27.【ギルマスside】王女様についた嘘
わずか10分でダンジョンから逃げ帰ってきた一行。
「まったく、お前たち! たるんでるぞ!」
クラッブはパーティメンバーを一喝した。
――その様子は、アトラスが抜けた後ダンジョンで苦戦した時の、トニー隊長と全く同じだった。
これまで上り調子で、王国公認ギルドにまで上り詰めた<ブラック・バインド>のSランクパーティが、まさかこんなに弱いはずがない。
気が抜けているのだ。クラッブは、そう思ったのである。
「次こんな情けない戦いを見せてみろ、お前ら全員クビだぞ!!」
ギルマスの言葉に戦慄するパーティメンバーたち。
――と、そんな殺伐としたところに、突然馬車の音が聞こえてくる。
「あれは……」
クラッブが音の聞こえてくる方を見ると、馬車の上には王国の旗が掲げられていた。
「――王女様か!!」
クラッブは部下たちにすぐさま列を作るように命じた。
そして、メンバーの前に馬車が止まる。
降りてきたのは、王女、ルイーズ・ローレンスだった。
「おはようございます、クラッブ殿」
「これはこれは王女様! こんな朝から一体どうされたのですか」
「今日から早速攻略されると聞いていたので、いてもたってもいられず来てしまいました」
ルイズはそう言いながら頰を少し赤らめる。
――まずいな。これは、もしかして……
と、次の瞬間、クラッブの悪い予感は的中した。
「アトラスさんはどちらに?」
そう、王女様はアトラス目当てで<ブラック・バインド>に仕事を任せたのである。
こうして朝からわざわざアトラスに会いにきたのだ。
「それが王女様……」
クラッブは必死に言い訳を考える。
「もしかして今日はいらっしゃらない?」
「ええ……申し訳ありません。実はあいにく有休を取っていまして……」
クラッブがとっさに思いついた嘘がそれだった。
「そうなんですか。それは残念です。でも、おやすみは必要ですものね」
「ええ、その通りでございます。うちはホワイトギルドですから。部下には好きなだけ休めといつも申しておりまして……」
クラッブは白々しくそう言った。
部下たちは苦い顔をしたが、アトラスのことで頭がいっぱいの王女はそのことには気がつかない。
「それでは、いつアトラスさんはいらっしゃいますか?」
「ええっと、おそらく明後日には……」
クラッブはとっさにそう答えた。
「明後日ですね。わかりました。ではまた出直すことにします」
「ええ、王女様……お待ちしております……」
――王女が帰った後、クラッブはコナンに慌てて命じる。
「今日の定時後、すぐにアトラスのところに行け! いいか? 何としても連れてこい!」
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「はい、ギルマス!」
コナンは、なんの根拠もなく大きな声で返事をする。
それに一安心するクラッブであった。
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