58.【ジョージ王子side】島流しは因果応報
――憲兵に連れられて、王都からはるかかなたの孤島エリバ島に連れてこられた元王子ジョージ。
船が岸に着くと、島の唯一の住人たちがジョージを出迎える。
「これはこれはジョージ様。ようこそおいでなさいました」
出迎えた男たちの顔に、さすがのジョージも見覚えがあった。
ジョージの機嫌が悪かったというただそれだけの理由で、島流しになった宮廷騎士団の元副団長たちである。
「……!! お、お前たち!」
かつてであれば圧倒的に上の立場から接することができた元部下たち。
だが、今のジョージは既に王子でもなければ、宮廷騎士団長でもない。
ただの囚人である。
左遷という形で島流しになったとはいえ、騎士である彼らとは立場に大きな差があった。
そして、その待遇にも差がある。
「ジョージ様。正式に辞令が出ましたので、我々は一週間後には王都に戻ります。僭越ながら私は団長代理の任を預かりましたので、ジョージ様の後任を務めさせていただきます」
「な、なんだと!? ぼ、僕を置いていくのか!?」
「船なしに島から抜け出すことはできませんから、見張るまでもありません。そうですね、一年に一回くらいは生存確認に誰かがくるかもしれませんが、こないかもしれません」
「そんな!!」
「ですので、少しの間だけですが、我々がジョージ様の面倒を見させていただきます」
「……そ、それで家はどこにある? 寒くて仕方がないんだが……」
「それならあちらです」
と、元副団長は丘の上の掘っ立て小屋を指出す。
まだ家畜の小屋の方が立派。という印象の代物だった。
屋根ははがれかけており、薄い木の壁には穴が開いている
「あ、あれが僕の家か!?」
「その通りです」
宮廷暮らししかしたことがない王子は絶望する。
「……と、ところで、腹が減ったし、のどが渇いた。水と食べ物をくれるか」
ジョージは王子気分が抜けきれないまま、元副団長にそう言った。
「ジョージ様。ここではご飯は勝手にでてきませんよ。食べるものは自分で探してください」
「な、なんだと!?」
「バッタがいくらかいるのでそれを主食にするといいと思います。あと、少し歩いたところに野草もありますから」
「ば、バッタ!?」
エリバ島は見捨てられた土地だ。左遷された騎士たちが自分用に持ち込んだもの以外にまともな食料はなかった。
「それから、いくつか種芋を差し上げます。これを育てれば多少食糧事情は改善するかと。ただ一つだけ注意していただきたいのですが、この島は栄養事情があまりよくありません。なので、大変汚い話で恐縮ですが、ご自身のお身体から出てきたものは、畑にばらまいて栄養にしたほうがよいかと……」
「ななな! なんだって!? バカ言うな!?」
「いえ、ジョージ様。真面目に申しております」
ジョージは流刑の過酷さに身を震わせる。
「おお、お前たち! こんなの無理だ!! 助けてくれ 死んでしまう!!」
ジョージは元副団長に泣きつく。
「いえ、王子様。死にはしません。私たちは王子様に命じられてからずっとここで生きてまいりましたから」
元副団長は真顔でそう言った。
「……ッ!!」
因果応報とはまさにこのことであった。
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・これで王子sideの話は最後です!
・少しずつ脇道にもそれたいなと思っているので、このキャラの話がもっと見たいというのがあったら、ぜひ教えてください!




