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すわんぷまん  作者: SAME
25/33

1回の張り込みから(4)

 黒服たちが頼んだピザは5種類もあって、大の男7人(当然、俺入れて)で分け合ってもボリュームたっぷり、お腹も大満足だった。いいね、こんな一度にいろんな種類の食えるなんて、めったにないぜ。

 コーラを飲みつつ腹休めをしていると、黒服のスマホが再び音を立てる。男はうるさそうに画面を見た後、機械を耳に当てた。


 「はい。さっきの事件の件は……は?すぐに家に来い?…今ちょっと離れてるんですよ。そうですね、1時間は…え?…わかりました、40分で。ええ、ええ、急ぎますよ」


  通話を切った後、黒服がしかめっ面をこっちに向けてきた。

 「お母様が、大至急、家に来いだとさ」


 あらら、またか。

 こう何度もお気楽スナック感覚で電話を掛けられちゃあ、たまったもんじゃないだろう。母さんもあれで図々しいとこあるしなぁ、きっと母さんの頭の中じゃ黒服は便利屋さんランクになってるよ。

 「すっかりお友達じゃねーか…それじゃ、人探しはどうすんだよ」


 「まず家に行ってからだな。ヒステリックだったから何かあったんだろう」

 男は立ち上がって、スーツの皺を伸ばした。他の黒服たちも出発の準備を始める。


 …家か。まっすぐ白集団の基地に行ってくれるなーんて、やっぱ甘かったか。撤収だな。

 一緒に家に戻っても『左』と鉢合わせするだけだ。俺はできるだけ不自然にならないように、黒服の一人に声をかけた。


 「あのさ俺学校に忘れ物あるんだわ。家行く前にさ裏門で降ろしてくんない?後は自分で帰るから」





 黒服達の車を見送った後、コン部へと向かった。さすがに5時も過ぎているので校舎内は静かで人影も見えないが、体育館や音楽室からの部活動の物音が響いてくる。暗いろうかはどこか異世界に通じる道を歩いているかのようだ。

 部室の中は出た時のまま…丹野のギターケースもそのままだ。とりあえずテーブルの上の本を片づけておいて、PCの電源を入れる。何か進展はあったかな?


 「お、きてるきてる」

 このメールは…やっぱり左からか。闇討ち事件には驚いているだろうなぁ。


 『title:叔父さんからの伝言

  仲間は、棚橋さんとこの婆ちゃんでなく奥さんだった。

  今日、白い奴らが来て、そのうちの一人を連れてったそうだ。

  宇宙人だってさ。

  それより、金全部下ろしてんじゃねーよ。

  ちゃんと性能いいやつ買ったんだろうな?後で見せろ』


 へぇ、婆ちゃんじゃなかったのか。ということは、奥さんの片方を婆ちゃんが面倒見てたんだろうな。

 ふぅん。次のメールは…。


 『title:

  田中の手引きで、白い奴らが乗り込んで来た!

  完全に俺を狙って来てやがる。

  なんとか逃げて、柿崎に靴借りた。

  今の時点で柿崎の家は安全だけど、すぐに手がまわるだろう。

  だから別な場所を探して隠れる。お前も気を付けろ。

  ケータイは俺が持ってる。連絡はこっちのメールへ』


 「はあ?!」


 思わず声を出して、画面に食いついた。


 送信時間は…あ、俺ピザ喰ってた頃じゃん。前のメールから30分も経ってないぞ?ていうか田中の手引きって、なんだそれ。


 俺は、ふと、『黒服達はネットで情報を得たんじゃないか』と叔父さんが言っていたのを思い出した。


 ここ最近、やたらに近くにいたアイツ…本当の俺がどうとか訳の分からんことを言っていた…そうだ、最初にネットで画像が出回っているという話をしてきたのも奴だ。…アレ、まさか奴が撮ったんじゃあるまいな。そうやって俺らの反応を観察していたんじゃないだろうか?


 …考えすぎか?


 ま、まあいい、次のメール…と。タイトルがもうヤバいんだけど。


 『title:絶対家には戻るな

  白い集団に襲撃された。

  家はガタガタ、姉さんは足をひねって俺も2~3か所殴られた。

  左はなんとか逃がした。家にきていた棚橋さんも無事。

  被害が被害なだけに警察も出動して大騒ぎだ。

  事態が収まるまでこっちに戻るな』


 おい。大変なことになってるじゃん。家がガタガタって。白の方が狂暴だったのか…。ヒス入った母さんの電話って、こういうことだったのか。


 のんきにピザなど喰ってる場合じゃなかった。何、この展開は。張り込みの苦労がパーじゃねーか!…いや、たしかにロクな成果は得られませんでしたが。


 ま、まぁ上手く黒集団から逃げられただけでも良し、だよな。左も無事。


 ポンと電子音が鳴って、新しいメールが表示された。叔父さんからだ。


 『title:要連絡

  なんで黒連中と一緒にいたんだお前は。

  もうバレバレなんで、お前だけでもこっちに合流しろ。

  黒いのが迎えに行くと言ってる。

  このメール見たら返事をくれ。後、電話に出ろ』

  

 そうだったー!母さん、黒服連中を家に呼んでたんだったー!!


 そもそも、なんでだよ!今朝闇討ちしてきた人間だぞ、なんで信用してんだよ!…いやいや、コレ本当に叔父さんか?白いのか黒いのにケータイ奪われたとかじゃないだろうな。


 待て、落ち着け…。


 叔父さんは俺がケータイを持っていると思っているし、左は電話に出ない。両方と連絡が取れるのは俺だけってことになる。叔父さんとも一度話をしたいんだけど、コレが本人かどうかわからん上に、情報が白か黒に流れるのは確実だろう。


 となると、やっぱ左と合流するのが先だ。けど、すぐに連絡つくかな…。


 『title:

  今どこだ?近くならConBに来れるか。

  動けないようなら無理するな。

  叔父さんからスゲー数の電話が来てると思うんだが今は無視していい。

  とにかく連絡くれ』


 送信。

 左以外の人間がケータイを持っている事態も考えて、あえてギターコードで入力した。俺がおぼえてるくらいだ、アイツも覚えてるだろう。しかし、大丈夫か…返事は来るだろうか…。

 モニターとにらめっこをして約10分、受信の音が鳴る。


 『title:

  OK、そっちに行く。5~6分で行けると思う』


 よし。あとは、叔父(仮)の本人確認、っと。


 『title:叔父さんなら答えられるだろう

  俺の親父が頭までつかった湖は?』


 左の返信と違って、やけに早くメッセージが返ってきた。


 『title:

  湖には行ってない。ついでに原因のボール蹴ったのはお前』


 ……本物か。


 母さんも叔父さんも黒組織を利用することにしたみたいだな。(母さんの場合は突っ走った結果、のような気がするけど)でも本当にそれでいいのか?白も黒も結局同じことやってるじゃねーか。大人しく帰るか家ボロボロにするかの違いだけだろ。


 『title:

  はっきり言って信用がない。

  大体、俺が一緒に居たのは捕まったからであって、

  無事逃れることができたのは、

  俺が2人いることが知られていなかったからだ。今の状況は違う。

  バレてるんだろ?大体、朝っぱらに乗込んで来た奴らだぜ。

  そんな奴らの迎えの車に乗って、途中で気でも変わられたら?

  それこそヤバイだろ。それを勧める叔父さんの考えも信用できない。

  だから、俺の保護はどうでもいい。

  そっちはそっちで事件解決してくれ。俺は俺自身で動く。

  後、もう高校付近にはいないからな。張ってたって無駄だぞ』


 送信ボタンを押して、一息ついた。


 あー、叔父さん怒りまくるだろうなぁ。長々と書いたが、早い話「テメエ信用ねーんだよタコ」と言ってるのと同じだし。実際そうなんだけどな。


 これで本当によかったんだろうか?…いやいや、この件が片付いたところで、その後どんな目にあわされるかわからんし。黒だって当事者の加害者なんだから。はぁ、すっかり疑り深くなったもんだ。


 隣の部屋が開く音がした。左がやってきたようだ。

とりあえず、これからの事を相談しなくては…最低限自分の身は自分で守らないと。


 「おう」


 「よーす……うわっ丹野!!」


 お前か!


 何の気なしに振り向いて、ずっこけそうになった。俺の反応に気分を害したのか、ヤツの顔があからさまに不機嫌になる。

 「んだよ、俺の部室だろ。文句あんのかコラ」

 「ないけど…今まで残ってたのか?」

 「まーな。ギター置きっぱだし、それに」

丹野が続きを話そうとする前に、押入れの戸が開き左が入ってきた。


 「よーっす、……うわっ丹野!!」


 「…はー、ムカつくわ。マジお前らムカつく。しかもお前が内緒で隠れるっつーから、部室に近寄んないようにしてやったのによ、結局2人揃ってるじゃねーか。いい加減にしろこのスカタンコンビが」


 「色々事情が変わったんだよ」「色々事情が変わったんだよ」

 「家でやれや」

 「襲撃された」と左が眉間にしわを寄せて言い放った。「あいつら怖えぇって。有無を言わさず乗り込んで来たぞ。逃げるので精いっぱいだった」

 「ま、そういう訳だ。これから俺会議を行う。悪いけど荷物持ったら帰ってくれ」


 部屋提供の恩人には冷たい言い草だったかもしれない。

 だがしかし、丹野はその場から動かず、いつもの人を小ばかにした笑いを浮かべた。

 「なんでよ。面白そうじゃん、俺も混ぜろ」


 「あぁ?!」「あぁ?!」

 「お前らさぁ、見た目2人だろうが残念なオツムの中身は1人分だろ。相談にも会議にもなりゃしねーよ。

  それにこっちは俺の名前で合宿の申請もしてあんだ。夜中に警備員が来た時、俺居なかったら面倒くせーことになるぞ」

 「合宿?!」「合宿?!」

 「音楽部の、だけどな。最初にいた重岡が食料や寝袋持ち込んだりすっから、急いで手を打ったんだよ。世の中勢いだけで行動できねーの、それなりの手続きが必要なんだ。わかってんのかボンクラ」


 「マジだ、寝袋あるし」「…申し訳ございませんでした」


 今回ばかりは素直に謝るしかあるまい。

いい加減な奴かと思っていたけど意外と用心深い…。まぁ、そうでもないと、一匹狼気取っていられないか。ていうか、音楽部も在籍してたんかコイツ。丹野は俺の謝罪をフンッと流すと、視線だけで室内を見回した。

 「柿崎は?こういうノリの時にゃ喜んで出てくる奴だろアイツ。呼んでねーの?」

 

 「どうかな…柿崎の所はもう見張りいると思うんだよな」

 田中がいたしな、俺が隠れそうな場所はもう抑えているだろう、と左は浮かない顔をした。こっちの情報握っている奴がいるのは不便だ。


 「そうだ、田中の件はいったいどういう事なんだよ。手引きってなんだ、連れてきたのか?」

 左のメールだと、白い奴の仲間に加わったとしか思えないんだが。

 「そうとしか思えねーよ。気を許してドア全開にしてたらヤバかったわ。お前アイツになんかやったのか?」

 「はぁ?こっちがやられてた方だよ!」

 「はぁ?いつだよ!」


 知らず知らず大声になったところで、丹野が俺たちの間に割って入る。

 「あーもー、そう興奮すんなや鳥頭、一人づつゆっくり話せ」



 かくして、俺と左との情報交換&すり合わせが始まったのである


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