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三途の川の話

作者: 宮篠 閏

なんの話ししてんの?


あ、先生!三途の川の話ですよ!


またそーゆー話をw


どんなんだろ?先生どんなだと思います?


ん?あぁ、先生はねぇ、心臓悪いでしょ?


そうですね……


1回目倒れた時にね〜、見たよ。三途の川


え、マジですか?


そだよー


それはもっとkwsk


はいはいwww

それは、夏が来る少し前のお話。


5月。私は学校の教師をしていた。


ゴールデンウィークが終わって少し憂鬱そうな顔で

「おはようございます」

と挨拶をする生徒達に苦笑いを浮かべながら、まぁ、頑張ろうよと声をかけ、職員室に向かった。


私が受け持っているクラスの教室は二階にある


朝のホームルームを終え、職員室に戻ろうと教室を出た。


階段の踊り場に差し掛かり、今日休んでた子の家に電話しなくちゃと思いながら少し歩みを早めた。


階段を降りきったその瞬間、目の前が急に暗くなった。

体から力が抜けて、手に持っていた書類やらファイルやらがドサドサと足元に落ちた。意識が遠のき、床に倒れ込んだ。遠くで、誰かの走って来る足音と騒ぎ声が聞こえてきた。



私は学校で心臓が止まってしまった。



目が覚めたら、どこまでも続くとても広い所に寝転んでいた。

記憶喪失にでもなったのか、それまで自分が何をしていたのかよく思い出せなかった。立ち上がって辺りを見渡すと、空が黒々とした紫色で、不気味な雰囲気が漂い、太陽も月も出ていなかった。ただでさえ光源がなくて暗いのに、追い打ちをかけるかのごとく青紫色の濃い霧がかかってさらに視界が悪くなっていた。


そこで私は急に、今まで学校にいた事を思い出した。もう辺りは暗い。家に帰らなければと思った。


人間、どこかしら家に帰らないと、という思考があるのだろう。


ただ、道がない。

どこをどう行けば家に着くかも分からなかったので、とりあえず真っ直ぐ歩いてみようと思った。ここから真っ直ぐに歩けば人や家の1つくらいあるはずだ。そしたらここがどこか聞けばいい。そう思って、真っ直ぐ歩いた。



15分ほど歩いただろうか。

前方に黒い道路のようなものが見えた。きっと道だろう。

よし、あそこまで歩いて、右に曲がるか左に曲がるかは着いた時に決めよう、そう思ってその道らしきものを目指して歩いた。



少しして、その道に違和感を感じた。

道がうねっているように見えた。黒い道が粘り気のある泥のように波打っている。目の錯覚かと思った。だが、近づく度に道だと思っていたものは道ではないと分かった。



川だ。黒く、泥のような川が流れている。

時々その黒い川の中に白いものがのぞく。あれは、骨だろうか。

見てはいけない。

そう思った。


だが、足を止めようとしても止まらない。川に吸い込まれるように1歩、また1歩と足が進む。

このままではダメだと、目を瞑り、顔を背け、必死に止まろうとした。



川の縁の、ギリギリのところで、足が止まった。

ここにいてはいけない。この川は見てはいけない。離れよう。

私は川と反対方向に走り出した。



ひたすら走り続けた。

しばらく走っていると、光が見えた。

根拠はないが、この光に向かって走ればいいのだと思い、必死に走った。



すると、急に体がずしりと重くなり、さっきまで光っていた何かが無くなり、真っ暗になった。





遠くで、誰かが、私を呼んでいる。

私は薄目を開けた。眩しい。

見覚えのない天井と眩しい蛍光灯が目に映った。


目を開けると、看護師が、こちらを覗き込みながら、

「大丈夫ですか?手術は無事、終わりましたよ。」


と、微笑んでいた………




って感じ


はぇ〜、白骨が……


うん。もっと綺麗な川がせせらいでんのかと思ってた


わかる


死んだらあの川渡んのかぁ…

あ、下校時刻あと5分だよ!はよ帰り!


やべ!おい、帰んぞ!

せんせぇさよなら〜!


気をつけてねー!




……………あの看護師めっちゃ美人やったなぁ



~完~

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