第28話:下暮温泉リターンズその四
第三試合はモモグリさん対シオダさんだって。似たもの同士頑張ってください。
「いくわよ秋子! 必殺『紺色エストック』!」
なんでさっきから剣の種類を叫ぶかな。
「まだまだよ紺ちゃん!」
そしてモモグリさんはラケット側面打ち。相変わらず凄い。
二人の戦いは凄まじいもので、一点を取るのに五分ぐらいかかった。そして交互に点を稼ぐので、もう一人が一点目の時には十分が経過していた。
それが何回も何回も続き、ついに十対十の接戦となっていた。単純に計算すると、およそ百分も経っているという驚愕の事実。サワヤさんとリファはとっくに飽きて帰っちゃいました。
「これで最後よ紺ちゃん……」
「秋子、私はこの回で残り全ての力を使い果たすわ!」
「望むところよ!」
サーブはモモグリさん。手のひらにボールを乗せて精神を統一させる。
そして……!
「あっ、クロウ君の浴衣がはだけてるわよ」
「えっ、ボク?」
「なんですってぇぇッ!」
コツッ、カツーン。
シオダさんが油断している時に、ボールは綺麗な弧を描いて横を通り過ぎていった。
「よっしゃ、紺ちゃんに勝った!」
うわ、あっけない終わり方!
卓球で流した汗は温泉で綺麗に洗い、夜も更けてきたのでそろそろ寝ることにしました。
「私クロウ君の横ね!」
シオダさんはボクの布団の横にぴったりとくっついた。やっぱりこうなるんだね……。
「じゃあ俺は桃栗に添い寝でも……」
「あらそう、あんたがご希望なら閻魔大王様と添い寝させてやってもいいのよ?」
モモグリさん怖っ!
サワヤさんは渋々と部屋の端っこに避難しました。
「じゃあリファちゃんは私と寝ましょ」
「いいんですか桃栗さん……? じゃあお言葉に甘えて……」
寝る場所も決まったところで消灯。
おやすみなさい。
……。
…………。
………………。
「ゴメン、ちょっとライトオンさせて」
ボクはたまらず明かりをつける。
そして自分の布団を剥ぎ取ると、いやらしい手つきをしたシオダさんがいた。
「あら、どうしたのクロウ君?」
「……寝かせてください……」
「私のことは気にしないでいいからっ!」
気になりまくりです。
とりあえずライトオフ。今度こそおやすみなさい。
……。
…………。
………………。
「う、うひゃあ!」
ゴメン、ライトオン。
ボクの布団には、ボクの浴衣を剥ぎ取っているシオダさんがいました。
「クロウ君のお肌スベスベ〜」
「…………」
ボクは無言でサワヤさんの所に逃げた。今一番安心できそうなのがサワヤさんだからだ。モモグリさんはダメだ。絶対イタズラする。
「ちぇっ、クロウ君のケチ」
ケチとかそういう問題じゃないです。
次の日、ボクは朝を無事に迎えられました。
そしてまた温泉に入り、ご飯を食べました。
シオダさんは「なんで混浴風呂がないのッ!」と騒いでいました。混浴があったらボクは今頃……考えただけでも恐ろしいです。
そしていよいよ家に帰ることにしました。なんだかんだで楽しかったと思う。
車に乗って、さあ出発。帰りの運転手はサワヤさんです。
「第二回ドラマチックしりとり大会〜!」
高速道路に入るなりモモグリさんが叫んだ。またアレをやるらしい。
「今回は紺ちゃんからね」
「オッケー! じゃあ……『オレは浪花の殺し屋ピーちゃん。今日も二十センチのリーゼントがキマっているぜ!』の『ぜ』で」
わあ可愛らしい名前の殺し屋だこと。
次はモモグリさんだ。
「『ゼエゼエ……。ターゲットを見失っちまった……。奴は一体どこに……?』」
誰かを追っているんだね。
はい、次はサワヤさん。
「『逃げたか……? オレはハトサブレを取り出しそれをしゃぶる』」
ハトサブレ……? な、なんでッ!
……と、リファはまた車酔いでダウンしてるからボクの番か。困ったな、まったくイイ言葉が思い浮かばない……。
「『ルイスの奴もハトサブレが好きだった。あいつはハトサブレにマヨネーズをかけて食べるというおかしなことをしていたな、ハッハッハ!』」
もうどうにでもなれ!
すると、リファがゆっくりと手を挙げた。
「『は、吐きそう……』」
第二次災害が起こった。