親友よ……
俺と親友の須藤は屋上に居た。その後ろにも大量の男子が居る。
そして俺達の目の前――屋上の隅には親友――だった、新垣が俺達に命乞いをしている。
「止めるんだ柊!」
「お前が………お前が悪いんだからなぁ!」
俺の名を呼ぶ新垣に男子全員が襲い掛かる。
縛り吊るし上げ、徹底的に恐怖を与える。
「理由を説明しろぉぉぉっぉぉぉ」
―――――何故こうなったか?
それはたった一通のメールで始まった。
「あいつ何処居るんだろうな?」
「さぁなどっかで覗きでもしてるんだろ」
その日、俺と須藤は放課後、新垣と共にゲーセンにでも遊びに行こうと新垣の教室に向かったが、
何故かそこに新垣は居らず、どうせ下らないことをしてるんだろうと決め付けていた。
だが、二人ではテンションもあがらず、結局何処をほっつき歩いているのかメールをしたのが事の発端になった。
送信し、数分たっただろうか?
返信が遅いなと重いながら待っていた所に来た。
そして、その内容が問題だった。
『俺はもう、お前らとはつるまないよ、なんたって彼女………彼女ができたんだからなぁ!』
「何いいいいいいいいいい!!」
思わず俺と須藤は叫んだ、道端であろうとも叫んだ、羞恥心よりも悪友への憎しみが勝った。
須藤は嘘だ嘘だとしきりに呟いている。
俺だって信じたくは無い、今まで彼女居ない暦=年齢とか悲しいことを言い合っていた仲間が
――何の兆しも無く彼女をゲットしただと?
「なぁ柊」
「何だ?」
話しかけてきた須藤は上を向きながら泣いている、瞳から零れ落ちる泪に俺までも泣きそうだ。
「とりあえず――フルボッコだよな」
「あぁ――フルボッコだな」
その瞬間、俺と須藤の心は深く繋がった。
俺と須藤はすぐさま携帯で知り合いのモテない男子全員にメールを送った。
『新垣に彼女が出来た――此処にモテない男総出でフルボッコを命ずる』
送信し、すぐさま全員から返信が来る。
『サー・イエッサー! 我らがモテない男を裏切った彼女持ちを極刑に処すべきだ!』
決まった、この瞬間、俺とモテない男達の心も深く繋がった。
そして次の日、学校に来た新垣を―――満面の笑みで勝ち誇った面をしている新垣を、
冷静に、冷静に屋上に呼び出した。
屋上に向かう俺達の後ろにひっそりと男達がついてくる。
多分、昨日メールした人数の倍は居るだろう。
チェーンメールのように大量に情報がばら撒かれて、モテない男達が集まったのだろう。
「なぁ何か皆殺気だってないか?」
「さぁ? とりあえずしょけ……屋上に行こうぜ」
危ない、危うく処刑場と口を滑らすところだった。
俺と須藤は速度を速める。
「なぁどうしたんだよ?」
憎い、この状態でなお友達面するこいつが憎いぞ!
俺よりも先に彼女を作った野郎なんて友達で有るはずがない!
そうこうしている間に、屋上にたどり着く、すぐさま俺は新垣を隅っこに追いやり、
手を掲げる。
その瞬間背後で待機していた男達がなだれ込む、そして有無を言わせず先ほどの状態になった。
「ちくしょう! 俺がモテたのがそんなに憎いか!」
『憎すぎて……憎すぎて今なら悪魔に魂を売ってでもお前の存在の抹消を願いたいぐらいだああああああ!』
俺達が叫ぶ。多分もうそれは異常者の集まりだ。
吊るした新垣の下で俺達は
燃やすか? いいや、先に針でつつきまくるべきだ。 それよりもくすぐり地獄で精神の崩壊を……
などとこれからの新垣に対しての処遇を決めている。
その時だった。
「あぁミーたん!」
新垣が叫んだ、俺達はすぐさま後ろを振り返る、そこには一人の美少女が立っていた。
「まさかこの子が彼女とか言うんじゃないよな?」
「はっはっはっは、そのまさかだ!」
多分コイツは今の状況を忘れているな、今の言葉で完璧に俺達は切れた。
こんな奴の彼女が美女だと? 笑わせる。
俺達なんて彼女のかの文字すら言うことを禁じられているというのに。
「さて……焼くか?」
「――止めて! 新垣君にまだ手をださないで!」
ミーたんと呼ばれた新垣の彼女が叫ぶ。
………………まだ?
「せめて………せめて……生命保険に入って、私にお金が入るようにしてからにして!」
「おい!!」
…………コイツは多分、彼女じゃない。
「それにまだ新垣君、エル○スのバック買ってくれてないじゃない!」
「ちょっと待っててくれミーたんこいつらの魔の手から脱出したらすぐに買ってあげるよ」
「――俺達の魔の手の前に、カモにされてる現状から脱出しろやああああああああ!」
カモだ、コイツは完璧にカモにされている。
そうとわかった瞬間、俺達は今まで憎悪を乗せた視線を、哀れみの視線に変えた。
「おろしてやれ」
俺の一言で吊るされていた新垣は下ろされた。
「今から買いに行こうミーたん!」
「待たせたんだから他のも買ってね!」
ハイテンションで何処かに行く新垣を俺達はそっと哀れんでいた。
さようなら我が最愛の友よ、そいつは悪魔だ。
決して止めはしないさ、少しでも俺達に自慢した罰だ。
数週間後。
「よぉ………俺達親友だよな?」
やつれた新垣が俺達の元にやってきた。
金がない男に用はないと捨てられたらしい。
「あぁそうだとも!」
俺と新垣と須藤は三人で抱き合った。
女なんて信じない! と硬く三人で誓った。
「……好きです」
その日俺は告白された。
「俺もだよ!」
次の日には親友達からのフルボッコが待っていた。
なにがしたいのかわからないものになってしまいました……。
短編はこれが初めてなので
これからもっと上達していきたいと思います。