55.王子の断罪
――アトラスも、まさか自分が再びこの場所にやってくるとは思ってもみなかった。
「ジョージ王子。お前の罪を問う裁判を始める」
裁判長となった王様がそう告げる。
裁判所の前方には、王様を中心に近衛騎士の面々が座っている。
そして部屋の中心には鎖につながれたジョージ王子が立つ。
後方には宮廷騎士団の騎士たち――ジョージの部下たちが控えている。
「父上! なぜ私が鎖につながれているのですか!!」
そう抗議する王子。
だが、それに対して王が一喝する。
「黙れ! まさかこの期に及んで罪を認めない気か?」
「つ、罪ですか!? 確かに王室の剣を持ち出しましたが……」
「持ち出した? 封印された魔剣を盗み出し、扱いきれずにそれに飲まれたのだ。一歩間違えば、民に甚大な被害が出ていたのだぞ」
「父上! わわわ、私はこの国の王子です! まさかその私を裁くというのですか!?」
「お前は、自分の欲のために掟を破り、民を危険な目に合わせた。当然のことだ」
「ししし、しかし! 宮廷騎士団の団長として、王国の威信を守ろうとしただけでございます!!」
「何が威信だ。お前の成長を願って団長の職につけたが、お前が好き勝手をしていたことは知っている」
「す、好き勝手?」
「お前が腹を立てるたびに、優秀な騎士たちを離島送りにしたことは聞き及んでいる」
「そ、それは、怠けている者に少しお仕置きを……」
「自分の実力不足を魔剣で補おうとしたやつが何を言う! お前以上の怠け者がおるか!」
「し、しかし父上……」
ジョージ王子が罪を悔いることはないというのは明白だった。
「……ジョージ王子。お前が罪を認めるのであれば、多少罰を軽くすることも考えた。しかし、お前にその気はないようだな」
「ちちち、父上!? お、お、おおお王子である私を本気で裁くのですか!?」
震え声の王子に、王は告げる。
「もはやお前は王子ではない」
「ッ!!!」
その言葉を聞いて王子は絶句する。
「ち、父上!! わ、私は王子ですよ!? 跡継ぎはどうするのですか!?」
「ルイーズがいる。何の問題もない」
「そそそそんな!!!」
「ジョージの王籍をはく奪し、エリバ島に流刑とする」
「え、えエリバ島!?」
エリバ島。今までジョージが気に入らない部下を送り込んできた場所である。
「そ、そそそそんな!お、おい! お前たち、僕がいないと困るだろ!?」
と、ジョージは宮廷騎士団の元部下たちにそう助けを求める。
しかし、助けを求められた副団長はこういった。
「ジョージ様。エリバ島にはジョージ様のご配慮によって送られた騎士たちがたくさんおります。その者たちがジョージ様のお世話を任されてくれることでしょう」
――その騎士たちは、国で一番名誉ある宮廷騎士団の立場から、いきなり離島に左遷されて全てを失ったものたちばかりである。
王子の立場を失ったジョージをお世話するとなれば、多少力が入ってしまうのも無理はないだろう。
「そそそそ、そんな!!」
「騎士たち。罪人をエリバ島に連れていけ!」
「ハッ!!」
「そそそ、そんなぁぁあああああああ~ たた、たすけてぇ~~~~!」
裁判所に元王子の情けない声が響くのであった。
†
※後で書きますが、島流しにされた元部下たちはちゃんと全員戻ってきますのでご安心を!
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