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更新遅くなって申し訳ないです。
言い訳させてもらうとPCが壊れてました。
PC操作中にブレーカーが落ちてしまって、これが原因で壊れました。
マザーボードの交換に、OSのクリーンインストールと・・・(泣)
修理は完了したのでまたぼちぼち投稿していきたいと思います。
領主の館、会議室。スクリーンには地図が表示されている。
「砂砂漠は東西と南に向かって広がっており、本日の調査ではその端へ至ることはできませんでした」
砂砂漠北端付近に赤い丸がある。支持線が伸びておりその赤い丸が転移地点であることが表示されている。古井さんはレーザーポインター(緑)で転移地点周辺を示した。
「本日転移した地点はこちら。砂砂漠北端あたりに位置していました。そして・・・」
緑の光点が北西の方向へ移動する。
「こちらが本日発見した街です」
街は砂砂漠から少し離れ、しっかりとした地盤の上にたてられているようだった。
「周囲は城壁に囲まれており、兵士と思われる人影が確認されています」
画面上で新しいウィンドウが開き、動画が再生される。偵察機から撮影された映像だろう。遠くから撮影したものを無理やり拡大しているため、画素が見えてモザイク状の映像になってしまってる。とはいえ外壁(?)の上にかろうじて人っぽい影が確認できる。それら影は同じ装備をしているのか同じ配色になってる。そしてその手には何か長い棒状のものが握られている?
「これら兵士は一様に手に長い棒状のものを携えております。・・・この持ち方をする武器って・・・なんなんでしょうか?・・・槍とか?」
「槍・・・はいくら何でも古すぎるよね?・・・マスケット銃とか?」
と古井さんと京藤さんがそれぞれの意見を述べる。彼女らが不思議に思っているのは、彼らの棒の持ち方だった。棒の中央付近を握り、その棒の下端を地面につけていた。
「まぁ、攻めに行くわけじゃない。当日双眼鏡を使って遠方から確認でいいんじゃない?」
「うーん・・・それもそうですかね・・・?」
「まぁ、あとは・・・・・・この町はどこなのかとか・・・検討はつかない?」
「一応、電子データ化された地図とは照合させてみたんですけど・・・該当なしなんです」
「・・・それは・・・どういうことなんだい?」
「情報分析は専門ではないので・・・正直よくわからないです。憶測になりますが、砂砂漠の地形は日々変化してしまいます。本日得られた地図はそのほとんどが砂砂漠に関する地形ですからそれが影響したのかと・・・」
「・・・」
石田は該当箇所がないということについてむしろ納得がいった。
(いや、むしろ照合して該当がないってことはやっぱり異世界・・・なんだろうね。そもそも私がいた世界から言ったらこの領の存在自体がすでに異世界なんだけど・・・。)
京藤さんが考え込んでいて、会話が止まっている。情報がない中、この街について考えても時間の無駄と考え話題を変える。
「とりあえずの目標はその街に行くってことになるけど、その移動はどうしよっか?」
「あ、ええとそうですね。本日京藤さんが襲われてわかったんですが、この砂漠には地中に・・・怪物?が隠れていることが確認されています」
そういって京藤さんが操作すると、地図上に無数の赤い点が表示された。
「これが本日の調査で分かった怪物の分布図です。そして・・・」
新たなウィンドウが開きそこに転移地点周辺の拡大地図が表示される。
「転移地点周辺の拡大図です。転移地点に6匹ほど集まっていました」
「え・・・・・・あれが6匹もいたっていうのかい?」
「地中を移動することによる発見のしにくさ、一撃でKillしてくる攻撃力・・・。6匹は脅威ですね」
「うわぁ・・・そういえば、京藤さん。何か考えがあるって言ってたけど、どんな感じ?」
「ごめん。あまりよくない・・・マホロ、ちょっと話させてもらっていいかな?」
「どうぞ」
「ボクが考えていたのはこの転移地点を移動させることだった」
「おぉ!」
それができるなら、一気に町の近くに動かしてしまえばすべての問題が片付く。砂漠の上を徒歩移動とか嫌だしね。
「でも、無理だった」
「おぉ・・・」
「転移先を動かすためには専用パスワードが必要だった」
(・・・ということはそれを知る人物がいるよね?その人物のとらわれている霧を解除できれば何とかなるのかな?使用していない課金がそのまま残っている。あれを使って解決できるのなら、投入もやぶさかではない・・・)
「パスワードを知っている人物に心当たりは?」
「転送施設の管理者は、瑞山美典さんだよ。彼女ならきっと知っていると思う」
「えーと瑞山さんは・・・」
タブレットを操作して瑞山さんを探す。
「彼女なら研究開発区奥にある演習場あたりにとらわれているよ」
「え・・・?あそこって何かあったっけ?」
領主の館から南に少し行ったところに研究・教育施設がある。領主の館から見て研究施設のさらに奥には陸軍用の演習場が設置されている。
「演習場以外、何もないよ」
「?」
とりあえずタブレットの演習場周辺を覆う雲をタップする。新しいウィンドウが開かれ解除条件が表示された。
『料理の種類を増やせ(注:研究・教育施設を開放の後、取り組めるようになります)』
「・・・料理の種類を増やせ?・・・なんだこれ?」
「えっ?わからないの?」
「司令はご存じないのですか?」
「何を?」
「・・・まぁ、後程わかるよ」
「えぇ。いやというほどに」
「?」
「それより、そこを取り組む前には教育・研究施設を開放しなくていけないよ」
「たしか、解放条件が『新しい領民を迎えろ』でしたね」
「そう。だからそのためにはそもそも領を出てここに移住を希望する人材を探さないといけない」
「・・・でも、出口にはあいつらがいる・・・か・・・」
手詰まりかと思われた。しかし・・・
「その怪物について、少し報告があります。もしかしたら何とかなるかもしれません」
「おぉっ!本当か!」
「こちらをご覧ください」
PCを操作してスクリーンに映像を映し出した。
「調査中、超低空飛行をするとその飛行経路から逃れるように移動することが確認されました」
映像は地図の上をアイコンが移動する内容だった。まず航空機のアイコンが直線で移動した。直線移動の最初と最後は高度を変更したのか中央の移動に比べゆっくりと動いていた。直線移動を終えると、左回りにその直線移動周辺を周回し始める。そうすると地図上に赤色のマーカーが表示される。その赤色のマーカーは確かに直線移動したあたりから逃れるかのように移動していた。
「今の映像は直線移動でしたが、次の映像では半円を描いて超低空飛行した場合です」
映像が切り替わる。先ほど同様航空機アイコンが小さな半円を描いたのち、その周辺を左回りで旋回し始める。赤いマーカーが表示され、それらは最初に描いた半円軌道から逃れるように移動していた。
「今回この怪物について考察するのに『地中を移動する生物』ということで私たちが知っているモグラを参考にしてみました」
スクリーンにウィンドウが開きモグラのアニメ絵が表示された。
「モグラは地中で生活するため目が役に立ちません。そのかわり聴覚と嗅覚が発達しているといわれています。聴覚といっても耳を使っているわけではなく、鼻の先に振動を感知するアイマ―器官が発達していてこれを使って音・・・というより振動を感知しているそうです。嗅覚は左右それぞれの鼻で匂いの強さを測り、その方向を特定しているのだそうです」
モグラの目と耳にXが表示され、鼻に○の表示が出た。モグラの絵のウィンドウが画面左に動かされ、地図の赤いマーカーが見えるようになる。地図の赤いマーカーを囲むよう丸が表示された。
「この特徴が転移地点周辺で襲ってきた怪物にも備わっているのではないでしょうか」
「なるほど。パントムの出す騒音に驚いて逃げ出した?」
「えぇ。どの程度の距離、はなれた位置から獲物を感知するのかわかりませんが、相当微弱な振動を感知できるのではないでしょうか?・・・とすると・・・」
「パントムの騒音は刺激が強すぎる・・・」
「はい。ですのでこれを利用して、大きな音を立てるもの・・・例えば手りゅう弾などを炸裂させながら移動すれば寄ってこないのではないかと考えます」
「なるほど・・・・・・でもちょっと待って。それってかなり危なくないか?」
「手りゅう弾」それは手で投げるタイプの爆弾のことだ。炸裂によって殺傷効果を得るタイプのものには大雑把にだが攻撃型と防御型の二種類ある。爆発の衝撃で狭い範囲に殺傷効果をもたらすものが攻撃型だ。そして炸裂時に破片などを飛散させ広範囲に殺傷効果をもたらすものが防御型となっている。攻撃性の高さから言うと逆じゃない?と思われるかもしれない。しかし、これは利用時を想定して定義されたため使用法を想定すると理解しやすい。前方に進行するとする。そして敵も前方にいる。前方に向かって手りゅう弾を投げ、前方に向かって移動すると殺傷範囲に近づくことになる。敵拠点に攻撃を仕掛ける際などに用いられたのが攻撃型。自ら投げた手りゅう弾で死なないように殺傷範囲が狭く作られているのだ。逆に防御型は、土塁や塹壕などで構築された拠点を防衛するために利用された。この場合殺傷範囲を広く作ったとしても、身を隠す場所があるため問題とならない。
さて、では現在利用可能な手りゅう弾はどちらかというと・・・防御型のものだった。まぁ、基本遠くに投げれれば問題ない。しかし投げ手に問題があった。ゲーム時代ボタン一つで決まった速度、角度で投げてくれていた。しかし、現在は自力で投げなくてはならない。運動は好きだが、球技は不得意であった。遠くに投げれる気がしない。加えて利用を想定するのが砂漠・・・遮蔽物がないのだ。さて、困った・・・。
「匂いも影響を与えていた可能性もあるんだよね?」
情けないことを考えていると京藤さんが疑問を投げかけた。
「あの生物がモグラと同様の特徴を持っていたとしたなら・・・ですけど、可能性はあると思います」
「なら発動機の排気ガスも怪物よけの効果があるってことになると思うんだけどどうだろう?」
「おっ!確かに!・・・・あれ?でも今、車庫は霧の中じゃない?」
「うん。だけど、一台だけ73式大型トラックが転送施設横の車庫にあるんだ」
「おおぉっ!」
ゲーム中73式大型トラックは輸送車両として使われていた。攻撃能力は敵を轢く以外にはないが、その代わり比較的高めの走行能力と輸送量から重宝されていた。あと、車両ということで変な仕様(バグ?)が存在した。それは対戦車装備のみが車両にダメージを加えられるということだった。このため小銃でいくら攻撃してもダメージが入らないのだ。面白いことに狙撃銃の一つにアンチマテリアルライフル(対物ライフル:旧対戦車ライフル)があったのだが、これは対戦車装備ではなかった。そのためこれで運転手を攻撃してもダメージが入らない。また、荷台部分には幌がかけられ中には座席が用意されているのだが・・・不思議なことにこの幌部分を攻撃しても中に座っている搭乗者にダメージは与えられなかった。唯一ダメージを入れられるのが覆いがない後方からの攻撃だったのだ。初心者だったころは何度無意味な攻撃をしたことか・・・。
「・・・ん?」
そう、対戦車装備でなければ車両にダメージを与えられない。たとえそれが幌の部分であってもだ。あの怪物の攻撃はどちらに分類されるのだろうか?対戦車?それとも・・・
「なにか気になることがあった?」
「・・・いや。ごめん。73式のこと思い出してた」
「そっか。それで、どうだろう?明日、73式を試してみたいんだけどいいかな?」
「うん。いいと思う。明日はそれを試してみよう」
「了解」
「明日は、73式を試して大丈夫なようならそのまま街へ向かって移動してみよう。ダメなときは手りゅう弾戦法と組み合わせて・・・って感じかな」
「「はい」」
窓の外は真っ暗だ。時計を見てみると時刻は20時を指している。この報告会を終えるにはちょうどいいタイミングだろう。
「古井さん、調査と報告ありがとうございます」
「はい」
「京藤さんも今日はいろいろ教えてくれてありがとう」
「はい」
「じゃ、今日はこの辺で。お疲れさ・・・」
―グゥー・・・
腹が鳴ってしまった。そういえば、こちらに転移して以来何も口にしていない。
「あら?司令官、おなかがすいたんですか」
「ちょうどいい。一緒に食事にしよう」
そういって二人がこちらを見て微笑んでい・・・いや、まて、なんだか目が微笑んでないぞ?なんだろう?・・・一層疲れた目をしている。
「食堂に移動しようか」
二人が部屋の出口に向かって歩き出したのでそのあとを追いかけた。