表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すわんぷまん  作者: SAME
13/33

伝播が目ざめるとき(午後3)

 丹野が見せてよこした画面には、『妖怪討伐計画』なる文字が躍っていた。ツイッター上でのやり取りで、妙に盛り上がっている。


 最初の方の投稿では『ターゲット』の写真がアップされていた。一応、目の部分は黒い横線が引いてあるが、どこからどう見ても俺だ。いや、俺たちだ。

 時系列順に飛ばし読みをしたけれど、あまりの数の多さに気持ち悪くなってきた。いや数の多さで、じゃないな。ツイッてる奴がどいつもこいつも、こちらの人権を無視するような調子ぶっこいた文ばっかり書いてやがるからだ。ムカつく。このスマホ折ってやろうか!


 「……お前はホント性格悪ィな」

 「俺じゃねーよ。俺じゃねーって」

 「うるせ、表に出ろ」

 「出れるかボケが」


 騒ぎに気付いたミスター平田が、教科書から顔を上げてこちらを睨む。


 「アーユーオーケー?」

 「何でもないっす。おーけーおーけー」


 先生が再び目線を教科書におとし英文訳を語りだしたところで、左がコソコソ俺に問いかけた。


 「何だよ」「これだ」

 左は俺と同じようにすいすい目線を動かしていたが、やがて不機嫌そうに丹野を見やる。


 「……お前はホント性格悪ィな」

 「だぁから、俺じゃねェって言ってんだろうが!」


 「アーユーオーケー?」


 「はいはい、ヒゲソリ髭ソリ」


 やや怒りの混ざったミスター平田の問いかけをダルそうに受け流し、丹野は俺たちの間に手を突き出した。

 「人が心配してせっかく教えてやったのによ。オラ、俺のスマホ返せ」


 「まてよ。ここのアドレス写してんだから」「まてよ。ここのアドレス写してんだから」


 「メモすんのは1人でいいだろがっ!」





 授業が終わって自分の教室に戻ってきたものの、居心地が悪かった。別にクラスの雰囲気が悪いわけでも悪戯されているわけでもないのだから、俺の気分の問題なんだろう。


 俺だって2chとか見たりはするさ。一応それ系の耐性はあるつもりだし。だから悪気はないのは分かるんだ、奴らに直接聞いたってそう言うに決まっている。ただ面白いからやっているだけだ。暇をつぶすのに丁度いいからかもしれない。


 けど、なんちゅーか…


 おおまかに見たところ、奴らは俺と同じ高校らしい(グループ化されてた)。すれ違ったことがあるか気にも留めない程度の身近な存在なわけだ。そんなやつらに『拉致る方法』だの『希望する実験』だの無邪気に語られたら、さぁ。


 『増えるかどうか真っ二つに切ってみたい』なんてのもあったぞ。刺身かよ!


 俺はちょっと左の様子をうかがい、案の定、視線が合った。

はー、せめて、こいつと愚痴ぐらい言い合えたら気が楽なんだけどな。何言うのも同時だから鏡となんら変わらないんだもんな。


……ん、まてよ。


 俺は、ふと『言葉のキャッチボール』という単語が思い浮かんで動きを止めた。


 最初にボールを投げる奴が決まっているから、受ける姿勢もできるわけで。今の俺らは、2人同時に「受け投げ」思いつくから収拾がつかないけれど、どっちが先に話し始めるか、を決めることが出来たら、会話ぐらいはできるようになるんじゃないか?


 いや、だめだ。

 どうやって決めるんだよ。ジャンケンは無理、クジだって同じの選ぶだろ…まずひく順番でごたつくし。


 2人そろって唸っていると柿崎が戻ってきた。

こいつ、最低限の教科書しか持ってこない主義なので他クラスの同じ主義仲間と貸借りやっているのだ。休み時間の度にウロウロするんなら、机の中に全部教科入れときゃいいと思うんだけど。そうしたら貸し借りしなくても済むのに。


 「太一~、お前んとこ叔父さんとか住んでんの?」

 柿崎ははっきりしない顔でこちらに近寄ってきた。珍しく片手でケータイをいじっている。

 「え?なんで急に」「え?なんで急に」

 「なんかメールきた」

 「なんじゃそりゃ」「なんじゃそりゃ」


 しっかし、何回、携帯端末を渡されるのか。

今日はこういう日なのかな、とやや呆れながら画面の文字を読んでいく。左もくっついてメールを見てくるので、見づらいことおびただしい。


 『重岡の叔父です。急にメールを送ってすまない。

  君とのメールが一番多かったから、多分太一と仲がいいと思って連絡しました。

  今日、太一のどっちかを君の家に泊めてもらえないだろうか?

  太一のフリーメールに詳しい事情を送ってあるので先にそっちを見てほしい。

  ともかく、帰りはバラバラで帰ること。他言厳禁でお願いします   雄一』



 「なんだこりゃ」「なんだこりゃ」



 オッサン、人のケータイ勝手に見やがった。そりゃ置きっぱなしにしているけども…。いや、そんなことより、絵文字が入ってないぞ・・・!あの雄一叔父さんが絵文字を使わないだと?!


 なんか深刻そうだな~と他人事のように(実際そうだけど)笑って、柿崎は俺の手からケータイを抜き取った。

 「でさ、フリーメールアドレスってどこのだ?」

 「Gメールだ。けど、どこで見る?」「Gメールだ。けどどこで見る?」


 柿崎のケータイからでも読めるだろうけれど、3人一度に見たいからPCでの方がいい。とはいえ校内でネットできるところで、他言厳禁守れるところったら・・・第3者の目が多い図書室は避けたいな、討伐されんのやだし。



 「オイ、絶好のスポット知ってんだけど」



 出た。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ