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 この女の言葉の使い方を聞いて、確認していると、甘い蜜を吸わせて、現実を見させて、叩き潰す。簡単に言えば、これは、アメとムチそのもの。勉強嫌いだった私に両親が、同じ事をしたから、すぐ気づけたのは不幸中の幸いだ。あの時は泣きわめいて、駄々を捏ねたが、いざこのようなトラブルに巻き込まれると、両親の教育の仕方に感謝している自分がいる。私もそこまで、馬鹿ではない。だからこそ何も気付いていない振りをして、ただ会話を続けるのみ。




 そこからガラスが零す言葉の中に、沢山のヒントが紛れ込んでいるはずなのだから。




 「その門とは何なのだ?」




 『門には五つあると言いましたよね。一つ目の門は視界、見えなくなった目を取り戻す作業となっております。二つ目の門は声、失った声を取り戻すゲームとなります。三つ目は耳、聞こえない音を我物に出来ます。四つ目は嗅覚、匂いを感じ、香りを楽しむ為の余興となっております。最後の門、五つ目は感覚、私達が管理している貴方がたの全身の感度を与えるものとなっております。以上が説明です』




 門には五つある、そして一つ目の門が視界だと?私には見えるのだが、どういう事なのだろうか。今まで意識を失い、眠っていただけなのに、どうしてガラスを見る事が出来るのだろうか。




 『不思議そうな顔をされていますね。一つ目の門、視界、貴方は特例ですので、突破済みですよ。少し細工をしましたが、貴方は私達の答えに解答をしました。覚えていないのですか?』




 「そんな記憶はない」


 『なら、無意識と言う訳ですか。他の方とは遥かにレベルの低い問題でしたが、それでもクリア出来ない方が多数います。貴方を含め、同じ難問を突破したのはお二人目ですね』


 「レベルが低いのなら、他の参加者はクリア出来ないのではないのか?」




 どうしても引っかかったから、聞いてしまった。ガラスは、ふふふと微笑みながら、待ってましたと言わんばかりに語り続けるのだ。私が反応すると見越しての事だろう。




 『ああ。間違えました。レベルが低いと言うよりは、種類が違うのです。だからこそ比べるべきでは、ありませんでしたね。貴方と私にとっては、簡単な問題でも、他の方からしたら、一番の難問だと思いますし』




 種類が違う?どんな難問だったのだろうか。私が見た夢が関係しているのかもしれない。覚えていない事は分からない。だから何も言いようがない。そして貴方と私にとっては簡単な問題、だと?同じ難問を突破したのは私ともう一人……、もしかして。




 『くすくす』


 「何が可笑しい」


 『いえいえ、考えている事が、手に取るように分かるので、愉快なだけですよ。私と貴方は思考が似ているのでしょうね。多分、これは推測ですが、不思議に感じたのでしょう?そのままシンプルに考えていいと思いますよ?貴方の推測通りですから』




 心の声に変換などしていないのに、手に取るように分かると言う事は、ビンゴと言う事か……。それが正しいのならば、この難問をクリアしたのは、私と目の前にいるガラスの二人となる訳だが、疑問が残る。五つの門を突破出来なかったのか、と。だが、ガラスは自分から望んでここに残っている感が否めない。だからこそ、行き着くのは一つの答えと言う訳か。




 「なるほどな」


 『見えてきたみたいですね』




 一つの答えとは、ガラスは元参加者で、全ての門を突破した人間と言う事だ。だからこそ、これから何が起こるかも把握済み。ガラスは自分からエントリーをしたのだろうか、特例で同じ難問、そうすると、別の人間に勝手にエントリーされた可能性が高くなる。表はただの説明だが、ある意味、私と同じ立場で、昔の自分と重ねている可能性がある。そして私がどう動くかを楽しんでいる節がある。と、なると、この女は人の心を捨てたようなものだろう。影響とは恐ろしいものだ、人を簡単に変える事が出来る。




 「お前はこれでいいのかい?」




 そう問いかけると、何が言いたいのか理解しているように、フッと鼻で笑いながら、ベッドに拘束されている私に近づいて、頬を撫でる。




 『私がここに居続ける、それが答えです』


 「そうか」




 その一言で、今までの推理が的を得たものだという結論に行き着いた。最初は私と同じ、普通だった人間。その人間がここまで、罪木屑死に拘る理由、それは何なのだろうか。きっと全てを突破した時に、見えてくる答えなのかもしれない。




 順繰り還って、最初に戻り、声を手に入れる、そして三つ目の門が開かれるのだ。動けない私の代わりに、パートナーとなる廃人が私を抱きかかえ、ガラスにお辞儀をする。そうすると、微笑みを零しながら、ニッコリとした本当の笑顔を見せたのだった……。

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