10 迷宮の卵 前編
デスゲームに隠された秘密
それは神柱となった御使い
デスゲームになっていたこの大地を
神のアイテムに変えてやる。
「大変!産れる!今にも産れそうだよ!」
「慌てないで!ゆっくり!大きく深呼吸して!」
「これぞ!まさにこれぞ神秘!」
俺たちは今、まさに神の御業を目の当たりにしている。
何が起きているかといえば、遡る事、13時間前のことだった。
始まりはいたって単純?ってことはなかった。
しかし、偶然にもある人物がトリガーとなったことには間違いなかった。
俺たちは悪魔たちが仕掛けたゲームというものを、乗っ取って攻略したことが封印を解くきっかけになてしまった。
「はーサバイバルバトルロイヤルもこうなれば一種のスポーツよね。」
「エリア限定時間ループって、やばいね。でも記憶や経験がそのまま生かせるって最高。」
「でも、13人目がいるっていうのはどうかな?」
「封印されている13人目が解放される条件って厳しいわよね。」
「そうそう。めったなことでこのルートを見つけることなんてできないだから。なんか秘密があるのよね。このゲームには・・・」
俺もそう思っていた。デスゲームなのに全員味方にして開催者である悪魔討伐していきながら、全員生き残るとかいう、完全攻略シナリオを網羅して、なおかつフラグ回収を完璧に把握してないと現れないなんて鬼畜すぎる。
でも、この条件ではまだ甘い・・・どうせ、悪魔が描いたシナリオにすぎないからな。っと思っていたのは俺だけではなく、女神テラも同じ考えだったようで、何回かこのデスゲームを進めるうちに、テレパシーを使いながら、ゲームアドバイザー兼監督のように的確に新たなシナリオでまだ見ていないエンディングを目指すゲーマーになっていた。
妻たちもスポーツ感覚で様々キャラともいえるデスゲームの主人公たちに憑依していたが、キャラクターたちの生い立ちや生き様が、奴隷と化した悪魔たちを従え調教するごとに情が移っていった。
そして、女神テラも俺もこのデスゲームに隠された真実がわかったのは13人目の封印された人物のおかげかも知れなかった。13人目は御使いともいえる人間であった。
俺は女神テラに尋ねるのだった。
「悪魔が行なう、このような各異世界を破滅に導いた種族最後の者によるバトルロイヤルの真の目的は悪魔にあだなすもの・・・神や天使を創ることなんですか?悪魔が自らを滅ぼす者を復活させる意味なんてあるのですか?」
女神テラは悲しそうに微笑んだ。
「地獄という名の牢獄を壊す者を誕生させるためよ。一部の悪魔に恨みをもたせ、仲間との憎しみとあらゆる情を背負わせ、その勢いのまま地獄を破壊させる・・・地獄の救世主を誕生させるシナリオなのよ。」
「まさか、地獄の王を現世に放ち、あらゆる地上を手に入れる計画。」
「そのまさかなのよね。私も悪魔が支配した世界の最後や唯一の生き残りの者達を戦わせるこの余興ともいえるデスゲームは知っているけど、この裏に隠された悪魔の計画は知らなかったのよ。ケイスケも参加した過去があるけど知らなかったでしょう。」
「知るはずもないし、それよりも既に何回かの輪廻転生をした経験で悪魔にさえ畏怖や恨みやその他の感情をもたなくなってしまっていた。それに弱い自分から脱却していたから悪魔達の存在意味を考えることもなかった。」
「でも良かった。今回はあなたたちがいてくれて、このデスゲームも攻略できたことで穢れのない御使いが保護出来て。これで地球の新たなる救世主も見つかったことですしね。」
そう言い終ると、地球神アースがまたひょっこりと女神テラの背後から現れた。
「ありがとう。ありがとう。神々も喜んでたぞ。それにいい稼ぎがが出来たしな。それは置いといて。それより、テラ、急ぎとは何ぞや。もしやその御使いの処遇の件か?」
テラは嬉しそうにアースに語り掛けた。
「アースにゃん。聞いて聞いて。地獄の破壊者となる救世主を地球に遣わしたいの。駄目ー?いいでしょ。いいでしょ。お願ーい。お願い、お願い。ねーいいっていってよ。お願いにゃん。」
二人だけの時に使うにゃん言葉に動揺したのか、地球神アースは慌てふためいて、テラの口を手で塞いだ。
「あーその件だが・・・観戦していた神々の中で・・・実は頼まれたんじゃが・・・」
アースがそういうと、俺の後ろにすでに4神が立っていた。
アースの狼狽ぶりに大笑いした神と笑いを堪えている神。そして、俺の妻たちとイリヤの3人に既に話をしていて、こちらのことにまったく興味がない神。そして、大泣きしながら土下座をしている神がいた。
どうツッコミを入れようか思案していたとき閻魔コウキが俺に耳打ちした。
閻魔いわく、まずはデスゲーム会場となっているこの異世界を、まずはどうにかして場所をうついた方がいいとの助言から、俺は仕切り始めた。
「とりあえず、俺たちはハネムーン中なのでとりあえずこの状況が手に負えません。一旦場所をかえましょう。いいですよね。」
空気を読んだアースは冷静に大声を張り上げた。
「コウキ手伝え。まずは、このサバイバルバトルロイヤルとなったこの世界を、迷宮の卵にするぞ。」
コウキはすかさず展開していた異世界制御空間神術を新たに貼りなおした。
「パラメータ値をミニマムに。フィールドをPMに圧縮。解析を並行して通信を制御・・・」
コウキがアースに向かって大きく頷くと、屍と化した悪魔たちが光り輝く。コウキは針術といえる祝詞を唱え始めた。ゲームのフィールドになっていた大地から空に降り注ぐ反重力の雨のような7色の光の粒が吸い上げられていく。
7色の光の粒雨が止んだとわかると、一旦、アースが別の祝詞をあげた。真似するかのように、2神もその祝詞をあげた。
そのとき、落ちなかったカビや油汚れが大地から強力な泡洗剤で落としたように分離をして空高く舞い上がった。
そして、ゆっくりと空中の一か所に集まり出した。残りの2神も別の祝詞をあげた。
光輝いた悪魔や魔物の屍は魂とわかれ始めた。屍や躯は大地にとけた。魂は紫の光を放ちながら空に舞い上がった油のような塊を結晶のような物に変えていった。それは大きな魔結晶のような物になっていった。
その光景を見ながら女神テラは俺たちに指示を出した。
「良いころ合いね。あなた達は12名と1使徒を保護して頂戴。」
俺とサキは悪意の泡と化した大地から逃げまどう12名を保護した。正確には肉体は大地に溶けて、霊魂だけを救出した。
イースとイリヤは黒く染まりかけている翼を浄化しながら1使徒の御使いを天に導くかのように亜空間に連れてきた。
大地から吸い上げられた石油のような黒の粒々の泡が、光り輝く黒い水の大きな結晶の塊となった。
素の塊が大きくなりすぎて大地まで届いたとき、黒い結晶がではじけ飛んだ。そしてみるみる大地を覆った。空気中に飛散していた悪意も雨となり、雷となり嵐になっていった。
亜空間でサキは祈りをささげ、女神イースとイリヤは御使いの額に手をあてながら治療し始めた。
女神テラは助っ人となる女神や婦神達にテレパシーを送っていた。
そして、次々に神々や女神達が現れて祝詞をあげだした。
俺は女神達のネットワークを新ためて関心してしまった。
女神テラは俺に今の状況を説明してくれた。
「この大地の大きさから約12時間くらい嵐が吹き荒れるでしょう。そして、憎しみや悲しみ、そして哀れみまでも含んだ大地から2体の魔人が生まれるのです。いわゆる地獄の園で生まれるリリスとアダムといったところです。リリスとなる者は封印されていた13番目の使徒と御使いとともに新たなる世界の始祖となるでしょう。そして、アダムは迷宮の卵の守護者にさせるのです。」
俺は疑問に思っていたことを聞いた。
「迷宮の卵っていうのは何ですか。それに、アース様についてきた神々についても教えてください。」
怪訝そうにアースの方を向くテラは悔しそうにしゃべった。
「封印していた御使いは地球の守護天使にしようとしていたが・・・アースが連れてきた火星神マルスと木星神ピテル、土星神サタン、そして土下座していたのが金星神エヌス。それぞれが12名の霊魂と1使徒の御使い目当てなのよ。特に金星神エヌスはあの御使いの主だったようね。」
俺はなんとなく感づいてしまった。
「もしかして、金星にもかつて人間が住めるような楽園があったんですか。」
「少しの間ね。というより、一部の精霊たちが住む楽園がね。しかし、悪意が蔓延して守護していた御使いが卑劣な罠に落ちて囚われてしまった。金星はバランスを崩したように地上では住めない環境に陥ってしまったのよ。今は地の底に住まう者達だけ・・・他の土星にしても火星にしても同じようなものよ。」
「まだ太陽系には楽園があるんですね。そうだハネムーンついでにいろいろな楽園にも行ってみようかな。話しがそれた。神様たちが今作っている迷宮の卵ってなんですか。」
女神テラは説明を躊躇したとき、後ろから現れた婦神がテラの肩を優しく抱いた。
「初めまして噂は聞いているわよ。ミコトさん。迷宮の卵について知りたいの。いいわ、火星神の婦神であるフォスが直々に教えてあげる。」
「フォス様、私は今、ケイスケと呼ばれております。お見知りおきを。それにしても迷宮の卵っていうのは重要なものなんですか。」
女神フォスは俺の目の前に人差し指を立てながら左右にふった。
「チッチ。迷宮の卵なんて神の遊び道具よ。っていうか、本来は現世における者達の進化の促進と星の安定化が目的なんだけどね。生命はときに怠慢になり退化するのよ。そして星も生命体の影響で厄災が増えるのよ。そんなときに迷宮の卵があると、あーら不思議、生命たちは必至で生き抜くようになるのよ。それに地震や異常気象を軽減させる効果もあるとしたら、使わない手はないでしょう。」
「まったくわかりません。」
おれは正直に答えた。フォスはもっとわかりやすく話してくれた。
「もし、火山の噴火が地震が頻発するような地域があったらどうする。もし、星のエネルギーを少し吸ってくれるアイテムがったとしたらいいよね。それが迷宮の卵よ。迷宮の卵からダンジョンが産れるのよ。設置する場所により塔になったり、迷いの森になったり様々になるけど、その特徴はダンジョンを守護するダンジョンコアとダンジョンマスターによるけどね。一国ともいえるダンジョンの王と王妃、楽園に住むアダムとイブ、そんなところよ。」
長々、休んでしまってすいません。
今後とも少しづつ書いていきますのでよろしくお願いします。
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