56.叙勲
――哀れな元王子が泣き叫びながら連れていかれた後。
「アトラス君、ジョージが迷惑をかけて本当にすまない」
王様がアトラスの元へやってきて頭を下げた。
「い、いえ!! そんな!」
「君がいなければ、街は大変なことになっていただろう。本当にありがとう」
「……そんな……。でも、すみません、王室の魔剣を砕いてしまいました……」
「いや、あれはもともと壊したかったものだったのだ。しかし強力すぎて手が出なかった。それを君が砕いてくれたのだ。君のおかげでこの国の憂いが一つなくなった。本当に感謝している。君はまさにこの国の英雄だ」
王様から続く絶賛の嵐に、もうアトラスはただ顔を赤くして頭を掻くしかなかった。
そして、最後に出てきたのは、誰も予想していなかった言葉だった。
「アトラス君、近々正式に打診するが、君にはぜひローレンス騎士団のナイト爵を授与したい」
「な、ナイトですか!?」
生粋の平民であるアトラスはナイトという言葉に思わず声を上げる。
ナイト爵は、平民としては最高級の称号になる。
「当然のことだ。王都を救ってくれたのだからな」
アトラスは挙動不審に周りを見ると、妹ちゃんの顔が視界に入ってくる。
「サーお兄ちゃん!」
「さ、サー……!」
――アトラスはずっと目をぱちくりさせ続けたのだった。
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