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第46話:変人イケメンタレントと麗しき美女

 日本某所――

「ふっ、テレビの前のレディ達……おコンニチハ。みんなを照らす眩い太陽、池照ヒカルだよ」

 テレビカメラの前で一人の青年が喋っていた。

 池照ヒカル……今売れに売れているイケメンタレントだ。

 整った顔、凛々しくて少し幼い感じ。髪は少し長めで茶髪。服は都会の真ん中だというのに真っ白なタキシード、やたらと目立つ。

 池照は今、テレビ撮影をしている。

 『その辺の町に行こう』という番組で、適当に選ばれたその辺の町へ行き、適当に観光をして帰るというなんともゆるい番組である。

「今日も、レディ達を素敵な世界へ招待するよベイベー」

 さっきの台詞でもなんとなく分かっただろうが、池照ヒカルはナルシストである。

 カメラに向かって指を差し、「バキューン」と銃で発砲した真似をする。そして白く輝く歯を見せてニヤリ。そんなナルシスト池照である。

「僕は魅惑のスナイパーさ……」

 池照ヒカルは意味不明なことを呟き、ムーンウォークでフレームアウトした。


 場所が変わって住宅街へ。

「いやあ、それにしてもさっきたこ焼きを食べたんだけどスゴく美味だったよ。『ロシアン』っていうお店だからレディ達も行ってみるといいよ」

 なんだか危ない名前だ。

「とまあ住宅街にやってきた理由はほかでもない、この町の住民にインタビューをしてみようっていうことなのさ。……おっと、ちょうどあそこに人がいるじゃないか」

 池照ヒカルはクルクル回りながら通行人に近付いた。

「やあ、おコンニチハおじいさん。ちょっといいかな?」

「なんだぁあんちゃんは? オラに何か用だか?」

「僕は今この町のことを聞いているんだ。この町の良いトコロを教えてくれないか?」

「ああ、そうだなぁ……。今日そごのスーパーで卵が安がっだな」

「そうですか、たしかにそれは良いね。僕もあとで買いにいくよ」

「どころでごれはカメラかぁ?」

「ああ、テレビ番組の撮影だよ」

「あんれま〜テレビだど! オラなんかを映すのはやめてくんろ!」

「はっはっは、照れなくていいんだよおじいさん!」


 またちょっと場所移動。

 池照ヒカルはバレリーナのようにクルクル回りながら歩く。

「さあさあ、次はどんな人に出会うかな〜! 僕は恋愛台風さ! ぐるんぐるん!」

 スタッフは時折、実はこの人お笑い芸人なのではないかと思っている。

「おや、あそこに若い女性がいるじゃないか。早速インタビューだ!」

 ぐるんぐるん回りながら女性の元へ。

「おコンニチハ! 池照ヒカルだよ!」

「あ、変人だわ」

 普通に言われた。

「僕は池照ヒカルだよ? テレビで見たことないのかい?」

「あ〜、そういえば見たことあるかも。あんた本物?」

「そりゃそうさ。ほら、そこにカメラもあるし」

「わわっ、テレビカメラじゃない! ちょっ、あの……コホン、桃栗秋子と申します」

 いきなりしおらしくなった。

「ところでレディ、今この町の良いトコロを聞いたりしているんだけど……」

「この町の良いトコロ? そうねえ、それといった特産品とかはないけど、四丁目の喫茶店『カッフィー』なんかがなかなか洒落ててイイかも」

「ふむふむ」

「それから、そうねぇ……」

「…………」

 池照ヒカルは桃栗の顔をよく見てみた。

 一般人のわりにはなかなか綺麗な顔立ちをしているではないか。まるで現代に生きるクレオパトラだ。

「――池照さん、私の話聞いてた?」

「へっ? あっ、ああ……なんの話をしていたんだっけかな……」

「この町のお勧めスポットを教えてあげてたんだけど」

 話を聞いていなかった池照に対して桃栗はムッとした。タレントだからって一般人の話をスルーするとは何事か。カメラが回ってなかったらフランケンシュタイナーをキメていたところだ。

 そんな桃栗の表情を見た池照ヒカルは、より一層気持ちを惹かれた。少し怒った表情もなかなか可愛いではないか、と。

(ヤバい、僕は完全にこの女性に惚れてしまったようだ!)

 物好きもいるものである。

 明らかに池照ヒカルの目つきが変わった。それはまるで、回転寿司で食べたいネタが流れてくるのをジッと睨む人ような目つきだった。

 さすがに桃栗ですら引いてしまった。

「桃栗秋子さん……だったかな?」

「え、ええ……」

「よかったら撮影が終わった後に、僕と優雅なティータイムでも過ごさないかい?」

「……はい?」

「ぶっちゃけデートに誘っているのさ」

「…………」

 少しの間を置いて、

「エエーッ!」

「ふっ、まあイケメンタレントである僕にまさかのナンパを受けるなんて夢にも――」

「ヤダ」

 あっさりと断った。

 ……が、しかし。

「それは『やったー大好き』の略として受け取ってもいいのかな?」

「あんたバカじゃないの」

「バカっていうのは『バースデーはいつ? その日がきたらケーキを買ってあげる』の略かい?」

「どこをどう略したらバカになるのよ!」

「もちろん『バースデー』と『買う』の部分だけど?」

「そんなさも当然ですと言わんばかりの顔で言われても困るんだけど」

 この人は完全におかしいと悟った桃栗は、急いでこの場から逃げることにした。

「待ってくれ秋子さん! いや、僕の未来のお嫁さん! いや、プリンセス!」

「誰があんたのプリンセスになるものですか!」

「じゃあ姫!」

「あんた死ね!」

「死ねっていうのは、『仕方ないから年末にまた会ってあげるわ』の略として解釈していいかな?」

「略し方が無理矢理過ぎるのよ!」

 桃栗は全力疾走で逃げ切った。

 ぽつんと残された池照ヒカルは地面にひざまずき、コンクリートに拳を打ちつけた。

「絶対に……絶対にあの麗しき美女を僕のお嫁さんにしてやる!」

 スタッフは彼がストーカーになるんじゃないかと不安になった。


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