46.王子の失態
今後『妹ちゃん、俺リストラされちゃった…』は、月曜日と木曜日の定期更新にいたします。
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倒れ込んだ王子。
疲弊しライフがわずかになった宮廷騎士たち。
そしてその背後の学生たちはただただ怯えている。
そんな状況を見たアトラスは、勢いよくボスに斬り込んでいった。
「ハァァッ!!」
ドラゴンゾンビに対して勢いよく斬りかかるアトラス。
そして反撃してきた敵の攻撃を<倍返し>で跳ね返す。
「ぐぁぁぁ!!!」
SSランクとはいえ、アトラスパーティにかかればさほどの脅威ではなかった。部下たちの支援もあり、五分ほどの短い戦闘でドラゴンゾンビのライフは尽き果てる――――
ボスを倒し、学生たちが危機を脱したことを確認したアトラスは一つ大きく息を吐いた。
「みなさん、大丈夫ですか?」
アトラスは学生たちの方へに歩み寄っていく。見渡すと、幸いライフが減っているものはいなかった。
「あ、ありがとうございます!!!」
「おかげさまで無事です!!」
ボスがいなくなり緊張の糸が途切れたのか、学生たちは安堵の笑みを浮かべ、そして救世主であるアトラスの方へ駆け寄ってくる。
「あ、あの冒険者さんのお名前は? お名前はなんていうんですか?」
「あ、アトラスだけど……」
「アトラスさん!! 本当にカッコよかったです!!
「あんなに強いボスを瞬殺するなんて!!」
「宮廷騎士団でも勝てなかったのに、すごいです!!」
アトラスは当然そんな風に褒めちぎられて、どうしていいのかわからずたじろいでしまう。
「い、いや……えっと……」
眩しい目で見てくる学生たちを直視できず、挙動不審に視線を泳がせていると、アトラスの視界に宮廷騎士たちの姿が入って来た。
「そうだ。王子様!」
アトラスは王子様が倒れ込んでいたということを思い出し、女子たちから逃げるように王子様の元へと駆け寄った。
見ると、相変わらず気絶していた。おそらく脳天から強烈な一撃を食らって状態異常になったのだろう。
しかし、ライフはちゃんと残っているし、毒におかされている訳でもないので安全だ。
アトラスは状態異常を回復するポーションを取り出して、王子に飲ませる。
次の瞬間、すぐさま王子は目を覚ました。
「……!? な、なぜお前がここに!?」
目を覚ますなり動揺するジョージ王子。
「……えっと、中ボスの間に行ったら、ボスがいなくて、それでこちらに来たら王子様が倒れ……ボスと戦っていらっしゃって……」
アトラスは言葉を気をつけながら状況を説明する。
王子はすぐに状況を思い出す。
「!! ぼ、ボスは!?」
「倒しましたよ。安心してください」
――アトラスは、王子が学生たちの身の安全を気にしているのだとばかり思って、そう答えた。
だが、アトラスの言葉で王子は絶望した。
て、手柄を横取りされた!!
最悪な状況だった。
王子は恐る恐る背後を見ると……そこにはアトラスの方をキラキラとした眼差して見ている女学生たちがいた。
王子は言葉が出てこなかった。
ただただ嫌な汗が流れる。
「とりあえず攻略は明日からにしましょうか?」
アトラスは助け船のつもりでそう言った。
もはや王子は何も言い返すことができなかった。
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報告が遅くなりましたが、『妹ちゃん、俺リストラされちゃった』の書籍化が決まりました!
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