20 ジンクラフトマイスター(前編)
「ナイスですね。いいよ。いいよ。ハイ。ゆっくりこっちに向いて。笑顔サイコー。」
「もう恥ずかしい。キャハ。でも、こんな感じでどう。モー、目がエッチだぞ。おさわりはなしだぞ。」
シュレは分身して、アイドルシュレは7人に分身して、撮影を補助しながら、個別に撮影を進めていた。
アンドロポリスにある、とある楽園でのアイドルシュレの写真集作成のための撮影の一コマ・・・
すべて地球神アースの指示のもと、テキパキと順調に撮影を進めている。
目立つように、大声を張り上げて、周りでくつろいでいる神達の関心を集めていた。そのおかげで、だんだんにぎやかになってきた。
そのうちに、男神の中には、今、噂になっているアイドルシュレと気づく男神も出てきた。
ここぞとばかりに、シュレ達は歌とダンスを始める。
アースもアイドルシュレのはじけた様子を余すことなく撮影すべく、キャメラをなめるように撮りだめていく。
ミュージックビデオ撮影の熱気にほだされた神達は、ここぞというように、友神を呼びまくった。
歌い踊り終えたアイドルシュレ達は、軽く会釈をギャラリーにすると、すでに200神を超えるファンが押し寄せていた。
シュレ達は手を振りながら、ギャラリーたちと握手をしようとしたとき、突然アースがシュレ達を集め小声で話をした。
シュレ達は、衣装を素早く変えるように変身して、個人撮影に移った。
ギャラリーは変身に見入ってしまったのか、手に届きそうな、アイドレシュレの姿に喉を鳴らすように一瞬の静けさのあと、一遍した。
キャー。愛してるよ。こっち向いて。結婚してー。
ホントに熱狂的な男神を虜にしたような歓声が上がる。
しかし、シュレ達は軽くウインクしたり、手を振りながら撮影を進める。
アースは男神をよそに、情熱を傾けて、写真に収める。
小道具を用意する者に、レフ板を持つ者や、照度を確かめながら照明をあてる者。
休憩所の準備や化粧ポーチを持ちながら、衣装の準備をする者。
宣材チラシを配りながら、撮影の邪魔にならないようにギャラリーを整理する者。
軽いトークをしながら、握手をして、プレミアムグッズを売る者に影で名刺交換する者。
7人目のシュレの撮影が終わりに近づくと、じっと歓声を抑えられたギャラリーの男神たちに新たなチラシを配り始めた。
チラシには1泊2泊で行くアイドルシュレ誕生日会という名目のファンサービス会。
プレゼント各自用意してきてね。レアアイテムの価値により、シュレの個人アイテムをプレゼントいたしまーす。数量には限りがあるぞ。楽しみにしてね。
また、今回限定のグッズ販売もやっちゃうぞ。こないとそんそん。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
察しのいい神ならわかると思うが、ぼったくりファンサービスである。
あくどすぎるぞシュレ。優秀すぎますプロデューサー・・・アース様。
こんな話を聞いたのは、もちろん、閻魔コウキが俺にテレパシーで伝えてきたのであった。
「ケイスケ様。お忙しいところすいません。そちらにシュレとアース様一緒じゃありませんか?」
「おお、コウキ。どうしたんだ。パーティビーナス達は、まだ、盛り上がってるだろ。」
「まだ、2日目でそうなんですけど・・・夫神達の情報が少し上がってきたんですが・・・」
こんな感じで、アース様の行動が筒抜けだった。
「アンドロポリタンまでは一緒に来たんだけど・・・用事があるって別れたんだけど、取り合えず合流して、時月まで戻りるよ。」
「ケイスケ殿、あと一週間ぐらいは戻らなくても大丈夫ですよ。婦神達のオールは10日は堅いですから。それより、テラ様より、アース様の事をよろしくと言ってましたよ。」
俺は、アース様のお目付をすることに決定していたのであった。
何かトラブルがあって、アンドロポリタンまで、テラ様たち、婦神様が来たら別のトラブルが生れる予感がする。とりあえず、シュレだけは何とかしなければと思うのであった。
サキは俺とコウキが話しているのがわかったのか、イースとイリスと話しを始めた。
「アンドロポリタンの王宮の都に移れたのは、イリスの父上様が偉くなったんでしょう。御使いもいっぱいていいな。」
「王都は上級御使いと神しかいないよ。傭兵崩れの天使やジンと呼ばれる精霊もいないわね。アンドロポリタンの楽園地区に行けば神獣もいるけど。」
「シルキーポリタンより神口も多いね。それだけ星神がいるんだね。」
サキ達は、都会とも言えるアンドロポリタンの王都の雰囲気を満喫しているようだ。話に上がっているように、アンドロメダ銀河は星の数も、天の川銀河の2倍はある。一つの星を管轄する1神がいたとしても相当な数の神がいる。
それにしても、これだけの神がいても、神への救いが得られないのは不思議と感じたサキはくだらない質問をイースとイリヤにした。
「こんなに神様がいるのに、神に祈りが届かないと信仰を疑っちゃう人がいるんじゃない?」
「そうね。でも、地球みたい星の住人たち100億人の願いを1神にしても、いのり願い事が100億通り叶えられると信じるのは人間の傲慢ね。ましてや、神は唯一、1神しかいないと考えている者達がいたとしたらどうなるとおもう。不幸だから唯一の神が救済してくれっていったとしたら、他の神は助けることもできないんだよね。そして、余計不幸になって、神はいないなんて被害妄想持つんだよね。」
「そうそう。星一つにつき、1神以上いないと星がまわらないよ。まったく。それに、そいつらときたら、手を貸せば邪神や悪神扱いするんだよ。まったく。おちおち、神託もだせないよ。星の数だけ神がいるぐらいの心を持てないのかね。それに、一つの星に神が多くいても、今回は見放したくなったり、あえて見放すこともあるということを理解してほしいよね。」
サキはイリヤとイースに神様あるあるを聞き、納得するのであった。
俺とコウキとのテレパシー通話が終わっていたので俺も話に加わった。
「そうそう。それに、聖戦だーなんていいながら戦争をおこす人間たちがいるけど、神がお創りになった人間の本来の生きる目的を知っているのかね。他者との関わり合いもできないのに、ましてや神も住めるユートピアも実現は程遠いいよね。」
話しが夢中になりそうなところで、イリヤの実家の宮殿の宮使いともいえる上級御使いが、お茶を運んできた。
「お茶のおかわりをご用意いたしました。それに、リリア様、今日、初級のジンをお創りになられるご予定はいかがなされますか。」
アリアとリリアは習い事に出かける事をすっかり忘れていたようだ。しかし、リリアは母であるアリアの袖でつかみ、目配せをしている。アリアの目がキラーンと光った。
「そうだ、よろしければ、ケイスケ様。リリアと一緒に、アクアポリタンのジンを創ってみませんか。聖火が変われば、ジンもかわりますよ。」
俺の頭の中で?マークが浮かんだ。そんな俺を見かねて、イリヤが教えてくれた。
「サキは召喚獣をいくつか持っているけど、ケイスケはジンを持っていないわよね。神獣とまではいかないけど、初級ジンを創ってみれば。召喚獣としても役に立つわよ。」
イースも不思議そうに尋ねた。
「やっぱり、シルキーポリタンの聖火とアンドロポリタンの聖火の違いでジンも変るんだ。私も優秀で強い、イフリートかマーリド欲しかったのよね。でも、この際、ジャーンかジン、シャイターンどれでもいいからお使い魔神がほしいな。」
リリアは知ったかぶりをしたかのような口調で俺に教えてくれた。
「ジンクラフトマスターまではいかないけど、初級っていっても、下手なジンしか持っていないジンマスターよりは、いろんなジンが創れるんだからね。」
そういいながら、ジンの説明をしてくれた。
人間が楽園の土から創られるように、ジンは聖火から創られる。ちなみに天使は神光から創られる。ジンとは精霊の一種であること。また、ジンにはランクがあり、下級なものから、ジャーン、ジン、シャイターン、イフリート、マーリド、イブリースと呼ばれる。そのうちはシャイターン、イフリートは有害な魔獣として扱われることがある。
俺はおもわず、小さなジンマスターリリアに質問をした。
「ジャーンは育てると、マリードになるのかな?」
リリアは勝ち誇ったように教えてくれた。
「マジックアイテムがあれば進化するよ。でもジャーンから、イブリースまで進化転生強化するなんて途方もないわよ。でも、面白いわね。できないことはないわ。」
それをきっかけにリリアは夢中になって教えてくれた。
ようは、子猫が歩けるようになり、そして話せるようになって、そのうち、オムレツをつくり、肩もみをしてくれるような、猫のコスプレをするメイド娘になるようなものだった。
男のロマンを掻き立てるような壮大な野望を俺に抱かせたいのかリリア。そこまで言うならば、あえて言おう。それは男のロマンではない。それは男の壮大なる夢だと。
興奮冷めやらぬまま、俺はたちあがり、アリアとリリアに同行すると伝えた。
イリヤは両親神とゆっくり、つもりに、積もった話をしたいらしく、残るといったので、イースとサキとで、アンドロポリタンの王都にあるジンクラフトマスターの神殿に向かった。
俺は、若干、アース様とシュレの事が気がかりであったが、ジンクラフト工房というべき神殿の方が優先順位が高いと割り切った。
俺は、ごめんなさい。コウキ。なんかあれば、連絡くれよ。と念じるのであった。
転移石で移動をおこなったことで、あまり歩くこともなかったが、明らかに、王都の中心から離れたことによって、王都の景色も変わった。小高い丘にある楽園近くにあるジンクラフト工房は空気まで違っているようだ。俺たちを囲み包むように光が俺たちの神としてのランクを決めるようなオーラとなって見えてくる。
「ここの工房は特に清められています。純聖水に純聖火、純聖土、純聖風、純聖雷、純聖光などなど、ジンに限らず、各種精霊や天使も創れますよ。今、おすすめはピニャーです。」
「ピニャーって何?」
「ポケ◎ンのピカチュ◎の猫版みたいなもの何じゃない。」
サキはフーンとした顔で言い放つと、クラフト工房の神様は苦笑いをしている。多分、当っているだろう。ペットとして人気なんだろうな。
「それにしても、混んでるな。本当に予約しないとジンって作れないんだ。」
俺たちは、あまりにも多いい神様達の熱気に圧倒されていると、常連と思われる職神に声をかけられた。
「ジンを創るのは初めてなのか。おお。そこにいるのは、アリア様のところのリリアじゃないか。今日のジンの出来で進級出来そうか。」
「アリア母様も一緒に来てますわ。それに、ジンクラフトコンテストに向けて進級は絶対しますわよ。」
何か、俺たちの知らない世界が繰り広げられていたので、俺は、アリアに頼んで工房見学という名のジン創造体験コースをサキとイースとで申し込んだ。リリアは予約していた時間通りにジンを工房で創造している。指導教官と思われる、ジンクラフトマスターと呼ばれる神は採点及び指導をしながら、着々と子犬サイズのジンを創りあげていた。
しばらくすると、俺たちも、少し大きな工房の方に来るように、大声で体験工房の方に案内された。
少し大きな教室と言わんばかりの工房の教壇から、不敵な笑みをかける一人の人物が立っていた。
「そこのグループ。一番前に座ってください。前の方があいてますわよ。さあ、始めましょう。ジンの神秘を感じさせてあげるわね。」
教壇に立っているのは、細長く赤い眼鏡をかけたアリアだった。髪を後ろで結び、凛々しく、差し棒をもち、パンツルックのスーツを着こなした女神はどう見ても、イカした女教師だった。
「初めまして、ジンクラフトマイスターの女神アリアです。マスターアリーと呼んでね。はい。そこ。シャラップ!」
ビュッ!!ビュッ!!
チョークが後ろで指さしていた男神2神組の眉間にそれぞれ突き刺さる。後ろにたおれながら、あーあー。口から何か出てるよ。ご愁傷さま。
一気に楽し気だった体験コースの空気が極寒の地獄に変わった。
「体験とはいえ、命を創造するんだぞ。気を緩めるな!わかったら、返事をしろ。返事はイエッサーだ。わかったか。この◎ヤローども!」
「ハイ。イエッサー。プロフェッサー!」
工房体験という軍隊に入ってしまった事を後悔したのは俺たちだけではないようだ。
唯一の救いを求めるかのように、男神達は、黒板に書かれた講義内容とは別に、黒板に書いているアリアの後ろ姿を眺めている。というより、書いている時の腰の揺れをじっくり見ている。後ろ姿が最高と心の声が出てしまった男神もいた。
わかっていたが、そんな男神の両眼にも、チョークが突き刺さる。アーメン。
講義となると、昔の癖か、率先してサキが手をあげて、疑問を解消すべくように質問を繰り返す。実に内容の濃い講義となった。
そして、講義を終え、実践となるジンのクラフトが始まった。アンドロポリタン純正の純聖火をベースとしてジンをつくったのであった。
結果から言えば、サキがイブリース。俺がマリード。イースはイフリートを初心者であったが、創造してしまった。
だからなのか、上級者コースの工房から見学者が来たりと先ほどの講義とは一変して、ざわざわさせてしまった。何かまずいことをしたのか、周りの神から驚嘆の声が聞こえてきた。
「あのー。ジンたちは持って帰った方がいいですか?」
「本来、体験コースで創られたジンは低級な魔獣に近い存在だから野生に返したり、研究用にしたりするんだけど、知的生命体のような上級人型ジンの場合はそうはいかないのよね。」
「でも、こんなに可愛い幼稚園生みたいなジンと幼い獣っ娘のジンに、エルフぽい幼女精霊のようなジンは危険はないでしょう。」
「危険とかそういう問題ではないのよ。知性を持つジンには教育をうけさせる義務があるのよ。悪い魔神になったら困るのよね。」
そのとき、空気が読めないリリアがアリアのもとに駆け寄ってきた。
「アリアママ。出来たよ。私の最高傑作。魔女っ子に見えるでしょう。このシャイターン。」
アリアは頭を抱えながら、益々、顔が青ざめていくのであった。




