虐げられた少女が前を向き、幸せをつかむ物語。
「カトリークは可愛いな」
お兄様は、カトリークに向かって笑いかける。
「カトリークお姉様、いつも素敵です」
弟は、カトリークにキラキラした目を向けている。
「カトリークは私の自慢の娘だよ」
「カトリークが私の娘になってくれて嬉しいわ」
お父様とお母様は、自慢げにカトリークを見ている。
――幸せな家族の食卓。その中で、私という存在は異物である。
私はにこやかに微笑む家族の中で、ただ黙々と食事を摂っている。
「それに比べて……お前は可愛くないな、ティアンヌ」
お兄様は私に冷たい瞳を向ける。
「また無言ですか。カトリークお姉様を見習ってください。貴方が実の姉だと思うと僕は恥ずかしいです」
弟は私を軽蔑したように見ている。
「全く、食事の時ぐらい仮面を外せばいいのに」
「……醜い傷跡が見えてしまいますから」
「はっ、それも自業自得だろう。カトリークを傷つけようとして負った傷だろうに。カトリークを害しようとしたことを反省していないなど……本当にどうしてお前が、私の娘なのか」
お父様は汚らわしいものを見るように私を見る。
「全く、カトリークが許してくれるから貴方は此処にいられるのよ? もっと感謝しなさい」
「はい……。カトリークありがとう」
お母様に叱咤され、私はカトリークにお礼を言う。
「お兄様、ヴィルネ、そんな風にティアンヌに言ってはいけないわ!
お父様とお母様も、あの時は私が悪かったのよ……。私はティアンヌを許しているんだから……」
「カトリークは優しいなぁ」
「本当ね……。なんて慈愛深いのかしら」
――カトリークは、私を庇う素振りを見せる。
それに対して、家族はカトリークをほめたたえる。
私は食事を終えると、無言で立ち上がり、部屋へと戻った。家族も、使用人たちも、私の事を悪く言っているのが分かる。
――だけど、私は「ごちそうさま」というわけにも、彼らと仲良く話すわけにも、仮面を外すわけにもいかない。
……そんなことをしたら、あの子が何をするのか分からない。
私は自室に戻ると、魔法具の調整を始める。あとは調合もしておかないと……。寝不足でくらくらする。けれど……やらないわけにもいかない。
しばらくすると、自室の扉が開かれる。
「ティアンヌ」
そこには、カトリークがいた。
私は身を強張らせる。
カトリークは「ティアンヌと話したいの」と言って、侍女たちを外にやる。
「何かあったら呼んでくださいね」
そういう侍女は、私の事など欠片も信用していないのだ。
「ティアンヌ」
――誰もいなくなると、カトリークは恐ろしい笑みを浮かべた。ああ、怖い。怖い……目の前のカトリークが怖い……。
「あんた、分かってるでしょうね?」
「……うん」
「ならいいわ。あんたの仕事をちゃんとしなさいよ」
「……うん」
「声が小さいわ」
カトリークは私に近づくと、近くにあった羽ペンを私の太ももに突き刺した。
「……っ!!」
「――あんたは私の言う事を聞いていればいいの。そうじゃなきゃ、あんたの大切な家族に私は何をするか分からないわよ?」
痛みに声を出したかったけれど、そんなことをすればどんな目に遭うか分かったものではない。私は声を押し殺す。
――カトリークは私が言うことを聞かなければ、家族をひどい目に遭わせると昔から言っている。
……今は、家族は私の事を嫌っている。だけど昔は違ったのだ。ちゃんと私を愛してくれて、大切な家族だった。……だから、今、私の事を家族が嫌っていたとしても、私は家族が好きだから、大切な家族を、同じ目に遭わせるわけにはいかない。
私はカトリークの言葉にこくこくと頷いた。
カトリークはその様子を見て、部屋を去っていった。
カトリークが去った後、魔法を使って傷を回復させる。
そしてまたカトリークから頼まれていることを進めるのであった。
*
どうして私とカトリークがこんな関係になったのか。
どうして家族が私を嫌うようになったのか。
――それは八年前にさかのぼる。
当時七歳だった私は、スヴィエザ伯爵家の娘として、両親とお兄様、弟のヴィルネに囲まれて幸せに過ごしていた。侍女たちとの関係も良好で……私はこの幸せが永遠に続いていくと馬鹿みたいに信じていた。
だけど、七歳のある日、カトリークがやってきた。
お父様の親戚の娘だというカトリークは、両親を亡くして行き場がないのだという。そんなカトリークを引き取ると言い出したのは、優しいお父様にとって当たり前のことだった。
私は数か月だけお姉様な家族が出来るのだと嬉しかった。
「ティアンヌ・スヴィエザといいます。よろしくお願いします。カトリーク」
「ティアンヌ……?」
思えば最初からおかしかった。私が挨拶をした時から、カトリークは不思議な態度をした。だけど、次の瞬間には「カトリークよ、よろしくね」と笑ってくれたから安心した。
だけど……仲よくしたいと思っていたのは私だけだった。
徐々に歯車が狂い始めた。
私がやっていないことが私のせいになった。
私は何もしていないのに、私がカトリークを嫌っていることになっていた。
「仲よくしてくれよ。ティアンヌ。ティアンヌなら仲良くできるだろう?」
「……お兄様、私はカトリークのことを嫌ってませんわ」
「ならどうして意地悪をするんだい?」
「いじわるなんてしてません!」
最初の頃、お兄様は困ったような顔で、私を説得しようとやってきた。はじめの頃は、私とカトリークの間に何か誤解があるのではないかと仲直りの場を作ってくれた。
けれど、
「痛い! 何するの、ティアンヌ!」
「え」
二人になった時に、急にカトリークはティーカップを割った。その破片が飛び散る。
私は何もしていなかった。茫然としてしまったのが悪かったのかもしれない。だけど、何が何だか分からないうちに、私はティーカップをカトリークに投げつけたことになっていた。
「ティアンヌ、意地悪をしたら駄目だろう。カトリークは両親を亡くして大変なんだぞ」
「でも……私はそんなことしていない! カトリークが自分で……」
私は本当のことを口にしていただけだった。なのに、私の言葉は信じられなかった。気づけば、お父様にぶたれていた。お父様ははっとしていた。
「ティアンヌ、カトリークはあんな目に遭ってもお前を庇っているんだぞ。自分が悪いんだと泣いているんだ。そんなカトリークに罪をかぶせてはいけないよ。自分がやったことをちゃんと謝るんだ」
「私は、やってない!」
「……ティアンヌ、嘘はいけないと教えただろう。謝るんだ、いいね?」
お父様は私の言い分を全く信じてくれなかった。
――なら、お母様は? とショックを受けながらお母様の元へ向かえば、
「ごめんね、ティアンヌが」
「いえ、私が悪いんです……。ティアンヌに嫌われるようなことをやってしまったの、きっと……。だから、ティアンヌを怒らないであげて」
「カトリーク!」
「……ティアナ様」
「私の事はお母様でいいのよ!! まったく、ティアンヌは親を亡くした子になんて意地悪を!!」
お母様は、カトリークを抱きしめていた。
抱きしめられているカトリークが私に気づいてこちらを見た。
その目が、その表情が恐ろしかった。……どうして、私を誰も信じてくれないんだろうって、悲しくて泣いた。
親しくしていた侍女が私の事を慰めてくれた。
私の言葉に、「私はティアンヌお嬢様の味方ですからね」と笑ってくれて……。
もしかしたらカトリークは何か思う所があるのかもしれない、だからそういうことをしているのかもしれないけれど、話し合えばきっとわかると言ってくれて。
ちゃんとカトリークと話そうと思った。
何でこんなことをするのか……。
「カトリーク、どうして嘘をつくの?」
「私、嘘なんてついてないわ。どうしてティアンヌはそんなことをいうの?」
「……でも私、カトリークを嫌ってもいない!」
だけど、カトリークは本心なんて口にしなくて、ただ私がカトリークを責めているだけみたいになってしまった。
私への目が厳しくなった。
そして――数か月たったころには、私の事を慰めてくれた侍女も――「ティアンヌお嬢様、カトリークお嬢様は優しいお嬢様ですよ」と笑っていた。
どんどん、私の立場は悪くなっていった。
ある時のことだ。ちゃんとカトリークと話そうと思って、私はカトリークを呼び止めた。
「カトリーク、ちゃんと話そう!」
だけどカトリークはすたすたと歩いて行って……追いついた時には視界が暗転していた。階段からカトリークと一緒に落ちていたのだ。
――そして目が覚めた時には、私がカトリークを階段から落としたことになっていた。私はカトリークを落とそうとして一緒に落ちたんだって。
お父様にぶたれた。
お母様に泣かれた。
お兄様に睨まれた。
ヴィルネは見舞いにもこなかった。
だけど、カトリークはやってきた。
「――ティアンヌ」
「カトリーク!! 私は貴方を階段から落としたりなんてしていないじゃない! 違うってお母様たちに言ってよ。こんな風に嘘ばかりついていても――」
「黙りなさい」
そんな言葉と共に、ぶたれた。
お父様にぶたれた頬を、ぶたれたのだ。
「ティアンヌ・スヴィエザ。あんたは幸せになってはいけないの。私の幸せのために、あんたは不幸でなければならないの――」
「え」
「誰もあんたのことを信じないわ。誰もあんたの味方はいない」
「そ、そんなこと――」
「ないって言えないでしょ。現にみーんな、私の味方」
歪に歪んだ笑みを見て、私は恐ろしかった。まるで――悪魔のようだとさえ思った。
刷り込みのように、カトリークは私は不幸でなければならない、誰も私のことを信じないと告げた。
「ねぇ、家族が大切なのでしょう。だったら私の言う通りにしなさい。そうじゃなきゃ、あんたの大切な家族が不幸になるわよ?」
「な、なにをする気なの!?」
「それはあんた次第よ。あんたが私の言う通りにやればいいの」
恐ろしい笑みを浮かべたカトリークは私に命令を下す。そんなことは出来ないと、私は家族にカトリークの事を訴えた。
だけど、カトリークは泣いた。
悲しそうに泣いたカトリークのことを、周りは味方した。
そして私が言うことを聞かなかったからと、ヴィルネが怪我をした。……事故だって言われているけど、カトリークがやったのだ。
「――今度は、死ぬよ。あんたの弟」
……カトリークは悪魔のように、笑った。
私は、その日悪魔に魂を売った。家族を守るために悪魔の手足になることになった。
*
それから八年――、私の家はカトリークを中心に回っている。
家族は、私の事を嫌っている、侍女たちも、私には近づかない。
――私は常に仮面をかぶって、愛想がなくて、意地悪な伯爵令嬢。そんな噂が出回っているらしい。
昔、仲よくしていた友人達はカトリークの友人になった。誰もがカトリークを愛し、私を愛さない。
カトリークが言うように、私の味方は誰もいなくて、私の事を誰も愛さない。
仮面をかぶっているのは、一度、私は顔を焼かれたからだ。……カトリークに呼び出されて、蝋燭の炎を顔におしあてられた。それも私の悪評もあって、私がカトリークの顔を焼こうとしたことになっていた。
私は性格が悪い悪魔の子だと、親に言われた。
実のところを言うと、火傷は治っている。けれどカトリークは私の顔が昔から気に入らなかったんだって。私の顔はそこそこ整っているらしい。それがカトリークは嫌なんだって。火傷で顔が爛れた時にカトリークがそんなことを言っていた。私の顔を焼いてせいせいしたって。
……カトリークは、私の前だと悪魔みたいなのに、他の人の前では優しくて、慈愛深い少女だ。その二面性が私は怖い。
治っていると知られたらまた顔を傷つけられるだけだろう。——それが分かるから、魔法で火傷を治したことを私は知られないようにしている。勝手に治すなと怒られるかもしれない。私は怖い。カトリークが怒るのが怖い。
今日も寝不足だけど、カトリークに頼まれて魔法具の調整をしている。
カトリークは高位の魔法も使いこなす天才と言われている。そのカトリークが魔法を使うためのものだ。
私とカトリークしか知らないことだが、カトリークに魔法の才能はそこまでない。私には高位の魔法を使うだけの才能があった。だけどカトリークはそれも気に食わなかったらしい。
――それで私に「かわりに魔法を使いなさい。そして私が使えることにするの!!」と怒っていた。
「できなければ分かっているわよね?」
そう笑うカトリークが恐ろしくて、私はカトリークの代わりに魔法を行使したり、私の魔力のこもった魔法具をカトリークのために用意している。
慈愛深い伯爵令嬢と言われているカトリークは、調合の天才とも言われている。そしてそのポーションでこの国に貢献している。ちなみにこれも私が作っている。
カトリークはいつも無茶ぶりをしてくる。明日までに~をしなさいと。それがどれだけ一人で行うことが難しくても、やらなければ家族が殺されてしまうかもしれない。カトリークをあれだけ信じ込んでいる家族は、疑いもしないだろう。
カトリークが完璧な伯爵令嬢であるための助けを私はしている。カトリークは私の負担を考えたりせず魔法をどんどん使い、ポーションもどんどんばらまく……だから私は休む暇もない。最近まともにも寝れた日はない。少し休める時間があったとしても、カトリークに無理やり起こされることも多い。
怖くて怖くて仕方がない。カトリークが怖い。
恐怖心に私はいつも苛まれている。目を閉じれば、カトリークに顔を焼かれた時のことが思い起こされて怖くなる時もある。
私は伯爵令嬢だけど、悪評がありすぎるということで社交界にも出ていない。カトリークの慈愛により、生かされているだけなのだ。
いっそ殺してくれれば――この恐怖から抜け出せるだろうか。そうも思うけれど、カトリークは私を殺してはくれない。それに私が居なくなれば、弟が同じ目に遭うと言われているのだ。自ら命を絶つことも出来ない。
疲れてしまった時、近くの川にたまにいく。
自然は私の事を癒してくれる。もちろん、周りに見られないようにしている。私が人と関わることをカトリークは嫌がっている。下手に悪評がまた立ったらお父様とお母様に怒られてしまう。
ふぅと一息ついた時、その日はいつもと違った。
がさりっと音がして、そちらを見れば、大きな獅子がいた。——魔物だろうかと、びくりっとする。私が死んだらヴィルネが同じ目に遭ってしまう。警戒する私だったが、その獅子には敵意がなかった。それどころか、その場に座り込んでのんびりとしていた。
それからたまにその獅子を見かけるようになった。
獅子は私の手をなめたり、私の傍に寄り添ってくれた。——誰かの体温を感じられるほど、側に何かがいることは初めてだった。
その体温が温かくて、誰一人味方がいない私の味方であるような気がして――何だか涙がこぼれた。きっとこの獅子もカトリークを愛するだろう。皆そうだったから――。
ある時、私は獅子の横で眠ってしまった。睡眠不足がたたったのだろう。カトリークに頼まれたものを完成できなくて、思いっきり魔法をぶつけられた。
やっぱりカトリークは怖い。
恐怖心でいっぱいの私にとって、獅子と過ごすのが楽しくなっていた。ある日、獅子の傍に人がいた。
赤髪の若い男性だ。
……なんでこんなところにとびくりとして、逃げようと思った。こういう男性と話しているとカトリークに知られたら今度はどんな魔法がぶつけられるか分からない。
だけど逃げようとしたら手を掴まれた。
「ガガと仲よくしてくれてるんだろ。待て」
どうやら私が一緒に過ごしていた獅子はガガという名前らしい。……獅子は私のものではなく、この男性に飼われているのだろうか。
「……私と関わらない方がいい。不幸になる」
「は? 何言っているんだ。ガガが見えるなら大丈夫だろ。ガガも心を許しているし」
その言葉に意味が分からなかった。仮面越しだけど私が驚いていることが分かったのだろう、男性はただ笑うだけだった。
少しだけその男性――ケールと話した。ケールはこの王国で魔法師をやっているらしい。王宮で働いているような優秀な存在が何でここにいるのだろうか、とよく分からなかった。
確かカトリークは、王宮にもよく出向いている。王子に好かれていて、周りを魅了しているらしいってお兄様が言っていた。お兄様は悪い男がつかないようにカトリークを守っているんだって。
王宮で働いているというだけでも――カトリークと仲よくしている人なのかもしれないと思った。
ケールは「また来たら会えるか?」と私に聞いていたが、私はもうあの川に向かうことをやめることにした。
だって人は怖い。人は私の事を信じてはくれない。どうせ、皆変わってしまうのならば誰かと仲良くするのも恐ろしい。――それに人と会っていたことを知られたらカトリークが何を起こすかも分からない。
私は大人しくしていなければいけない。
私は不幸でなければならない。
私がそうしていることが正しくて、そうしていれば皆幸せなのだ。
私はケールに遭遇してから一度も屋敷の外には出なかった。というのもカトリークが第三王子の婚約者の座を射止められそうだということで、色んなものを用意させられたからだ。
カトリークが自分で手作りしたことになっているドレスを作り、カトリークが自分で縫い上げたことになっている刺繍を施し、カトリークが自分で作ったことになっている魔法具を作り――カトリークの縁談が上手く行くように準備をした。
カトリークは王子の心を射止めたらしい。
優しい伯爵令嬢は、王子殿下にはぴったりだとそう囁かれているらしいと、侍女達が言っていた。
カトリークがお嫁さんに行けば、私は……楽になれるだろうか。
そんな淡い期待はやっぱり考えてはいけないらしい。
「あんた、パーティーに来なさい!」
「え」
「優しい私があんたをパーティーに出席させるの。そこであんたは私に魔法をぶつけるの」
「え」
「それで私が許しを請うの。そしてあんたは反省させるために隷属魔法をかけられるの。そしたら私が結婚してもあんたを使えるでしょう?」
やっぱりカトリークは悪魔だった。
私に命令を下す。了承を躊躇っていたらお兄様が馬からおちて大怪我をした。私は了承をした。
ああ、怖い。
魔法をぶつけるなんてしたくない。
誰かに魔法をぶつけるなんて恐ろしいこと、私は出来ない。
でも私がやらなければ、家族が殺されてしまうかもしれない。……今までと変わらない。そう、今までと変わらない。八年もずっとそうだったんだ。これからも変わらないだけなんだ。
私は、カトリークの命令を受け入れた。
家族は私がパーティーに参加することに難色を示した。
だけどカトリークの言葉に家族は結局頷いた。
だけど、私にドレスなど与えられるわけもないので仕方なくずっと着ているローブで参加することになりそうだ。
きっと私は笑われるだろう。でもそれも仕方がない。
――そう考えていたら、窓を叩かれた。
驚いてそちらを見れば、あの獅子がいる。あの時より小さなサイズだけど、あのガガと呼ばれていた獅子だろうと分かる。
どうしてここにいるのだろうか。
そう思いながら私は寂しさから獅子を中へと引き入れてしまった。
獅子を勝手に飼っていることに怒られるだろうか、と思っていたが……時折やってきたカトリークには獅子の姿が見えないらしい。私の目がおかしいのだろうか? と思うが、手を伸ばせば確かに触れられた。
よく分からないけれど、この獅子をカトリークに取られることがないなら嬉しいなと思った。
でもしばらく獅子を抱いて眠って、はっとなった。寂しさから獅子を引き入れてしばらく生活をしてしまったが、この獅子はあのケールのものなのだ。
私はパーティーの前日に獅子を外に出した。獅子は戻ってきたそうにしていたが、「ケールの所へ帰って」と言って返した。
――明日、私はカトリークに隷属魔法をかけられる。
*
パーティーの当日、朝になって私は攫われた。
何を言っているか分からない? 私も分からない。だけど、突然現れた獅子とケールに一瞬にして私は攫われた。……ケールは転移の魔法も使いこなせる天才だったようだ。
でもどうして私を攫うのだろうか。
私を攫ったところでどうにもならないのに。私は死ぬのだろうか。
「私を攫ってどうするつもりですか」
「何でそんなに冷静なんだよ。ガガから聞いたけど、お前ひどい目にあわされるんだろ」
「ひどい目?」
「……あのカトリーク嬢がお前に隷属の魔法をかけるんだろ? 初めに聞いた時は何の冗談だと思ったが、ガガは嘘をつかないからな」
……驚いたことにケールはカトリークのそういう姿を信じたらしい。誰も信じなかったのにと不思議に思っていたらケールが言う。
「ガガは聖獣だからな。聖獣は人の嘘が分かる。聖獣は嘘を好まない。お前が聖獣であるガガを見られる時点で、そしてガガがお前を気に入っている時点で――性悪令嬢なんて言われているティアンヌ・スヴィエザがそうでないことは分かる」
ケールはそう言った。
この獅子は聖獣なのだと、だからその聖獣が気に入っている私が噂通りではないと。
「……っ」
「おい、何で泣くんだよ」
私を信じてくれている。
誰も信じてくれなかったのに。
聖獣であるガガがそう言うからって、カトリークの私にだけ見せる姿を信じてくれている。
皆、私がどれだけ声をかけても信じてくれなくて、私が全て悪いことになって――誰も、私が噂通りじゃないなんて言ってくれなかった。
なのに、会うのは二回目なのに私はそうじゃないって言ってくれる。
私は泣いた。恥ずかしいぐらいに大泣きした。
そしてケールに頭を撫でられながら、ケールに促されるままに今までのことを言う。
カトリークと出会った日のこと。
カトリークがきてからおかしくなったこと。
カトリークに脅されたこと。
カトリークが恐ろしいこと。
「……末恐ろしい令嬢だな、カトリーク・スヴィエザは。やっていること、洗脳だぞ」
「洗脳……?」
「そうだろ。お前が幸せになるのを許さない、不幸にならなければ家族がひどい目に遭う。そうやってずっと脅しつけて、お前を自由に動かしていた。七歳の子供がそんな脅迫に抗えるはずもない。カトリーク・スヴィエザが本当に十五歳なのかと俺は疑うね」
ケールは私の言葉を否定しなかった。カトリークがそんなことをするはずがないなんて言わなかった。私の言葉を信じてくれた。
そして聖獣だというガガは、私の手をぺろぺろとなめ、慰めてくれる。
「その話が本当なら、お前いつでも反抗出来ただろ。ティアンヌの方が魔法の腕がいいんだから。それをさせないあたりが、洗脳だな。それにティアンヌがそれだけ頑張らなければあの女が今までやってきたということが嘘だとすぐに露見しただろうに……」
冷たい瞳をケールが浮かべていてびくりっとする。
「……ティアンヌに向けていないから、そんなに怯えるな。大丈夫だから」
そう言って頭を撫でられる。なんで、私に優しくしてくれるのだろうか。私の頭を撫でてくれるのだろうか。夢のようで、この状況が信じられない。
「なんで、優しいの?」
「ガガが気に入った相手だからな。それに年下の女の子がこんなに大変な目に遭っているのに放っておくほど鬼ではないぞ、俺は」
そんな風に言って笑われる。何だかまた泣きそうになった。
「なぁ、ティアンヌ。お前はもっと反抗していい」
「反抗……?」
「そうだ。パーティーであの女に魔法をぶつけて隷属魔法をかけられるなんてしなくていい。それどころか「そんなことしない! もう言う事は聞かない!」と言ってやれ」
「でも……そんなことしたら」
「家族のことは気にするな。そもそもティアンヌのことを信じない家族なんてどうなってもいいと思うんだが」
「ううん、私の大事な家族だから」
――ケールの言葉に私は首を振った。どれだけ私を嫌っていても、私にとって大事な家族だから。
「そうか。でもまぁ、気にしなくていい。俺がどうにかする」
「……本当に?」
「ああ。俺は結構凄い魔法師だぞ?」
……転移の魔法を使えるぐらいだし、凄い魔法師だとは分かる。
それに今連れてこられた部屋も、高価な家具が並んでいるから、もしかしたらケールは凄い人なのかもしれない。
「な、だから言ってやれ。そんなことやりたくないんだろ?」
「……うん」
「やりたくないことをやりたくないという権利は誰にでもあるんだ。それに動かなきゃずっとこのままでもっとつらい状況になるぞ」
「……うん」
「自分が我慢すればいいとか、不幸なのが当然とか、そういう洗脳は忘れればいい。我慢なんてする必要はないし、不幸なのが当然な人間なんていない。——ちゃんと嫌な事は嫌と言えばいい」
「……うん」
ずっとケールの言う通り、我慢すればいい、不幸なのは当然、私は幸せにはなったら駄目だって思ってた。思い込んでた。
でもケールが言う通り、それは違うのだ。私が幼いころに読んでいた絵本でもそれは描かれていた。
――ケールが家族が大変な目に遭わないようにしてくれる。
カトリークに逆らうのは怖い。だけど、大丈夫だと、ケールが笑ってくれる。
怯える私に守ってあげるとばかりに、ガガが寄り添ってくれる。
「……私、カトリークに嫌だっていう」
それだけでも怖くて、足が震える。だけど、それでも私はケールに言われて、このままじゃ駄目だと思った。
カトリークに、言うんだって決めた。
「よし、じゃあとびっきり着飾らないとな」
「え?」
「おい、ティアンヌに似合うドレスを用意しろ」
「はーい、ケール様!!」
私はケールの言葉に戸惑った。だが、声を上げる暇もなく、どこからか現れた侍女に仮面をはがされ、体を洗われ、ドレスで着飾らされた。
*
「ティアンヌ?」
「その顔……治っていたのか? 治っていたならさっさと仮面を外せばよかったものを!!」
「それにケール殿下と何故いるんだ!!」
着飾った私はケールに手を引かれてパーティー会場に到着した。って、殿下って何? ケールは王子様なのだろうか? と戸惑ってしまう。
それにしても仮面を外した私はお母様そっくりだし、お父様たちは私の顔を見ていなくても私だと分かったらしい。
ちなみに私は勝手にパーティー会場に来るようにと言われていたから、彼らは私が家からいなくなっている事にも気づいていなかったのかもしれない。
私がティアンヌ・スヴィエザだと分かると周りが注目する。ただでさえケールにエスコートされて此処にいるから私は注目を浴びていたのだ。……視線が怖かったけれど、小さな姿に変化したガガが私の横を歩いていて、ケールも笑っていて、だからなんとか参加出来ていた。
ケールのところの侍女たちも優しかった。私が伯爵令嬢なのに、令嬢教育をまともに受けていないのを知っても呆れたりもしなかった。私はダンスもまともに踊れない。それでも私はこのパーティー会場にいる。
――カトリークに嫌だっていうために。
「ティアンヌ、なんて綺麗な顔を隠していたの。治って良かったわ。それにケール殿下と何時の間に親しくしたの? 私にも紹介してくださらない?」
カトリークの顔が引きつっている。笑顔を浮かべようとしているけれど、その目力が強い。何を勝手な真似をしているのだと、私を見る目。
その瞳が、私は怖かった。
カトリークに見つめられると蛇に睨まれた蛙のようにその言葉に逆らえなくなってしまう。
ごめんなさいと反射的に口にしそうになった。怖かった。だけどケールが「大丈夫だ」と言ってくれた。私は、大丈夫。——怖がらなくていい。
そう思ってもやっぱり怖い。怖いけど……、私は嫌だっていう。
「カトリーク、私は、もうカトリークのいうことを聞かない」
「な、なにを言っているの? 突然」
カトリークの戸惑った声が聞こえる。家族たちの「何を言う!! カトリークに!!」という声も。
だけど、私は……前を向くと決めた。
嫌だって言うんだって、カトリークの言葉には従わないんだって決めた。
「――もうカトリークのいうことは聞かない。カトリークの代わりにドレスを縫うことも、刺繍を縫うことも、魔法を使うことも、魔法具を作ることも何もしない。仮面も外すし、ポーションも作らない。私は……カトリークの言う事を聞かない」
そう言った瞬間、あたりがシンと静まった。
「ティアンヌ、何を言っているの? 私の事が嫌いだからってそんな嘘をついたら駄目よ? 私がやってきたことを自分がやってきたなんていうなんて……嘘はよくないわ。ごめんなさいね、皆様。ティアンヌを許してやって」
カトリークが悲しそうな顔をして、周りに頭を下げる。
その表情やその言葉には周りを信じさせるような何かがあって、体が固まる。やっぱり駄目なのだろうか無理なのだろうか。——やっぱりカトリークに謝った方がいいだろうか。
怖くて怖くて、どうしたらいいか分からない。
「またカトリークに意地悪をして!!」
「ティアンヌお姉様、幾らカトリークお姉様が妬ましいからと言っていい事と悪い事があります」
「折角カトリークがパーティーに参加させてやっているのにお前ときたら!! ケール殿下もこんな嘘つき娘に騙されないでください」
「ケール殿下、母として謝罪します。ティアンヌはもう二度とパーティーには参加させません」
家族は私を信じない。
――家族が私を信じないから、パーティーの参加者も私を信じない。
だけど、
「どんだけ性悪なんだよ。恐ろしい娘だな。ティアンヌを徹底的に悪者にしようとするなんて」
ケールはそう言った。
「ケール殿下……どうしてそのようなことを!! セヴィ殿下のお兄様であるケール殿下にまでティアンヌは嘘を吹き込んだのですね……なんてことを!! 申し訳ないです」
……セヴィ殿下って、カトリークの婚約者だ。王太子はもっと年上のはずだから、となると第二王子殿下……? 社交界なんて行った事もなかったからケールが王子だなんてわかってなかった。
「ケール兄上!! 何をカトリークを泣かせているのですか」
そして現れたのは、ケールによく似た同じ年ぐらいの男の子。この人が第三王子殿下だろうか。
「セヴィ、およびパーティーに参加の方々、これを聞いて目でも覚ましたらどうだ? ちなみにこれに関しては俺の契約獣——聖獣が認めたものだから、嘘偽りはない」
ケールはそういって、何かを詠唱する。
それと同時に画面が現れる。――そこに映っていたのは私とカトリークだ。
『早く決断しなさい。いいわね? 私に魔法をぶつけるのよ。そうしないとあんたの大事なお兄様に私は何をするかわからないわよ?』
『……やります』
『ふふ、それでいいのよ。いっちょまえに私に逆らうなんて許さないわよ。だってあんたは不幸でなきゃならないんだから。あんたがちゃーんと私に魔法をぶつけて、隷属魔法で大人しくなるなら使ってあげるから。せいぜい死ぬまで私のために働きなさい』
「こ、こんなの嘘よ!! ティアンヌがやっているのよ!!」
カトリークが声をあげる。
『ティアンヌ、起きなさい!!』
『……カトリーク』
『魔法具出来ているんでしょうね? 出来てないじゃない!! 何を寝てるのよ!! 私は今日までに完成させなさいと言ったでしょうが』
「ケール殿下!! こんな嘘の情報を見せないでください。私はこんなことやっておりません」
周りの目が驚愕に染まる中、カトリークはそう言う。
『ティアンヌ、分かってるわよね? パーティーには参加させるけど、あんたは誰かと親しくしたら駄目よ? あんたは性悪令嬢なんだから』
『……』
『返事をしなさい!!』
『……は、はい』
『私に返事を返さないなんて、分かっているの? あんたは私の奴隷なのよ? 幸せになってはいけないのよ? そうじゃなきゃわかっているわよね?』
「はっ、何を言うかと思えば。言っただろう。これは聖獣であるガガが記録してきたものだ。ティアンヌはガガのことが見えているし、ガガに気に入られている。——その意味が分かるだろう」
ケールはカトリークに何を言われても冷たい目を浮かべていた。
『本当にむかつくわ!!』
『いっ』
『煩いわよ、ちょっと魔法あてただけじゃない。いい? あんたは私のために働くの』
『はい……』
「ティアンヌ!! これは嘘よと言いなさい。貴方がケール殿下に近づくために作ったのでしょう? ごめんなさい、驚かせて、ティアンヌはうそつきだから……」
「うそ、じゃない!!」
私はカトリークに嘘だと言えと目を向けられてもそう叫んだ。
「ずっと、ずっとカトリークはこうだった!! 初めて会った時から私の事を嫌っていて、私がカトリークを嫌っているって噂を流して。私が話そうとしたら、私がカトリークに意地悪したことになって!!
何かあればお兄様たちを同じ目に遭わせるって言って!! 嘘なんて、私、ついてない!!」
「あんた!! 奴隷の分際で何を!!」
私が反抗すると思わなかったのだろう、カトリークが二人きりでいる時の口調で私に怒鳴った。
「え、えっと……違うのよ。口が滑って――」
「いつも奴隷だのなんだのティアンヌに言っているからだろう。今まで言うことを黙って聞いていたティアンヌが逆らったからだろ。そもそも最初から言っているだろう。これは聖獣が認めたことだ。聖獣は嘘をつかない」
周りの驚愕の目と、ケールの冷たい声に、カトリークは、
「あんたのせいよ!! なんであんたが私に逆らうの」
と激高した様子で私に魔法を向けた。
――私は、ケールとガガが隣にいてくれたからその魔法を防いだ。
そうだ、私はケールに言われたように、カトリークに魔法で勝つ事は出来た。ただ、私は怖かったのだ。ずっと昔から恐ろしい表情を向けてくるカトリークが怖くて、だから反抗なんて考えもしなかった。
――だけど、目の前のカトリークは私がずっと考えていたよりも恐ろしくなかった。私に魔法を防がれ、私に反抗され、その目は恐怖に満ちていた。
ああ、私が恐れていたカトリークは、こんなにも弱かったのかと気づいた。
カトリークはパーティー会場で悪意を持って魔法を行使したということもあり、捕らえられた。
家族も、会場にいる人たちも第三王子も信じられない出来事が起きたと騒然としている。
「……ティアンヌ」
家族の私を呼ぶ声が聞こえたけれど、私は初めてのパーティーで、カトリークに逆らって――精神的に負担が大きかったのか、倒れてしまった。
*
目が覚めた時、ケールとガガが傍にいてくれた。
「大丈夫か? まぁ、しばらくゆっくり休め」
「……カトリークは?」
「あの女は気にしなくていい。スヴィエザ伯爵にはしばらくここでティアンヌを預かると言ってあるからゆっくり休めばいい」
……そんなケールの言葉の通り、私はケールの元で過ごすことになる。
ケールは聖獣と契約して、魔法師として働いているから王位継承権は放棄しているらしい。
第三王子殿下はカトリークとの婚約を破棄したらしい。そしてお父様たちは私に会いたがっているらしいので、今度……ケールがいる時に一緒に会うことになっている。
カトリークは、ケールが教えてくれたけれど……私が不幸にならないと自分は幸せになれないと思っていたらしい。
マンガではそうなっていた!! とよく分からないことを言っていたらしい。マンガってなんだろう?
私はケールの家——王都にある家で過ごしていて、此処での暮らしは穏やかだ。怒られることもなく、侍女たちも優しい。
ケールが王子だと知って、殿下呼びしたほうがいいかと言ったが、呼び捨てでいいと言われたので、そのまま呼び捨てにしている。
「――ケール、この魔法具どう思う?」
「すごいな。十五歳でそれだけ作れるのは」
ケールは私が魔法具を作ると褒めてくれる。それが私は嬉しくて、ケールのお手伝いをして魔法で国の役に立とうとしている。
無理して社交界には出なくていいと言われているから、一先ず魔法でケールの手助けをしながら……これからどうしようか考えて行こうと思う。
「ケール、私、ケールに会えてよかった。ありがとう……。私の所へ来てくれて」
「……たまたまだしな。結局あの女と向き合うことを決めたんだろ。だからだろ。俺もティアンヌがいて助かってるしな」
ケールがそう言って微笑んで、私の頭を撫でてくれて嬉しかった。
――これから先のことは分からない。けれど、ケールとガガの傍にいられたら……嬉しいなとそんな風に私は思うのだ。
「どうした?」
「楽しいなぁと思って。私、今幸せだよ」
一緒に魔法の話をして、魔法具を作って――、そして私の話を聞いてくれる人たちと共に過ごす事が出来る。
それだけで幸せだなと思って、私は笑うのだった。
こんな風にただ幸せだなと笑えるのも久しぶりで、何だか楽しくて仕方がなかったのだった。
――虐げられた少女が前を向き、幸せをつかむ物語。
(虐げられた少女は、とある出来事で前を向いた。そして少女は幸せそうに微笑む)
ティアンヌ・スヴィエザ
茶髪茶色の瞳の伯爵令嬢。十五歳。
カトリークに出会ったことにより人生を狂わされた。魔法の腕もすさまじい努力家。
自信は喪失していた。カトリークが怖すぎて、動きようがなかった。
ケールとガガにあって、嫌なことを嫌と言えるきっかけになった。今は幸せにケールの家でぬくぬくと過ごしている。色々常識など勉強中。
カトリーク・スヴィエザ
金髪青い瞳の美少女。
両親が死に、スヴィエザ伯爵家に引き取られた。実は前世の記憶がある。
前世の漫画がifストーリーありの、ティアンヌとカトリークに軸があって、どちらかしか幸せになれないストーリーで、カトリークはティアンヌを幸せにさせないようにしようと思ってた。
案外、ティアンヌが反論もせずに言うことを聞いてくれるので思うがままに操れるのではないかとああなっていった。罪人として囚われている。なんでこんなことになったか反省はしていない。
ケール
第二王子。聖獣と契約をしていて魔法師として働いている。
カトリークのことは噂として知っていたが、関わったことはなかった。ティアンヌを見つけて興味を持って、関わる。
詳細を知ると驚くべき不幸におわれているので、どうにかしてあげたいと動いた。ティアンヌたちより二つ上。そのうち恋も芽生えるかもしれないが、今は兄目線。
ガガ
獅子の姿をした聖獣。嘘を見抜ける。聖獣としてはまだ子供。
ティアンヌの魔力や性格が気に入っている。
スヴィエザ家
カトリークのことを信じ切って、実の家族のティアンヌのことを信じていなかった
真実を知って猛省中。
前々から書きたいなと思っていて、長編で書こうか悩んでいたけれどとりあえず短編で書きました。
短編にしては長くなりましたが、こういうのもいいかなと。
恐怖でいっぱいなティアンヌは、立ち向かう力があっても立ち向かうことは出来なかった状況でした。カトリークは漫画でどちらかしか幸せになれないと知っていたからとことんティアンヌを不幸にして自分が幸せになろうとしてました。精神は大人なので、カトリークの行動に子供のティアンヌは上手く対応できず、あんな状況になっていました。でも何かのきっかけがあれば、人生なんて変わるものだよなと思いながら書いた話です。
少しでも何か感じてもらえたら嬉しいです。