19.部下に助けを求める元上司
今日のダンジョン攻略を終え、早々に帰路につくアトラス。
<ブラック・バインド>では、残業が当たり前だったが、<ホワイト・ナイツ>では残業などというものは全くない。それどころか、ダンジョン攻略が終われば、早めに帰ってもいいのだ。
アトラスは妹ちゃんの待つ家へとのんびりと歩く。
だが、そんなところに、息を切らしながら必死の形相で現れた男がいた。
「……あ、アトラス!!!」
大量の汗をかき、全身泥と埃だらけで現れたのはトニー隊長。
今朝土下座した時に服についた土がそのままになっていたが、それ以外にも汚れが増えていた。
「どうしたんですか」
アトラスはこの男のことを完璧に見限っていたが、それでも尋常では無い様子をみて流石にそう声をかけた。
「……た、助けてくれ! アトラス! このままじゃ、俺はクビなんだ!!」
またその話かと思ったが、しかし今は、今朝よりも必死な形相だった。
「何かあったんですか」
「迷宮でトラップに引っかかって仲間が閉じ込められて、それで命からがら逃げて来たんだ!!」
――その説明にアトラスは違和感を覚える。
今目の前にいるのはトニー隊長ただ一人。
その「閉じ込められた仲間」は一体どこにいるのだ?
彼らがダンジョンの外にいるなら、なぜこの男はこんなところで異様な形相を浮かべているのだ?
「まさか隊長、仲間を置き去りにしてきたんですか?」
アトラスの質問にトニー隊長は答えず、代わりに両手で縋り付いて懇願する。
「頼む! ダンジョンに来てくれ!! あのダンジョン攻略に失敗したら俺はクビなんだ!!!」
トニー隊長の頭には、仲間を見捨ててきた事実はなかった。
あるのはダンジョン攻略に失敗したら自分がクビになるということだけだった。
「……あなたは……どこまでクズなんですか!!」
トニー隊長を叱りつけるアトラス。
しかし、クズに構っている時間はなかった。
「ダンジョンはどこですか」
アトラスが聞くと、トニー隊長は「西門を出た先の草原の入り口に……」と答える。
それを聞いた次の瞬間、アトラスはダンジョンへと走り出していた。
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