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第53話:実技試験・頑張れ急げぶっちぎれ

 それから私とクロウ君は魔物を探すも、何故かランクの低い奴しか見つからなくてあまりポイントが稼げないという事態に陥っていた。

 そして残り時間五十分というところで累計ポイントは百二十点。少なすぎる。

 焦るクロウ君。不安が隠せない様子。

 自分には関係ない、と缶ジュースを飲む私。コーラが美味しい。

 横が

「真剣にやってよ!」とうるさいですが、華麗に無視しました。面倒です。

 ぶっちゃけますと、飽きたのです。

 なんていうかさ、白熱しないのよね。どいつもこいつも弱すぎて話にならないのよ。

 唯一この私に傷を付けた三択ロース、あの程度のレベルでAランクよ? これじゃあ他の奴らもたかが知れてるわ。

「モモグリさん、あそこに魔物が!」

「あ〜、頑張って倒して」

「やる気無さ過ぎ!」

 さっきまで私には手を出すなとか言ってたくせに。矛盾してんのよ。

「眠いわ」

「ちょっと、しっかりしてよ」

「だってもう夜中の二時過ぎよ? この時間帯、いつもの私ならぐっすりと眠っているの。グッナイ・グッドスリーピングなのよ」

「何故に英語なの」

「なんとなくよ。いちいちうるさいわね」

 訳すと『良い夜・良い眠り』。何のこっちゃ。

「突然ですが、オリジナル子守歌を歌います」

「歌わなくていいです」

「作詞作曲、共にわたくし桃栗秋子。題名は『寝れ』です」


『寝れ』

作詞:桃栗秋子

作曲:桃栗秋子

歌:桃栗秋子


ねんねんころりよねんころり

坊やおやすみねんねこり

今夜は満月、野良犬吠える

羊が一匹、羊が二匹

羊が三匹ラム肉大好き


夜空を見上げて何を思うの

きらりと瞬くShooting star

良い夢見なされGood night

今神の元へGo to heaven


「どう?」

「そんなしてやったりな顔で言われても」

「何点よ?」

「じゃあ百点」

「パンチ」

「はうぅッ!」

 私の鉄拳がクロウ君の顎に当たりました。

「なんで百点なのにぶつんですか!」

「明らかに嘘臭いから。『とりあえず高評価しておけばいいんじゃね?』という魂胆が丸見えだから。あとムカついたから」

「最後の理由が酷いんですけど」

「じゃあうざったいから」

「ごめんなさい、どっちもどっちです」

 ああ言えばこう言う。ホント生意気に育ったものだわ。私が親だったら、十三型のテレビで殴ってるところよ。もちろん冗談だけど。

 その時だった。カンム先生の慌てた声が聞こえた。

『緊急事態だ。今すぐ避難しろ』いつもと違う、緊張した声。

「一体どうしたっていうのよ。まさかノストラダムスの予言にあった恐怖の大魔王が今頃現れるとか?」

『そんな馬鹿なことは決してない』

「先生、モモグリさんは馬鹿です」

「クロウ君」にこりと笑い、無言で殴る。

「で、真面目にどうしたのよ?」

『実は、かくかくしかじかなんだ』

「な、なんですって!」

 って、かくかくしかじかじゃ何言ってるのかわからないわよ馬鹿。

『では改めて……。この試験の魔物は、マホーツ界と人間界を結ぶ空間を通じて、マホーツ界から送っているわけだが――』

 話が異様に長かったので、わたくし桃栗秋子が短く分かりやすく話します。


 ――魔物達は、魔法で作られたトンネルをくぐり抜けて人間界にやって来ているそうです。ちなみにトンネルは学校の先生達が作ったものらしいです。

 程よい強さの奴らしか送ってない筈なんだけど、どういうわけかなんかヤバいぐらい危ない魔物が紛れ込んでトンネルをくぐってしまったらしいです。

 三択ロースなんぞカスと呼べるほど危ないらしいです。


『ということで、逃げろ』

「嫌に決まってるじゃない」

『なに……?』

 最高じゃないの、強い魔物だなんて。やっぱりお決まりのこういう展開ってあるものなのね。

「倒したら何ポイントくれるわけ?」

『いや、只今我々教師がなんとかしようとしているところだ。余計なことはしないでもらいたい』

「それにしてもカンム先生、あんたよく喋るわね」

『非常時だからだ』

 まあ、先生の喋りっぷりなんてどうでもいいけど。

「で、何ポイントくれるわけなのよ?」

『ダメだ、危険だ』

「そうだよモモグリさん、危ないことはよしなよ」

 ふん、私はあの、その……なんだっけ?

 あれよ……あれ。

 そう! 半ケツのチャンプ! 半ケツのチャンプさえ私には敵わなかったんだから、楽勝よ!

「モモグリさん、『鮮血』ね。鮮血のキャップ」

「わざとよ、わざとに決まっているじゃない。鮮血のキャップね」

「額から変な汗が出てるけど?」

「汗じゃないわ。これは……そう、汁よ。未知の魔物に対する武者震いみたいなもんよ。言うなれば『サムライ汁』よ」

「は、はあ……?」

 さて、グズグズしていられないわ。早く探さないと時間になっちゃう。万が一の事態に備えて急がないと。

『待て、危険だと言っているだろ!』

「モモグリさん!」

 私は二人の言葉を聞かないで駆け出した。

 強い奴は私が倒す!

 死亡フラグなんかへし折ってやるわ!

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