54.逮捕
「か、勝ったッ!!!」
皆の力を集結させ放ったアトラスの一撃が、巨竜の動力となっていた魔剣を打ち砕いた。
巨竜は地面に倒れこんだ後、その肉体は光となって四散し、実態を失った。
そして、中から王子が出てくる。
アトラスが確認しに行くと王子は生きていた。気絶状態になっているだけだ。
「お兄ちゃん、さすが!!」
妹ちゃんがアトラスに抱きついてくる。
「おい、ちょっと……」
皆が見守る中で妹に抱きつかれ、あたふたするアトラス。
その様子を見て、周囲の張りつめていた空気も解ける。
一時はどうなるかと思ったが一件落着だった。
――と。
「――――殿下を確保しろ!」
背後から鎧を着て馬に乗った人間が複数現れる。
肩に就いた紋様は、彼らが近衛騎士であることを示していた。
すなわち、王の直属部隊である。
近衛騎士たちは、王子のもとに駆け寄り、左右から両腕を引っ張ってその身柄を持ち上げる。
と、そこで王子がようやく目を覚ました。
「……ぼ、僕は……」
最初状況をつかめないでいた王子だったが、自分の腕が近衛騎士によって固くつかまれていることに気が付き驚く。
「な、なんだお前たち!? 離せ!」
王子はそう言うが、近衛騎士が手を緩めることはなかった。
「殿下。恐れながら、王様の命により身柄を拘束させていただきます」
「な、なんだと!?」
「魔剣を持ち出し、王都を危険にさらした容疑がかけられております。守衛の証言で裏もとれておりますが、ご弁解があれば裁判で王様に直接訴えてください」
「さ、裁判だって!?」
自分が裁かれるらしいということを知った王子は、驚き目をむいた。
近衛騎士のリーダーが部下たちに命令する。
「連れていけ」
「そ、そんな!! や、やめろ!!」
引きずられていく王子。
その様子を哀れに思う人は皆無だった。
すると、近衛騎士のリーダーがアトラスに話しかけてくる。
「アトラス様。これまでの状況を聞かせていただきたく、お時間をいただけますか」
「え、えぇ……」
アトラスは困惑しながら近衛騎士についていく。
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