第4話:修行を兼ねて
この時私の部屋は静寂に包まれていた。
テーブルに向かい合う私とクロウ君。そして、高くそびえ立つジェンガ……。
私はひとつのブロックに狙いを定めた。平常心を保ちつつ、ゆっくりと手を伸ばす。
……ダメだ、手が震えちゃう。落ち着くんだ私!
「うりゃあぁッ!」
思い切って勢いよくブロックを引き抜いた! 抜けた! よっしゃあぁぁッ!
ガシャーン。
……バランスを崩したジェンガはあっけなく倒れちゃった……。
「うがーっ! 悔しいー!」
「モモグリさんはもう少し落ち着いた方がいいよ」
もともとは『集中力をアップさせよう』ということで修行を兼ねて遊んでいたけど、まさかの三連敗。こんな坊主に負けるなんて屈辱!
もう一回勝負をしようと思ったら、クロウ君はジェンガでドミノ倒しをやろうとしていた。私は容赦なくビンタをし、立てられたジェンガは全てなぎ倒した。
「だってモモグリさん弱いんだもん……。それならトランプで神経衰弱をしようよ」
「なんですって?」
「神経衰弱なら記憶力も養えるかもしれないでしょ。それにジェンガより簡単だし」
「いや、私がツッコミたいのは『だってモモグリさん弱いんだもん』という無礼なコメントに対してよ。誰が史上最弱のスーパープリンセスだコラァ!」
「スーパープリンセス? なんかダサっ! それにそんなこと言ってないし!」
「さあ、神経衰弱をやろうでないかい」
カードを切って床に適当にぶちまけた。
「これに負けた方が晩ご飯の支度をするっていうことでどう?」
「いいね。絶対勝つよ」
――五分後、気が付いたら私は台所に立っていた。勝負に負けたのよ、私ともあろうお方が。
クロウ君ってば記憶力どころか勘も良くって、次々とカードをかっさらうんだもん。おかげで六枚しか取れなかったわよ。ったく、大人気ないわよね〜。
で、クロウ君は
「ドリアが食べたいな」
とかほざいて数学の宿題に取り掛かっています。イジメでしょうか、私はドリアなんか作れないのに。仕方がないからカレーとビンタ三発で納得させます。