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すわんぷまん  作者: SAME
27/33

俺がふたりいた話(1)

 今までの事を話たり聞いたりし、事情は把握できた。

 学校帰ってすぐのドタバタで左はコーラしか口にしていないという。朝持ってきたカップめんは譲ってやるか。

 明らかに面白半分で聞いていた丹野が口を開いた。


 「…で、どうすんの?ずっとここに住むのか?」

 「んなわけねーだろ」「んなわけねーだろ」


 住めそうだけれども!それ望んでいるのかお前は。

あー、しかし早いとこ解決しないと宿無しになるのは確実なんだもんなぁ。


 「…叔父さんにあんなメール送ったのは拙かったかな」

 俺の後悔を左は強く打ち消した。


 「そんなことねーって。昨日の今日でお友達なんてあるわけないだろ。つーか昨日ですらもないし」


 おお、さすが俺!自分とはいえ、間違いじゃないと言われると安心するわ。だよなー、嘆いてるくらいなら現状何とかしないとな。


 「…で、どうすんの?」

 そんな事を言いながら丹野はえびせんの袋を開けている(何処から持ってきたんだ)。その白け具合にイライラしつつも、俺は高らかに宣言した。


 「当然!白い奴らの基地に乗り込むんだよ!」

 「そうか、右は方角知ってんだもんな。探しに行こうぜ」


 「方角だけでわかるわけねーだろ」


 くそ、そうやって水を差す・・・・・・!!


 「うっせーなさっきから!そういうお前はいい案あるのかよ」「うっせーなさっきから!そういうお前はいい案あるのかよ」


 丹野は嫌味な笑みを浮かべてえびせんを無造作につかむと、指揮棒の様に俺たちの顔の前で振った。


 「ハン、お前らは何考えてるか知らんが、その基地探しは黒い集団に任せればいい事ぐらいは分かるぜ」

 「なんでだよ」「なんでだよ」


 「だーからバカなんだ。だって騒ぎになってんだろ?黒だか白だかしらねーが、そんな秘密結社みたいな奴らなら自力で何とかして収拾を図ろうとするさ。こういう場合、連れてかれた人間は証拠隠滅ってことになるけど…ま、ここまで大事になったんなら無事回収されんじゃね?」

 「…」「…」


 まあな、一理ある。…いや、しかし!!


 「俺の事だぞ!人任せにできるか!」「ううむ…隠れてるのが安全ってことか」



 ん…?



 「…おい、何もしないつもりか?」「…おい、何かやるつもりか?」


 予想外にあべこべのセリフが聞こえて、俺は焦った。左も意外そうな顔をしている。いやいやいや、ここは俺に賛成するとこだろ…?

 

 「いや待てよ左、冷静に考えろ。お前このまま陰に隠れてやり過ごす気かよ。どっちの陣営が勝ったって、俺たちがどういう境遇に置かれるかわかんねーんだぞ。乗り込んでさ、自力で何か切札的なものを手に入れて交渉するとかしないと」


 「だって、変にクチバシ突っ込んで余計ヤヤコシイことになったらどうすんだよ。それに奴ら強いぞ。ほら、掴まれたとこ痕になってる…居場所だってわかんないし、今は安全を確保する方がいいって」


 「安全安全って、いつになったら安全になる?田中にも馬鹿にされてんだぞ、ムカつかないのかよ」


 「田中の話はホント腹立つし、ムカつくのはムカつくけどさ…むしろ何で右はそんなにムキになってるんだ。何焦ってるんだよ」


 「焦ってるだと……!」


 思わず殴りかかろうとしたその時、後頭部に衝撃を受けてしゃがみ込んでしまった。ちらりと前を見ると、左も同じように頭を抱えている。そうして目の隅に見えるは丹野の冷ややかな顔…!


 「ってーな!何すんだ丹野!」「ってーな!何すんだ丹野!」

 「狭い部室で大声あげてるからだ。ケンカすんなら出てけや、ボケ。暴れて物壊されたんじゃたまんねーんだよ!」


 当然の物言いに、ぐっと言葉に詰まる…ここで追い出されたら本当に宿無しになってしまうし…くそう。いや待て、そんなことより…。


 俺は無言でもう一人の俺を見た。向こうもこっちを見ている。その目はちょっと信じがたいものを見ているような感じで…きっと俺もそんな顔をしているんだろう。




 左と俺の意見が違った…。




 知っている事は教えたよな。向こうからも聞いたはずだ。知らない情報はないはず。


 情報は一緒。今いる部屋、状況も一緒。思考方向だって一緒。


 なら、俺なら、俺なら 同 じ 結 論 になるはずだろう?


 同 じ 人 間 なんだから。


 なんでだ?ていうか、左と言い合いできてるじゃないか!!なんで?!

その時、唐突に俺は、叔父さんのセリフを思い出し、背筋が寒くなった。



 ―状況を変えるっていう一時しのぎじゃなくて、

        これからの経験や考え方を変えていくしかないなぁ―



 「変わった」 ってことか。


 田中の件も闇討ちの件も、話には聞いていても、その時の心情を真に体験はできない。

 その逆も同じ…白軍団襲撃の衝撃だって、俺なりに予想はつくけど真ではないのだ。


 その違いがスタンスの差を生んだ?

 このままじゃ、完璧に合わない状態にもなりかねんな…。


 しかし、これじゃあどちらが『太一』としての成…


 いやいや、考えるのはやめとこう。それは今じゃない。まずは左の説得だ。俺は一度冷えた体温がまた戻るのを待ってから、言い聞かせるようにゆっくり言葉を出した。


 「まずは俺から話すな。つーか、お前も気付いただろ。もうズレがきてんだよ、これはここに籠っていようが暴れようが変わらないわけ。

 なら、できる限り動いて、一片の悔いなしにしてから最終的な結末迎えた方が、なんぼかマシってなもんだろ」


 「…そうまでいうなら、まともな案あるんだろうな」

 左も思うところはあるらしく、仏頂面のまま返事を返した。

 「ただ町の中ウロウロしてたって無駄足だろ。家に帰って叔父さん達と協力するか?それとも……あ、柿崎か」


 思いつきはまだ一緒らしい。

 「そうそれ。ちょっと電話してよ…その後、叔父さんにも連絡とって…」

 「ウザってーなぁ!」

 俺の話を丹野がイラついた口調で遮った。


 「それ一台のケータイでやんの?いちいち時間かかんだろーが!俺の貸してやるよ。終わったら指紋消して返せ」

 「おい、あぶっ…顔めがけて投げつけんな!!」


 …まぁ、一度に連絡取れれば早いよな、そりゃ。しかし、丹野のスマホを借りるのはいいけど、叔父さんが知らない番号からの電話に出るだろうか?出るか。意外とそういうの気にしないタチだ、あの人。

 案の定、番号を押して何秒も待たないうちに、低い声が聞こえてきた。


 『…はい』

 「よ、叔父さん。殴られたとこ大丈夫?……なんか騒がしいけど…またどこか攻めてきたの?」

 『太一!どっちだ、っていうか、今どこだ!皆心配しているんだぞ』


 いや…そっちの方が心配だよ。

 電話の向こうの方では、色々な破壊の音が聞こえてくる。怒鳴り声も聞こえるし…一体なにが起こっているんだか。


 柿崎に電話している左が、通話口をふざいで振り返った。

 「おい右。やっぱり変な車と変な奴らがいるってよ。家の向かいに堂々と停まってるって」

 「したら、クルマ用意しとけって言っといて」


 そもそも柿崎がバイクを買ったから、俺も欲しくなって金貯めていたんだよな。デジカメ買った残りはあるけど、また貯め直しだよ。いっそ、これを機会に写真を趣味にするか。


 今の会話が聞こえていたのかどうか、叔父さんはちょっと焦った声を出した。

 『ひょっとして、そっち2人揃ってるのか?』

 「ええと、そっちは、なんだ、目途はついているの?棚橋さん奪還に向けて動くんだろ?」


 『予定は未定だな。こっちじゃ黒服と町内会の人たちが乱闘してるんだ。部下に調査させてるらしいけど、今の所連絡もないようだし…動くのは先になりそうだな』


 「そうか。じゃあ、今から10分後…旭町1丁目のクリーニング屋、知ってるだろ?そこに4~5人道路から見えない位置に、何か移動できるもので待機できるか?白服さんに基地へ案内してもらえるかもよ」


 叔父さんが何か言っていたが、構わずに通話を切る。

あれだけ言えば俺が何を考えているか見当はつくはずで、それなら絶対そこにいてくれるだろう。(ていうか、乱闘ってなんだ?まじで何やってんだ)

 下準備完了!簡単にシャツでスマホを拭いて丹野に投げ渡すと、丁度電話が終わった左の方を見た。


 「とりあえず…分かるだろ?俺が捕まるから。そしたら後追って救出頼む」

 「ふーん、まあ、一番確実で安全かもな。俺が後つけるの失敗しても、叔父さん達もいるし」


 「なんだ?わざわざアジト見つけるために捕まんの?」

 更に念入りにスマホを拭いていた丹野が顔を上げて、茶々を入れてきた。


 「文句あんのかよ。それに大人しくしてるつもりもないし…隙を見て内部情報探るさ」

 「ほぉお?そう上手くいくかねー」


 うるさいな。綺麗になったスマホを満足そうにポケットに戻し、奴はにやりと笑う。


 「よーし、俺も張ってやる」

 「はあ?」「はあ?」


 コイツまたそういう事を。

 「んだよ、お前はいいからギター弾いて飯食って寝てろや」「んだよ、お前はいいからギター弾いて飯食って寝てろや」


 「なんでそこで気を合わすんだよ、おちょくってるのかボンクラが。おら、旭町1丁目だろ、さっさと行けよ。10分以内に始めんだろ」


 とか言いながら立ち上がる素振りもみせず、丹野はカバンをごそごそいわせ始めた。確かに、もうそろそろ出発した方がよさそうだ。


 「ああ。で、お前は?」「ああ。で、お前は?」

 「後から行く」


 話聞いてんのかコイツは、後からじゃ間に合わないだろ。来るのか来ないのかどっちだよ!まあいい、あんまりコイツに構っている暇はない。


 「じゃー、後?でな」「じゃー、後?でな」

 「おら、コレ持ってけ。丁度余ってたし、行きながら食えや」


 丹野はそっぽを向いたまま、コンビニのおにぎりを2個投げてよこした。



左は白に襲われるまでは日常状態だったので、ヤバイのはわかるが隠れていれば済むという考えに寄っています。『自己』についてなんて、そこまで考えてもいない。

この点、今回書けなかったのでここで捕捉です…。

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