして兄の相方としてやってまいりました」


 妹ちゃんはなぜか少しムキになったように言った。


「(なんかよくわからないけど、張り合ってる……?)」


 それに対して、王女様は「なるほど」と笑みを浮かべて言う。


「兄妹の仲がよいのはいいことですね!」


「……ええ、兄は私のことが大好きでして。例えば、こんな感じに」


 と、妹ちゃんがポケットから伝家の宝刀を取り出した。


 ――くだんの録音石である。


「ちょ、おまっ!」


 アトラスは妹ちゃんの暴挙を止めようとする。

 だが、間に合わない。


『――妹ちゃん、大人になったら結婚しよう!』


 そのアトラスの黒歴史が、王宮に響き渡った。


 ――――シーン。


 静まり返る王宮。


 気まずすぎてなにも言えなくなるアトラス。


 だが、次の瞬間、予想外の反応を示したものがいた。


「アトラスさんは昔から妹思いのいいお兄ちゃんだったんですね! ますます好きになりました」


 満面の笑みでそう言うのは王女様だった。


 それに対して拍子抜けした表情を浮かべる妹ちゃん。


「(なんだかよくわからないけど、王女の勝ちらしい?)」


 アトラスは何が起きているのかサッパリわからなかったが、妹ちゃんが何か張り合おうとして、しかし王女がそれを颯爽と躱したのだということだけはわかった。




「……こ、この女……」



 ――と、どこかでそんな小声が聞こえた気がした。


「(き、気のせいだよな?)」


 †


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼アメカワの新作です。本当におもしろいので、ぜひお読みください。▼

☆『ドM勇者は追放を悦ぶ。~ダメージを受けるほど強くなるマゾヒスティック勘違い無双~』
― 新着の感想 ―
[良い点] コミカルな内容で妹ちゃんがカワイイと思います。 [気になる点] どうしても気になってしまったのが31話で妹ちゃんと王女が既に出会って、お互いそこそこ強烈な印象に残るような出合い方をしてるの…
[一言] 妹ちゃんと王女って、王宮デートでギルマスと闘った時にもう会ってなかった?
[気になる点] 31話で王女と妹が会話をする描写がありましたが、何故初対面かのようなやり取りになっているのでしょうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ