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後方兵科が異世界転移!?  作者: お芋さん
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 フォックス族の人たちはみな律儀だ。石田の指示にも従う、列を作る、順番を待つ・・・そして食事の合掌(合図?)を待つ・・・。

 食事を配り終え石田も椅子に座ろうとすると周りの誰も食事に手を付けていないことに気が付いた。石田としては受け取って椅子に座ったなら、それぞれで食べ始めてもいいと考えていた。しかし、彼らは律儀にも石田らが配り終え席に着くのを待っていた。

 石田が椅子に座るとガパティが代表して声を上げた。


「神とこのたびはイシダに、食事を授けてくださったこと感謝いたします!」

「「「「感謝します!」」」」


 フォックス族の全員が一斉に軽く目を閉じ頭を下げる。

 イシダらはその光景に驚く。

 フォックス族の人たちは頭を上げるとようやく食べ始めた。


「うぉ!・・・うまい!」

「鶏肉の脂だろうか?それがこの白いのによく吸い込まれてておいしい!」

「噛めば噛むほど味が出てくるぞこれ・・・!」


 彼らが食べているのは鳥飯だった。鳥飯は中華粽ちまきの味から、脂っぽさを少し抑えたような味わいだ。醤油やみりんのほか出汁が利いているのか噛めば噛むほど旨味が広がる・・・のだが、缶飯はそもそも缶にぎっちり詰めてあるので量が多く、最後までこの味をひたすら食べるのはなかなかにきつい。


(うん。そんなに量を食べない私にはこれは多すぎる。だからか、この一食を食べている間に飽きてしまうんだよなぁ・・・・。それを彼女らは延々と繰り返してきたんだなぁ・・・。食べ始めだからまだ飽きてないけど・・・これも食べ終わるぐらいにはその味にうんざりしてるんだろうな・・・)


 などと非常に身勝手なことを考えながらふと横を向くと、ガパティがおいしそうに食べている。ふと先ほど感じたことが思い出され聞いてみる。


「ガパティさん。フォックス族の人たちって・・・すごい律儀ですよね」

「そうですか?・・・そういえば時々訪れる旅人の方などはそうおっしゃってましたね」

「食事はそれぞれで食べ始めてもらえばいいと思っていたんですけど、皆さん待たれていたので、皆さん準備が整うまで待たれていて驚きました」

「あぁ・・・。私たちの部族では皆で料理して、皆で同じ料理を食べるのです」

「あー、だから一斉に食べ始めるのですね」

「そうですね・・・。そういえば昔ある旅人が、『あなたたちの村は過酷な環境に存在する。そんな中を皆で生き抜くために協力し、分け合うことを大事にするのだろう』と言ってましたね・・・」

「はぁー、そんなに過酷な環境だったのですか?」

「う~ん・・・どうでしょう。小さいとはいえ池はありましたし、南にしばらく歩くと草原があるのでそこで食料も手に入りました・・・ただ、そうですね・・・今回村を襲ってきたヒポポ族は草原の中央にある大きな湖を住みかとしていました。彼らは食料も十分確保できるのか皆とても大きな体格をしています。・・・・・・そこから言うと確かに過酷な環境なのだろうと思いますが・・・」

「・・・」


(生まれたときからそれを当然として暮らしていたから、それを過酷だとは感じないのかな?聞くからに水や食料に悩まされていそうな環境なのにな・・・)


「そういえば、その・・・ヒポポ族・・・ですか?・・・今回村を襲ったのは?」

「はい」

「何かあったんですか?例えばもともと仲が悪かったとか・・・?」

「仲が悪いとかということはなかったです。本当に不思議なのです」

「?・・・・・・その、ヒポポ族ってどんな部族なんですか?」

「そうですね・・・まずヒポポ族は私たちフォックス族とは違う種族です。彼らは体格がとても大きく、また筋肉質です。種族として防御力がとても高く、モンスターたちにも正面から挑めるほどです。あとは気性がとても荒いですね」

「・・・正面からぶつかりたくない相手ですね」

「えぇ・・・。ただ、彼らは水源から離れることを嫌がります。だから湖に近づかなければ基本的に争うことのない部族なんです」

「へー・・・そんな部族がわざわざ襲ってきたんですか?」

「えぇ。だから、本当になんで・・・って感じなんですよ・・・」

「・・・大変でしたね」

「はい・・・」


 話しているうちにだんだんガパティの顔がこわばっていった。嫌なことを思い出させてしまっていたということに気が付いた石田はここで話をやめ、食事に専念する。行儀が悪いと思いながらも料理をかき込み食事を終える。

 急いで食事を終えるとタブレットを取り出す。電源ボタンを押し画面を表示させる。


『「敵性生物の戦闘区域離脱を確認」状況終了

 戦闘結果:勝利

   次へ→』


 先ほど確認せずにおいていた戦闘結果だ。次への表示をタップする。表示が切り替わり各員が獲得したその経験値とその項目名が羅列されていた。


『京藤:Lv.2 ← Lv.1


・戦績       経験値

キル       1 x100exp

索敵アシスト   1 x25exp

救命アシスト   1 x25exp


・その他活動   経験値

実弾演習     1 x500exp


古井:Lv3 ← Lv.1


・戦績       経験値

索敵アシスト   1 x25exp

キルアシスト   1 x25exp


・その他活動   経験値

地形調査     1 x500exp

生体調査  2 x500exp


石田:Lv5 ← Lv.1


・戦績       経験値

同乗者アシスト  1 x25exp

指揮アシスト   2 x10exp


・召喚

兵員        3 x10exp

兵器        2 x50exp

施設        3 x10exp


・その他活動   経験値

実弾演習     1 x200exp

地形調査     1 x500exp

生体調査  2 x500exp


次へ→』


(どうやら京藤さんが行った射撃訓練や古井さんが行った地形調査も経験値に含まれるんだな・・・。生体調査が2ってなっているってことは、領内で行ったスキャンからポイントに含まれているんだな・・・召喚の兵員3は・・・こちらに呼んだ京藤さん2回と古井さん1回分か・・・)


 再び次へをタップする。すると今度は取得したスキルや称号などが現れた。


『京藤:Lv.2

獲得称号

なし


獲得スキル

機械化兵:ビークルからのエイムが5%安定する


古井:Lv.3

獲得称号

なし


獲得スキル

燃費飛行:燃費よく飛行できるようになり5%滞空時間が向上する

機体熟練:発動~出撃にかかる時間を5%短縮する


石田:Lv.5

獲得称号

統合司令:異なる指揮系統に所属する部隊を指揮した。(指揮所の拡張が可能となります)

運転手:ビークルの運転をした。

無計画:召喚MPを使い切った者に送られる。


獲得スキル

なし


完了』


 最後まで目を通す。


(・・・無計画・・・これは称号か?ってか私だけなんか獲得したものがひどくね?まぁ、実際この戦闘には全然貢献しなかったけど・・・)


 と先の戦闘を思い出しながら振り返っているとふと、あることに気づいた。


(そういえば京藤さんは戦闘苦手って言ってたけど・・・結構いい命中率だったよな?このスキル・・・は戦闘後に入手したものだ・・・。あれ?どうしてだろう?)


 そう実際73式トラックからの射撃はなかなかの命中率だった。あの時、射撃対象との距離が近かったことは影響したかもしれないがそれでもなかなかの精度だった。

 領に関する話だから部外者に聞かせる話ではないと思い席を立つ。京藤さんと古井さんを探すと、二人はすでに食べ終わっていた。


「京藤さん、古井さん。少し話があります。付いてきて」

「「はい」」


 二人を連れて天幕を出る。直射日光が熱いので少し離れた73式トラックの荷台に入る。適当な位置の座席に座り、京藤さんらにも座るよう促す。


「二人とも先ほどの戦闘はお見事でした」

「ありがとう」

「ありがとうございます」

「京藤さん、今日の戦闘ですごくいい命中率だったね。なんか、戦闘が苦手って言ってたけど・・・今日の感じから言うとそんなに気にすることない気がするけど・・・」

「あー・・・それはね・・・減装弾を利用したんだよ」

「・・・なるほど」


 減装弾とは、通常の弾薬とくらべ発射薬の量を減らした弾のことだ。初速(弾速)や射程距離、威力が減少するというデメリットがある。しかし逆に反動が減少したり、サプレッサーと併用して高い消音性能が得られたりする。


「えーと、じゃあ京藤さんは、距離のある状況では前に出ない方がいいんだね」

「そうだね。ただ、申し訳ないけど多分スナイパーライフルなんかを常装弾で撃つとボクは肩が外れてしまうよ。だから遠距離系の攻撃も・・・」

「なるほど。じゃあ後方で遠距離からっていうのも難しくなってくるんだ・・・」

「・・・役立たずだね・・・ごめんね・・・」


 京藤さんはうつむいてしまった。

 石田はゲーム時代を知らないからわからないが、戦略ゲームのモードにおいて火力・射程距離・移動性能・耐久のすべてが低かった彼女は一般に司令部施設の隣で戦闘中はずっと放置されることが多かった。ただ、彼女には獲得経験値を増やす特殊能力があったため、戦闘に連れていかれることの多いキャラだった。

 加えて友軍システムには戦略ゲームモードをプレイする時にある制約があった。戦闘に連れ出すユニット選択枠には必ず1枠、友軍から借りてくるユニット枠があるのだ。運営はゲームとして課金を促したかったのだろう。友軍の様々なユニットに触れ合わせることで購買意欲を刺激するためのシステムだった。(なお、その枠は正式名称「相互安全保障枠」だった。)

 京藤さんもやはり他の領における戦闘に呼び出され放置された経験を持っていた。

 タブレットを取り出し画面を呼び出す。


「いや、そんなことないよ。・・・えーと、二人はもうさっきの戦闘の結果を確認した?」

「いや・・・まだだね」

「同じくまだです」

「うん。さっき確認してたんだけど、二人とも練度が向上してたよ」

「ほんとかい!?」

「ほんとですか!?」

「あぁ。で、京藤さんは『機械化歩兵』ってスキルを獲得してた」

「どんなスキル?」

「車両からの射撃のエイムが5%安定するって書いてある。ブローニングM2とかの機銃が付いた車両でガンナー席に座ってもらうと助かるね」

「!!」

「だからこれからも頼むよ」

「うん!」

「次に、古井さんは向こうの領での生体調査も評価されてる。広い範囲の航空偵察ありがとう」

「はい」

「今回スキル『燃費飛行』と『機体熟練』を獲得していましたよ。それぞれ飛行時間の延長と、発動~出撃にかかる時間の短縮だそうです」

「あら~・・・実用的ではあるんですけど・・・やはり陸戦ではお役に立てそうにないですね」

「そうはいっても、古井さんの索敵なくして行動できない。調査活動を行ってもらえるだけで十二分な働きです。頼りにしてますよ」

「はい」


 タブレットへ視線を戻し、完了ボタンをタップした。今まで表示されていた戦績のウィンドウが閉じると同時に新たなウィンドウが開いた。


『遭難救助任務終了

 結果:成功

次へ→』


「へ?」


 次へをタップする。


『京藤:Lv.4 ← Lv.2


・戦績       経験値

治療        1 x25exp


・その他活動   経験値

救助活動     1 x1000exp


古井:Lv4 ← Lv.3


・戦績       経験値

治療        1 x25exp


・その他活動   経験値

救助活動     1 x1000exp


石田:Lv5


・戦績       経験値

蘇生        1 x100exp


・召喚

施設        1 x100exp


・その他活動   経験値

救助活動     1 x1000exp


次へ→』


(そういえば、自衛隊も災害派遣なんかで救助活動をしていたな・・・。こういった活動も経験値につながる活動になるんだ・・・)


 次へをタップする。


『京藤:Lv.4

獲得称号

衛生兵:治療活動を行った。


獲得スキル

なし


古井:Lv.4

獲得称号

衛生兵:治療活動を行った。


獲得スキル

なし


石田:Lv.5

獲得称号

救命士:蘇生を1回行った。

→ 軍病院をアンロック。

→ ユニット『ナイチンゲール・パラメディック』が解放されました。

多国籍軍:外国籍のユニットを所有した。


獲得スキル

翻訳家:異なる言語を使うユニットのコミュニケーションを円滑化させる。


完了』


 軍病院は転送施設の隣にある。転送施設東側が領主の館で西側が病院となっている。設定としては、医薬関係の実験施設を含む大型の病院となっている。

 タブレットから顔を上げると京藤と古井が石田を見つめていた。先ほど素っ頓狂な声を上げたせいだろう。


「司令、何かあったのかい?」

「あぁ、さっきの救助活動が評価されて経験値化されてた」

「へー、こういう活動も評価されるんだね」

「驚きました」

「あぁ、うん。同じく驚いてる。で、その救助活動のおかげで軍病院が解放されたらしい」

「「おぉ!」」

「それに伴ってナイチンゲール・パラメディックさんも解放されたみたいだ」

「了解です」

「あら、じゃあ迎えに行った方がいいですね」

「あぁ。お願いします」

「了解、じゃあ迎えに行ってくるよ」


 京藤と古井が荷台を出ていった。タブレットを操作してナイチンゲールさんの情報を探す。


ナイチンゲール・メディック

 性別:女

 練度;Lv.1

 看護資格を持つ。軍医ではない。前線で軽傷のユニットを回復させられる。中~重傷のユニットを回復させることはできない。他の医療系ユニットと併用することでその回復効果を飛躍的に高められる。


(看護資格?・・・軍医ではないってことは・・・検疫をお願いするわけにはいかないのかな・・・?)


「おい!そこのお主!」


 トラックの外から大音声で呼びかけられる。非常に大きな音だったため驚き、タブレットを落としかける。その声は相当な怒気をはらんでおり、石田はのろのろと外に出て姿をうかがうより先に返事をする必要を感じた。タブレットをしまって荷台の外に出るべく動きながら返事をする。


「はい!なんでしょう・・・!?」

「今からそのうるさいのを黙らせる!そこを離れろ!」

「黙らせる?・・・どうやって?」

「殺す!そうすれば嫌でも黙ろう!」


 相手の意図がつかめず動きが止まる。


(殺す?・・・どういうことだろう?・・・「うるさいの」ってのはこのトラックだよな?・・・うわっ・・・まずい!トラックを壊されたら移動手段を失うぞ。でも、なんかすごい怒っているし・・・。少しの間なら止めてもサンドワームも近寄らないだろ)


「ま、ま、待ってください!黙らせますから!」

「うん?お主それを黙らせれるのか?」

「ハイ!少しお待ちください!」


 壊されてはかなわないと思い荷台を急ぎ飛び降りる。そのまま運転席に駆け込み、キーをひねりエンジンを止める。


「おぉ・・・。黙りおった」

「お騒がせしてすいません」

「うむ」


 運転席を出て声のする方を見る。そこにはドラゴンがいた。

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