21.【トニー隊長side】クビ
アトラスが加わったことで、パーティはあっという間にダンジョンを抜け出した。
そして外に出ると、そこにはそわそわとあたりを歩いて待っていたトニー隊長の姿があった。
「あ、アトラス!!」
トニー隊長はアトラスたちの姿を見つけて慌てて駆け寄ってきた。
「だ、ダンジョンはどうなった!? ぼ、ボスは倒したか!?」
彼の第一声がそれだった。
トニー隊長はダンジョン攻略に失敗したらクビになると言っていた。
だからそのことで頭がいっぱいで、見捨てた部下のことなど考える余裕もなかったのだ。
――この期に及んで彼が考えているのは、自分の保身だけ。
そのことに、アトラスは本気でため息をついた。
「そんなことより、部下たちの心配が先なんじゃないですか?」
「あ、あぁ……。そうだ。みんなもよく無事だった……」
取り繕うように言う隊長。
だがその言葉に真心などあるはずもなかった。
「そ、それでダンジョンは?」
隊長にとって、あくまでダンジョン攻略の――自分のクビのことだけが気になることだった。
「ダンジョンボスは倒してません。これでダンジョン攻略は失敗です」
アトラスがハッキリと告げる。
「そ、そんな!!!」
トニー隊長は再び地に膝をついて、アトラスにすがりつく。
「頼む! 今からボスを倒してくれ!!」
だが、アトラスはパーティメンバーの言葉を代弁するように言い放つ。
「部下を見殺しにしたあなたを、隊長のままにしておくわけにはいきません」
「そ、そんな!?」
「あなたはクビになるべきです」
アトラスがそう告げると、トニー隊長の手はアトラスの腕から滑り落ち、そのまま地面にうなだれる。
――それが、Sランクともてはやされた、愚かな冒険者の末路だった。
†
――――翌日。
「もう言うことはない。お前はクビだ」
<ブラック・バインド>ギルドマスター室。
ギルマスのクラッブは、トニー隊長に冷たくそう宣言した。
幾度もダンジョン攻略に失敗したトニー隊長だったが、最後の望みをかけて、すがるようにクラッブの前に現れた。
しかし、度重なる失敗によって、もはやクラッブは呆れ果てており、彼の失態を許すはずもなかった。
「トニー君、我がギルドに無能はいらないのだよ」
「申し訳ありませんギルマス!! し、しかし、な、な、なんとかクビだけはご勘弁を!」
トニー隊長は土下座してそう嘆願するが、聞き入れてもらえるわけもない。
「目障りだ! いますぐに出ていけ!!」
クラッブが声を荒らげて言う。
「お、お願いします!!!」
「ええい、めんどくさい。お前たち、この無能をつまみ出せ!」
クラッブは外で待機していた部下に命じて、トニーを部屋から強制的に追い出す。
「ぎ、ギルマス〜〜〜〜〜〜!! お、お願いします!!!!!」
トニー隊長の叫び声が、ギルドの建物に虚しく響き渡るのだった。
†
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