21 ジンクラフトマイスター(後編)
「あれー。こんなところにいたんですかー。」
「こんなところにいたんですー。って、おい。急げ。」
俺たちはとんでもない事件に巻き込まれていた。
イリヤの姉のアリアはジンクラフトマイスターであった。娘のリリアも母の趣味ともいえるジンクラフトを学んでいた。
しかし、まだ神姫のリリアはジンクラフトは未熟であったが、中級コースともいえる、シャイターンを創ってしまった事が発端となった。
神姫リリアのジンクラフト経験は、ようやくジャーンからジンを創れるようになったくらいのレベルであった。
錬金術や神術経験もなく、ましてや、知能をもった式神やゴーレムさえ創作した経験もなかった。それが、勢いあまって、シャイターンを創ったのだから大事になった。
「神姫がつくるシャイターンは間違いなく闇落ちする可能性大。しゃべる魔女っ子シャイターンは召喚獣にもなれないぞ。不味いことになった。」
ジンクラフト工房の責任者がアリアに話していた。
「かわいそうだけど、奴隷呪を用意した方が良いですね。」
俺たちは重苦しい雰囲気になったか、まだわからなかった。しかし、リリアだけは事の重大さを理解したのか謝り始めた。
「ごめんなさい。ママ。でも、昇格するために上手にジンを創ろうとしたら、頭の中でパパを思い出しちゃったの。そうしたら、シャイターンになってしまったんだよ。悪気はなかったんだから・・・。本当にごめんなさい。」
リリアは深く頭を下げて謝っていたが、突然アリアが、リリアがしていた髪飾をむしり取った。
「この髪飾はどうしたの。誰に貰ったの。紋様?のような護符のようにも見える。それに魂宿りの形跡さえ見られるわ。」
リリアは思い出したように、アリアの顔をぐっと目を開け、気付いたようだ。
「さっき、一緒に初級合格コースを受けたとき、合格お守りっていいながら、この髪飾と腕輪を配っていた男神がいたの。」
「今もその男神はいるの?どこ?」
リリアは首を振りながら涙目になりながら訴えていた。
「神姫様には髪飾って。ウウウ。想像力が鮮明になるっていったのよ。だから私、私・・・」
話を聞いていたサキが俺に小声で囁いた。俺も懐疑心から頷きながら、アリアに懐疑心を解消するために確かめることにした。
「アリア様。ジンクラフト時に技術や知識もそうだが、作り手の深層のイメージが深くかかわると、俺もなんとなくわかったのだが、まさか、リリアの場合、トラウマも影響しているってことがあるのか。」
アリアは悲しそうな顔をしながら答えた。
「間違いなく、リリアの創ったシャイターンは間違いを犯した神の手先になるでしょう。それも、リリアの父・・・囚神となったウーノを救うシャイターンに・・・」
「それなら大丈夫なんじゃない。」
突然イースが話しに割りこんだ。イースはシャイターンを獄卒として、煉獄行かせればいいといった。
俺はガッツポーズをした。
「狂神、廃神、囚神と呼ばれる悪神たちのところで働く獄卒になれば、問題なくリリアの父親のウーノ様のお世話ができるよ。でも、脱獄させないように、教育する必要があるんだけど・・・プロに、そのシャイターン預けてみないかなリリア。」
「プロって?私も、このシャイターンと一緒に教育を受けれるの?」
「うけれるけど・・・立派な女神にはなれないかも・・・あまり進められない、な。それより、まず、奴隷呪を施した方がいいよね。」
アリアはシャイターンに奴隷呪を施した。そして、俺たちの創ったイフリートやマーリド、イブリースにも奴隷呪を施そうとしたが、サキが断った。
「アリア様。我らのイフリート、マーリド、イブリースには私たちが、召喚神として教育してみますわ。もし、無理な時は奴隷呪を施しますわ。なんなら、そのシャイターンも何とかしましょうか?」
すでに、サキは奴隷呪のやり方を覚えたようだ。さすがサキ。愛している。あれ、すでに俺はサキの愛の奴隷になっている?
でも、その不敵な笑みはどこかで見た様な・・・テラ様の笑みに見える?
でも、まさか一晩で?!
すでに、調教を極めた?
ありえるな!魔術の天才サキなら・・・召喚士としても一流だったから、ジンテイマーもできるかも。
俺は自分の目がハートになっているのがわかった。
それを察した、イースはテラにテレパシーで連絡をした。
「ママ、ここに調教してもらいたいジンがいるんだけど・・・そう。でも、かわいい女型のジンなのよ。・・・え、でも、私は卒業したのよ。・・・・うん、わかった。またね。」
イースはサキに事情を話した。
「任せますわ、イース様。私も、プロの腕前をもっと研究したかったんですもの。ウフフ。」
眠れる獅子を起こす事とは、この事だろう。イースの目に悪魔が宿っている。
次の瞬間、4体のジンたちとイースとサキは消えてしまった。しかし、ものの、10秒もかからないうちにサキとイース達は再び現れた。
サキとイースは肌が艶やかで、すこし、色気まで増したようだ。でも、4体のジンたちは・・・悲惨な状態と言えた。
俺は恐る恐る、イースに尋ねた。
「イースさん。どちらに行ってきたのかなー。」
イースはテヘペロしながら、ウインクした。
「ちょっと。時空のハザマでゲームしてきたのよ。ウフフ。」
「ご褒美ありがとうございます。ご主人さま。そして我らの創造主様。我らのお命はあなた様のものです。」
「あのー、どこの宗教か何かに勧誘した?本当に神の僕になっているよ。それに、ご褒美って??何?どういうこと?」
「ドSで鬼畜なイース・・・魅惑的な言葉ね。」
サキは俺の背中を指で刺しながら、土下座で服も来てない幼女姿の4体のジン達に、服と靴を与えるように促した。
俺はあわてながらシュレを召喚した。
「あれー。こんなところにいたんですかー。」
「こんなところにいたんですー。って、おい。急げ。」
「何したんですか。可愛そうに、すこし、顔も腫れてる。ああ、こっちにもミミズ腫れになってる。ケイスケ様も好きですよね。こういうプレイ。」
シュレは裸の幼女が俺に土下座をしている姿を見て、さすがに引いている。
「勘違いするなシュレ。イースがやったんだよ。テラ様の娘のイースがやったんだ。なんなら、俺が、幼気な幼女のかわりに身代わりになりたかったぐらいだよ。」
シュレはイースに深々のお辞儀をした。逆らってはいけないと分かったのだろう。そそくさと、幼女のジン達に服を与えた。
「ごめんなさい。小さな服はそれしかないのよ。靴は、ケイスケ愛用のコップに使っていたローファーでいい。丁度、4セットあるのよ。」
「あーあーあー。なんでもいいぞ。無ければ、靴下でいい。お前たちも気にするなよ。」
リリスが冷たい目で俺を見ている。気にしないでいよう。アリアはなぜか、頬が赤くなって羨ましそうにしている。
それを感じたサキもイースも同類の匂いを感じているようだ。
「アリアさんはジンクラフトマイスターだから、ジンの教育も知っていた方がいいんじゃない。よかったら、テイマーの技術を教えましょうか。」
「お願いしますわ。女王様。イヤッ。間違えましたは、サキお姉さまとイースお姉さま。」
はい!確定!!素質ありって。サキもイースも明らかにアリアの方が年上だろう。お姉さまって呼ばれて喜んでるんじゃない。
まさか、ビーナステイマーかも・・・でも、それいったら俺に返ってきそうだ。触れないでいこう。
リリアは自身が創ったシャイターンを抱きしめて泣きついていた。
そんな光景を悔しそうな見ている者がいた。
リリアや他のジンクラフト初級受験者に髪飾や腕輪を渡していた悪神ともいえる、煉獄に囚われた神々の支援者であった。しかし、リリアに限らず、ジンを創った者の中に支援者がいたこともあって、後に煉獄最大級の災害を起こすきっかけとなったのは後の話である。
それはともかく、俺たちは、ジンクラフト工房の責任者を交えて、一度、アンドロポリタンにいるシャイターン以上のジンの調査をした方がいいと助言をした。それに、今後は、髪飾と腕輪の使用には注意するように伝えた。
シュレはリリアがしていた髪飾はもちろん、配られたすべての腕輪と髪飾を回収した。
シュレはうれしそうに回収したアイテムを磨いていると、突然、顔色が変わった。
「主様。このアイテムの中、これだけ、残魂の形跡が残されています。ちょっと待っててください。・・・このアイテムやばいです。呪の類に変化するかもしれません。封魂させるか、新たなアイテムに合祀した方が良いです。」
シュレは言いながら少し笑っている。企んでるな・・・まあ、いい。どうせ珍しいアイテムがらみだからだろうから。
「封魂か・・・何かあるかな。」
「あっ!こんなところに、新品の無地の魔導書がある。そういえば、主様にいつぞやに、買ってもらったことがあるなー。神術用の魔導書が出来たらな・・・」
「小芝居はいいぞ。シュレ。どうせ、サキと取引でもしてるのであろう。そんなにサキの魔法バックの中身が気になるのか?」
サキはシュレを睨んだ。
「シュレは私が愛用している、レザー用のオイルが欲しいのよ。それも、ウルトラレアと呼ばれている黄龍の髭用油をね。少し分けてあげるから、神の残魂をその神導書に封合祀しなさい。使える神術を確かめるから。」
イースはというと、3体の幼体の上級ジンに腕立て伏せとスクワットをさせている。
こいつは、まさかジンで軍隊を作ろうとしているのか。
躾、調教というレベルではないな。
鬼軍曹による、地獄の特訓かもしれん。
でも、サキがさっきいっしょだったってことは・・・拷問も訓練の一環としてやっている可能性もある。どこかの国の諜報員にさせるつもりだよ。
まったく。羨ましい。
俺も腕立て伏せしながら、顔面を踏んでもらおうかな。なんて思っているとサキが、ムチを取り出し、ムチをしならせ、ひとはらい。そのまま、首を絞めた。
「く・る・し・い・た・す・け・て・・く・・だ・・・さ・・・」
騒ぎを聞きつけた神達の中で、純聖水や純聖火などの貴重なジンクラフト素材を持っていく神をサキは捕まえた。
見る見る、顔が青ざめていく。
「手癖が悪いですわよ。」
俺は首を絞められた神に事情を聴くと、見よう見まねで上級ジン・・・イブリースを創ろうとしたらしい。
事情を聴いたアリアは高笑いをした。
「イブリースを創る。万年早いわ、このカス。姿や神力を与えても、神に対する信仰心と知性を素人が簡単に組み込められるわけなかろう。」
唾を吐き捨てたアリア。それをふき取り、唾をなめる男神・・・お前もか。
才能あるあまってるぞ、アンドロポリタンの神々・・・首をしめられて、本当は喜んでいるんじゃないのか?と、うたがいたくなってしまった。
だからではないが、俺も後で、イブリースの創り方を個人レッスンをしてもらおうと心に誓った。
あくまでも、ジンクラフトマイスターを目指したいからである。
下心はないとは、言えないが、眼鏡の下に軽蔑するようなキツメの眼差しで、美人の綺麗な女教師から罵られたいと思っている男髪達が、いっせいに駆け寄り、個人レッスンをお願いしている。数十の男神達のこの光景が普通の事だと物語っている。
だから、俺はノーマルである。
アリアはサキに近寄り、ジンテイマーになりたいと、太いロウソクをサキに渡しながら、弟子入りを希望している。
まったくやれやれだぜ。
俺たちは静かに神殿に僕となった幼女ジン達と供に戻るのであった。
その前に一言。
「イース。幼女を椅子にするんじゃありません。お前たちも一緒に帰るぞ。」
「「「「イエッサー。」」」




