13.優秀な部下たち
アトラスたちは自己紹介を終えると、早速ダンジョン攻略へと繰り出した。
Sランクパーティにふさわしく、Sランクダンジョンへ潜る一行。
「隊長、前方からゴブリンロードの群れがやってきます。数は20です」
後衛の魔法使いが、持ち前の探知魔法で敵の動きを把握し、事前に敵襲を教えてくれる。
その事実にアトラスは少し感動した。
前のパーティにはそんな能力の持ち主はおらず、常にアトラスが先頭で敵の一撃を受けていたのだ。
「ありがとうございます」
そして実際にゴブリンロードの群れが現れる。
魔法使いは既にそれを見越して、大魔法の詠唱を始めていた。
「隊長、2分だけ時間をください!」
……たった2分で大魔法の詠唱が終わるのか。
アトラスはその速さに驚く。
前のパーティではトニー隊長が魔法使いのポジションだったが、大魔法の詠唱に10分かかるというのが当たり前だったからな……。
――アトラスは剣を引き抜いて、ゴブリンロードたちに向かって行く。
ゴブリンロードの振り下ろした棍棒を剣で迎え撃つが、アトラスの腕力では支えきれずそのまま押し切られる。
さらに怯んだアトラスに対して、周囲のゴブリンたちも攻撃を食らわせてくる。
だが、それらはゴブリンたちに“倍返し”で跳ね返り、一気に5匹のゴブリンが倒れた。
そして、アトラスが敵を倒している間に、他のメンバーたちも次々ゴブリンたちを倒していく。
わずか2分の間に、10体以上が倒れる。
……さすがSランクパーティ!
そして約束の2分が経過したところで大魔法が炸裂する。
「“ドラゴンブレス・ノヴァ”!」
魔法陣から飛び出した大火力が、残りのゴブリンたちを一気に焼き尽くした。
Sランクモンスター20体がわずか2分で壊滅。
<ブラック・バインド>のパーティならば、ありえないことだった。
「すごいな、みんな……」
「何言ってるんですか。一瞬でゴブリンロードを5匹も倒す隊長が一番すごいですよ!」
と、イリアが持ち上げる。
周囲のメンバーもそれに同意する。
互いへのリスペクトに満ちたやりとりだった。
アトラスにとって、かつてダンジョン攻略はただただ過酷なものだったが、今は違う。
初めてダンジョン攻略が楽しいと思えた。
……なんていいパーティなんだ。
アトラスはしみじみと<ホワイト・ナイツ>で隊長をできることの幸せを感じるのだった。