自然界が産み出したキメラ
複数の動物の身体を併せ持つ、伝説の動物――キメラ。
だが、これは断じて妄想の代物などではなく、現在、この地球上に生息している、れっきとした動物なのである。
まずそいつは鳥のような立派なくちばしと脚、平らで幅広い尾を持っている。全身が毛でごわごわと覆われており、足には凶悪な“かぎ爪”が装備されている。
かぎ爪と聞いて、皆さんは何を想像する?
自分は太古に生息していた中型の肉食恐竜――ヴェロキラプトルが思い浮かぶ。有名な恐竜映画に何度も登場し、登場人物達に次々と襲い掛かる、あの恐竜である。
ヴェロキラプトルも足の親指(?)に立派なかぎ爪が装備されている。これは大型のナイフのようなもので、獲物の肉を深々と切り裂く代物である。
――おっと、話が逸れてしまった。
このキメラのかぎ爪だが……、ヴェロキのような、切り裂くだけの“生やさしい”ものではない。
――“毒”
そう、毒だ。
こいつのかぎ爪には蛇の毒牙の如く、毒が装填されているのだ。こんなものを突き立てられたら――。
あ、言いそびれてしまった。
基本、このキメラは水辺に生息している。その環境に適応したのか、足の指の間には水掻き用の膜がある。
最後にこのキメラの繁殖手段を教えたいと思う。こいつは卵を生んで、子孫を増やしていくのだ。
――皆さん。
このキメラの正体がわかったであろうか?
爬虫類の特徴を持つ哺乳類か、
あるいは、哺乳類の特徴を持つ爬虫類なのか、
はたまた部分的に鳥類なのか、
そもそも、既存の種族の枠に収まるのか……。
このキメラの正体は一体――!
彼の名前は「カモノハシ」。
とぼけた顔が可愛い奴である。