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第58話 領主代理

おふざけが過ぎたと反省しております。

次回からはちょっと真面目な話になるはずです。

 リン達がルフィアへ向け移動している中、そのルフィアのとある屋敷に数名の貴族達が集まっていた。


「どうするのだ! ルフィア公は捕まり、新しい領主は()()アナザーだというじゃないか!」


「ようやく邪魔なアウリス家を追い出す事が出来そうだと言うのに、ルフィア公が居ない今、これまでの様に行かなくなれば厄介だぞ!」


 リンは知らない、一見豊かで平和なルフィアに巣食う膿が存在する事をーーー


「ふん、英雄などと持て囃されているが、所詮は子供であろう、確かにあの結界など強力な魔術を使う様だが、小僧には変わらぬ、むしろ上手く手なずける事さえ出来ればルフィア公より余程良い思いが出来るだろう?」


「なるほど、確かにそうなれば実質ルフィアは我々の思うがまま…流石はアルファ伯爵、聡明ですな!」


「ははは! まぁ我に任せておくがいい、所詮平民は我々貴族の為に存在しているのだ、これからも我々の輝かしい未来の為に生きてもらおうじゃないか!」


 貴族達は知らない、強力な魔術などリンにとっては力の一端でしかない事を、そして弱者を食い物にするそのやり方が、最も触れてはならない逆鱗である事をーーーーー


 ーーーーーーーーーーーー


「リン様、殿下、まもなくルフィアに到着します」


 王都を出発して数時間、顔を見せたばかりの太陽は既に真上を過ぎていた。


「ようやく到着かぁ…やっぱり時間かかるんだな」


「むしろ早いくらいですよ? リンの感覚がおかしいんだと思います、他国へ向かうなら数日、場所によっては数ヶ月かかるものです」


 近代インフラに支えられた生活を送ってきたリンにとって、馬車は最初こそ目新しさから楽しめていたが、一時間も経つ頃には飽きてしまった。


 とは言え、移動中の雑談はリンにとっても有意義な面も少なからずあった。

 今まで知らなかった色々なエデンの常識を知るいい機会になってくれた。


「ルフィアに入ります、街の人々も大勢の集まってる様ですね」


 御者の騎士が言う通り、ルフィアに入る門をくぐると途端に歓声に包まれた。

 アリスに促され、馬車の窓から顔を覗かせれば先日の式典にも劣らない歓声が上がった。

 リンに送られる感謝と歓迎の声は屋敷に到着するまで止むことは無かった。


 ーーーーーーーーーーーー


 屋敷の門をくぐり、案内されるままに中に入る。


「「「お帰りなさいませ」」」


 扉をくぐった瞬間数名のメイドと執事に出迎えられた。


「お帰りなさいませ閣下、リュカ様がお待ちでございます、僭越ながら私が執務室までご案内させていただきます」


 突然の事で面食らってしまったリンは言われるがままに案内された執務室へと足を運んだ。


「お帰りなさいませ、姫様、リン様」


 部屋の中で待っていた様子のリュカが敬礼と共に挨拶する。


「お疲れ様ですリュカ」


 アリスはそんな大仰な対応も慣れた様子で、流石は王族とリンは感心した。


「…しばらくはアリスに頼る事になりそうだな、俺には無理」


「え? ええ! お任せ下さい! 私に出来る事ならなんだって致します!」


 リンに頼りにされた事が余程嬉しかったのか、アリス満面の笑みを浮かべた。


「…チョロいわね」


「はい? 何か言いまして?」


「何も言ってないわよチョロ姫様」


 ルナは通常営業だった。


「ははは、まぁいきなり領主にというのも大変でしょうが頑張って下さい、それにお聞きの事かと思いますが、早速リン様には仕事をしていただく事になりますよ」


 リュカの言葉にリンは憂鬱になる。

 あれほど忠義に厚そうなリュカですら苦笑いを浮かべるのだ、本当に碌でもない国王だった。


「ライズも陛下の性格は知っていますから、それほど重く考えなくて大丈夫ですよ。 では二人を連れて参ります」


 そう言ってリュカは部屋を出て行った。


「はぁ…まぁどちらにせよライズさんには頼みたい事もあるし、仕方ないか」


「頼みたい事ですか?」


 アリスは不思議そうな顔をする。

 ライズが受けてくれなければアリスに頼る事になる。

 そうならない事を祈りながらリュカが戻るまでの数分を居心地の悪さを感じながら待つ事になった。


 ーーーーーーーーーーーー


 コンコンと部屋にノックの音が響く。


「お待たせ致しました。 ライズ騎士団長、クリス副団長の両名を連れて参りました」


「どうぞ」


 リンが短く答えると扉が開く、そこには驚きのあまり目をまん丸に見開いたライズとクリスの二人が立っていた。


「え…は…何故リンさんがここに…」


「まさか…そういう事ですか?」


「お二人の処遇については事前に伝えていた通り、ルフィア領主様である、リン侯爵閣下より……っふふ、下される」


「今笑ったでしょ、リュカさん」


 流石に馬鹿馬鹿しくなったのか、リュカが思わず吹き出した事にその場の全員が気がついた。


 だが、ライズはその生真面目な性格から状況を理解した瞬間、その場ですぐに膝をついた。

 クリスも未だに混乱しつつもライズにならい膝をついた。


「えーっと、まずその体勢をやめませんか? 正直話しづらいんですが…」


 リンは空気に耐えきれず、そう二人に声をかけた。

 だがーーー


「リン、ここまでの事はお父様の戯れが原因ですが、二人が事情を理解した以上、ここからは正式に二人の処遇を伝える大切な場です。 侯爵として相応の態度で臨むべきです」


 アリスに真面目な表情でそう言われてしまい、リンはいよいよ観念した。


「はぁ…では、俺から二人の処遇を伝えます」


「「はっ!」」


 流石というべきか、二人に弛緩した雰囲気は一切無い。

 それを感じ取ったリンも心なしか気が引き締まった。


「まず、クリス副団長は今後、ルフィア騎士団の騎士団長として街の治安維持を始めとした任務に従事してもらいたい」


「はっ! ……え?」


 クリスが驚いた様にリンを見たが、構わず続けた。


「続いて、ライズ・アウリス」


「はい、如何なる処分も謹んでーー」

「貴方にはルフィア領主代理として共にルフィアの発展に協力してもらいたのですが」


 それは国王の入れ知恵だった。

 領地運営の経験も知識も皆無なリンが困り果てていた所、国王にこの方法を教えてくれた。


「ライズはアウリス男爵家の長男だ、剣の腕は勿論、貴族としてそういった知識も豊富な男だ、何よりルフィアにおいてあの者以上に信頼出来る男はおらん」


 と言われた。


 リンとしてもその案は非常に魅力的であり、二つ返事で了承ていた。


「わ、私が領主代理…それはいくらなんでも…」


「代理というか補佐官ですね、とは言え俺は領主運営なんて全然わからないので、ライズさんに頼りきりになるでしょうし、留守にする事も多いと思いますから実質的に代理になると思います」


 リンはアリスにも手伝ってもらいながら、自分は徐々に勉強するつもりだった。

 だが勉強している間に領主が傾いたら元も子もないので、そういった言い方が適切だと考えていた。


「お願い出来ませんか?」


 リンとしてはこれで断られたら明日からどうやって領地運営すればいいか分からないので、本気で困った事になるのだがーー


「リン殿…いえ、リン様の命とあらば是非もありません。 大任謹んで賜らせていただきます」


「ありがとうございます、お願いします」


 まだ、色々と考えなければいけない事は多いが、大きな不安が一つ解消された事に安堵するリンだった。

アルファ伯爵、その名前に隠された秘密が分かるでしょうか?

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