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天使の言の葉  作者: 鈴呂
6/15

6 Aja pin

 

 慈雨と璃子の二人は手を繋ぎ、カフェへと入店する。

 カフェの名前は【Aja pin】 

 依頼主の璃子は俯いたまま恥ずかしそうにして、時折、慈雨の方を見る。 

 店内の照明は少し薄暗くアジアンテイストな赤を基調とした内装、足元は真っ黒な板で血が一滴落ちても気が付かない。 

 そこへ、ここのカフェAja pinのマスターが慈雨に気がついた。

「仕事か?」 「ああ」 

 多くを語らず二人は会話を交わし慈雨と璃子はカウンターの席につく。 

「お客様 ご注文はあとでよろしいですか?」その意味を璃子は察っし頷いた。 

「でわ、お客様は、こちらの席へご案内いたします致します」

 璃子は立ち上がり案内されたのは、カウンターに座っている慈雨から少し離れ、璃子はソファー席へと移動した。 

 店内は、ピアノのBGMが流れ、案内されたソファー席で、璃子は一人で彼氏を待つ。 

 すると、璃子のスマートフォンが鳴。

「もしもし。 そうAja pinってカフェ」 

 電話を切ると同時に入口のドアが開。

「いらっしゃいませ お一人ですか?」

 現れたのは、一見優しそうな顔の瘦せ型のサラリーマン 別れたい男はこの男 


「いえ 女性の連れが先に着てると思うのですが」 

「お名前は?」 「赤坂です」 「こちらへどうぞ」 


 汗みづくな男は、マスターに璃子の坐っているソファー席へと案内され、汗を拭きながら璃子と向かい合って坐る。マスターは注文を受け立去りその場の空気は重く息詰まるといった感じだ。

 注文の品のアイスコーヒーが机の上に並べられ、男はコップを手に取り喉が渇いていたのか、一気に飲干す。「やっぱり気持ちはかわらない?」目線を逸らし璃子に男は問う。 

「私、他に付き合ってる人がいるの。 どうしてだかわかる? あなたに失望したから」 

「そして、今あそこのカウンターに居るのが彼よ」 

 男は、カウンターの方を見て、慈雨と目が合うが、直に目を逸らした。 

「彼は、ジェネレーションフィナンスの御曹司で、あなたなんかが勝てるような相手じゃないわ」 

 男は、俯いたまま肩を震わせる。


 璃子は男を睨み―――もう、二度と私に近づかないで。


 男は、その言葉に顔を上げ言い知れぬ眼差しで璃子を見る、眼つきが豹変し、一瞬其の場に緊張感が走るが、其の事に慈雨は気づいていた。 

 再び男は俯き肩を落した。


「……わかったよ」 

 魂の抜けた様な男の返事、そして男は鞄を持って立ち上がり店を出ていった。

 男が立去った店内、璃子は安心したかのように背伸びをして 

「あースッキリした有難う貴方のおかげよ、これで奴も諦めるでしょ。 ざまあないわ」 

 慈雨は、納得のいかない顔でカウンターに坐っている。


【悦に入る】


 慈雨は、スマホを取り出し電話をする。 

 《はんあーい どうしちゃったの? 慈雨のらぶこーるなんてめずらしいじゃない》 

「べべ姉 スマンが今回、【after】がいる」 

 《あら、じゃあ朱李ちゃんに言っとかないと、今日はお店来なくていいって。わかったわ慈雨》 

「あ、べべ姉、それと今晩、逢わせたい奴がいる」 

 《逢わせたい? 喜びぃぃ もしかして? カノジョー しっかり髭剃っとかないとぉぉ》


 通話強制終了。


 電話を切った慈雨は、璃子に近づき警告する、意外にあっさり過ぎて気に入らない。あの眼は、まだ何か企んでると思いbebe姉の所に慈雨は連絡を入れた。


 解散。

 

 夕暮れ時だというのに炎暑、蝉時雨を聞きながら慈雨は【しどけない】様子で塗装屋の住処へと歩いて帰る。 帰り道、慈雨の脳裏に少しわだかまるもの

『そういえば、藍唯のやつ飯食ってなかった』 

「すっかり、忘れてたぁぁぁ」全速力で走る慈雨。 

 帰りにコンビニへ寄り適当に弁当等々を購入して塗装屋に辿り着いた。 

 ドアを開け入口で息を切らせコンビニ袋を差し出す。

「藍唯……すまん……飯!」


「おお 慌てて入ってくるから誰かと思ったら慈雨か」

 慈雨は、顔を上げると塗装屋の代表がソファーに靠れ坐っていた。


りゅうさん?」


 いい匀、劉の目の前のテーブルには幾つかの料理が並べられていた。劉はその料理を箸でとりビールを飲みながらご満悦で食べている。 

「劉さん、その料理は?」 

「これか? そこの台所にいる藍唯くんが作ったものじゃよ」 

 慈雨は、汗みずくのまま全身に力が抜け立ち尽くす。そこへキッチンから藍唯が料理を持って出てきて慈雨と合い交わす。


「ただいま」


 藍唯は、顔を真っ赤にして立ち尽くしてしまう、どうやらいけないことをしてしまったと藍唯は思い込み俯いてしまった。それを察した慈雨は、通り縋りに藍唯の頭を撫で礼を言う。


「ありがとな」


 一瞬、慈雨の顔を見上げ藍唯は、恥ずかしそうに其の料理をテーブルへと運んでいった。


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