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44.【ジョージ王子side】これでもっと僕を崇めるだろう

44.【王子様side】これでもっと僕を崇めるだろう


 宮廷騎士団とアトラスパーティ合同攻略の日が終了する。


 パーティごとに別れて攻略に当たったが、その結果アトラスたちは宮廷騎士の数倍の成果をあげてしまった。

 ダンジョンがパラレル構造になっていたので、戦果が一目瞭然になってしまったのである。

 流石にアトラスたちも「宮廷騎士たちの想像以上の弱さ」に気を使わざるを得なかった。


 しかし他人がどう考えているかなど全く考える余裕もない王子は、胸を張ってアトラスたちに告げる。


「今日はご苦労だった。君たちが我々の足を引っ張る存在でないことはよくわかった。ひとまず合格だ!」


 あくまで、自分たちはアトラスたちの力を試していたという体裁にすることでプライドを保っているのである。


「土日はゆっくり休んでくれ! また月曜から頑張ろう!」


 王子が解散を宣言する。既に定時を過ぎていたのもありアトラスたちはそそくさとその場を立ち去って行く。


 ――――残された宮廷騎士団。

 

 騎士たちは冷や汗をかきながら王子の言葉を待つ。


 そしてアトラスたちの姿が完全に見えなくなったところで、王子は騎士たちを鋭く睨みつける。


「お前たちがノロマ過ぎて恥をかいたぞ!!!」


 王子は地団駄を踏み、顔を真っ赤にして怒りをあらわにした。

 朝は白い歯を見せて笑みを浮かべていたのが嘘のようだった。


「「「も、申し訳ありません!!!!!」」」


 騎士たちは一斉に腰を90度に曲げて謝罪する。

 だが、そんな謝罪では王子の気分は晴れない。


「おい、副団長! お前は来週からエリバ島勤務だ」


「え、え!? そ、そんな!?」


 突然名指しされ、孤島での勤務を命じられた哀れな副団長。


「部下の不始末は上司の責任だ。クビでないだけありがたいと思え」


「お、王子様! どうかお許しください!」


 副団長は王子の前で跪き土下座する。


 しかし王子はその頭を蹴り飛ばす。


「謝って済む問題ではないわ!」


 周囲はうつむき黙り込む。

 これまでも王子が何か恥をかくたびに団員が左遷されてきた。そしてその誰一人として許されたことはないのである。

 それゆえ彼らにできることは、自分が王子の八つ当たりの対象にならないことを祈るだけであった。


「我が宮廷騎士団に無能はいらん。肝に銘じろ!!」


「「「はい、王子様……」」」


「とりあえず宮廷騎士団は明日も単独で攻略をする。アトラスパーティに後れを取ることは許されない!」


 哀れな部下たちは休日出勤を命令されたのだった。


 †



 ――翌日。

 世の中は土曜日なのだが、宮廷騎士たちはダンジョンに集められていた。


 休日出勤を断るような人間は一人もいなかった。

 なにせ、昨日まで副団長だったのにいきなり孤島への追放されてしまった哀れな人間もいるのだ。いつ自分がそうなるとも限らない状況では、「喜んでお供させていただきます」と言う以外の選択肢はない。


「お前たち、気を緩めるなよ。今日と明日で一気に攻略を進めるぞ!」


「「「はい、王子様!!」」」


 王子の無茶振りに、しかし騎士たちは嫌な顔一つ見せずに剣を取る。


 ダンジョンを進んでいく宮廷騎士一行。

 アトラスたちがいる前では張り切って先頭に立っていた王子も、観客がいない今日は後方で騎士たちの尻を叩くだけだった。


 騎士たちは死に物狂いでダンジョンを攻略していく。


 ――――その結果、フロアボスの部屋の手前まで攻略し終えることができた。


 そこまで十二時間以上ぶっ通しで働いていたので、王子も流石にその日の攻略はここまでと宣言して、踵を返した

 騎士たちはようやく解放されたと安堵の表情を浮かべながら歩いていく。


「ん、待て。あれはなんだ?」


 中ボスの部屋の少し前の通路の脇に、小さな穴が空いているのを見つけたのだ。よく見ると、そこだけ周囲と壁の色が違う。


「おい、ちょっとここを掘ってみろ」


 王子が命令すると、部下が疲れた体に鞭を打って、壁に魔法攻撃を放った。

 すると、壁は簡単に崩れその先に通路が現れた。


「これは……」


 王子を先頭に隠れ通路を進んでいくと、何やら見覚えがある場所にでた。


 ――そこは別の攻略済ダンジョンのボスの間だった。


 王子がなぜその場所を知っているのかと言うと、そこはある女子冒険者学校の生徒たちの練習場所として使われており、一度彼女たちへの「実践指導」の時に訪れたことがあったからだ。


「ダンジョンが別のダンジョンと繋がっているとは……」


「最近<奈落の底>の大穴が、別のSSランクダンジョンに繋がっていたということがありました。珍しいですが時々ある現象でございます」 


「そうか。しかし、何かお宝でもあるんじゃないと思ったが、期待外れだったな……」


 王子はつまらなそうにぼやく。


「学校側には警告しなければなりませんね。万が一SSランクダンジョンからモンスターがこちらにやってきたら、生徒たちに危険が及びます」


 部下の宮廷騎士がそう言うと、次の瞬間、王子は「そうだ!」と手を打った。


「SSランクダンジョンのモンスターをこちらにおびき寄せ、女学生たちを襲わせよう!」


 王子は無邪気にそう言った。

 

「練習場にモンスターが飛び込み大混乱に陥る女学生たち。それを僕が颯爽と助けるのだ」


 宮廷騎士たちは、王子の「賞賛されたい」欲の強さに呆れ果てる。

 しかし絶対的な人事権を持つ王子に反対できる者などいるはずもない。


「安心しろ。学生たちに危害が及ぶことは絶対にない。王子様である僕がSSランクモンスターを瞬殺する姿を見れば、学生たちのモチベーションも上がってより修行に励むに違いない。素晴らしいことだ!」


 ははは、と高笑いする王子。


 それに対して宮廷騎士たちは黙って頷くしかなかった。


 †


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▼アメカワの新作です。本当におもしろいので、ぜひお読みください。▼

☆『ドM勇者は追放を悦ぶ。~ダメージを受けるほど強くなるマゾヒスティック勘違い無双~』
― 新着の感想 ―
[気になる点] 「王子たちの想像以上の弱さ」って十分強い感じがするのだが… アトラスたちはチートスキルがあるだけで もしアトラスいなかったらホワイトナイツも同じレベル位じゃないの?
[気になる点] アトラスのパーティーの金髪幼女以外も出して欲しいなー
[一言] 断種して追放してくれこのダメ王子…
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