表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すわんぷまん  作者: SAME
20/33

左の一日(2)

 いつもと変わらない教室、授業風景。何、この心落ち着く生活…!気にしてないつもりだったけど、奇異の目や噂は知らぬ間にストレスになっていたらしい。うるさい雑音がなければ、あっという間に一日終わりだ。

 柿崎はカバンに荷物を詰めると、キョロキョロと誰かを探し始めた。


 「あ、なーなー丹野、これから部し…」

 「悪いが」

 丹野は、相変わらず愛想のない顔で、ぴしゃりと言い切った。


 「今日は会議やるから、無関係者は立ち入り禁止」


 「会議ってことは…他のコン部の奴も集まるってこと?うわー見てぇー」

 「見世物じゃないんだよ、ノー天気野郎。そういうわけだから、さっさと帰れ」

 そう言い捨てて、彼はさっさと教室を出て行った。


 「ノー天気だって。どうせなら天真爛漫って言ってほしいよなー」

 ネットやりたかったのに、と口をとがらせる。昨日の今日で早速利用しようという柿崎のその図太さは、ある意味すごいと思うけど…。

 「そんなに純粋じゃないだろ、お前。帰ろうぜ」


 俺はカバンを持つと、田中の席を見た。今朝の奴の様子がちょっと気になったからだ。けど向こうは向こうでスマホをいじっていて、こっちを見向きもしない。

 なんのかね。昨日なんかいつの間にか話に加わったりしてたくせに、今日は全く接触してこないでやんの。興味の対象から外れたってことかね。


 そりゃ大歓迎だな。



 外は暑さもだいぶやわらぎ(とはいっても、最近ずーっと天気悪かった!)俺と柿崎は、いつもながらのくだらないやり取りをしながら帰路についた。球技大会の話、夏休みの予定…。


 ほんっと平和だなぁ…。


 玄関を開けると、手のひら大の四角い機械を持った叔父さんが駆け寄ってきた。


 この人、今日も自宅待機だったんだろうか?大学生は気楽でいいなー、ホント。そんなことを思っている間にも、四角い箱を俺の目の前で上下させている。

 「何それ」

 「盗聴探知機。…よーし、手を挙げてぐるっと回れー」

 「はいはい…って、なんで持ってるんだ、そんなの」

 「昔な、探偵にはまってた時期があってさ、でもこんなの普通に電気屋で売ってるぞ。万もいかないし……入ってよーし」


 ぜってぇ楽しんでるだろ、おっさん!!



 カタン



 突然の物音に、俺も叔父さんも止まった。


 振り向くと郵便受けに紙が挟まっていて、誰か走り去る音が聞こえる。急いで玄関の戸を開け辺りを見回しても何の影も見えない。


 俺はひとしきり道路を睨んだ後、緊張を解いて家へ戻った。

 つい反応しちゃったけど別に追う必要はないよな…。盗聴器だの探偵だの不穏な単語を聞いたせいだ。つまるところ、叔父さんが悪い。


 今度は探知機の洗礼を受けることもなくスムーズに居間へと入って行くと、部屋の真ん中で突っ立っていた叔父さんが、紙を突きだしてきた。その表情は硬い。


 …?さっき入れられた紙か?


 えーと……


 『3~4日前、異変があった方へ

  それは、本物でもなく偽物でもなく、どちらも同格です。

  きちんとした対応をしてください。

  怪しい組織がこの秘密を嗅ぎ回っています。

  元に戻せるなどと言うかもしれませんが確証はありません。

  実験に使われる可能性の方が高いです。

  そうなったら本当に戻せることになった時

  完全にはできないかもしれません。くれぐれも気を付けてください。


  何のことか分からない方へ

  町内を怪しい人間がうろついています。

  異変があった家を教えれば、自分達は平和になる、

  と思うかもしれませんが、逆です。

  秘密を知っている人間を放っておくでしょうか?

  この騒動がこの町内外に知られたらどうなるでしょうか?

  お分かりだと思います。


  この手紙は近所の家全てに配っています

  もう少し詳しいことが分かるまで、今まで通りの生活をお願いします』



 おお?


 ちらっと叔父さんを見ると、今度は小刻みに震えている。あ、これは本気で怒ってる。


 「…… 太 一 の 奴 ――!!勝手な事を!!!」


 叫ぶや否や、スマホに穴を開けようとするかのように、叔父さんは親指を連打させてどこかの番号を押した……が、繋がらなかったんだろう。腕を思いっきり振り上げてグルグル回り、やがてソファ目がけてスマホを叩きつけた。


 「状況をさらに混乱させてどーするつもりだ!!ああ!!」


 最後の「ああ!!」は、投げた力が強すぎてバウンドし、結局床に落ちたスマホへ向けての悲鳴である。


 キレてもイマイチ恰好がつかないなぁ…。しかし、右がそんな手間のかかる事するだろうか?


 「いや、違うんじゃないの?だって手紙出す理由がないし」

 「いーや、『右』太一しかいない。近所中に『うかつな事すんな』ってバラ撒きやがった…異変に気付いていない人間だっていただろうに…そういうのが一番厄介なんだぞ」


 「あー、あのメールにあった『ちょっとイッた団体』?」

 「…そっか左はそこまでしか知らないもんな。あの後、もう1グループ増えたんだ」

 「は?」

 「イッった白い集団に、武闘派の黒い集団が加わったんだ」

 「何言ってんだ、おっさん」


 怪しい奴らがそんな簡単に増えてたまるか。戦隊ものじゃあるまいし。けれども叔父さんの顔は大真面目そのものだ。どこまで本当なんだか、右に確認してみるか。


 「……そういや、右は?家にいるんじゃなかったの?」

 「会っていないのか?あいつ今朝」

 「ただいまー」

 叔父さんの言葉を遮るように、母さんが帰ってきた。


 「あ、太一。悪いけどお客様なの。お茶用意してくれる?」


 母さんに続いて入ってきたのは、ひどく泣き腫らした目をした隣の棚橋さんだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ